11月11日(ダブル11)は、中国ではシングルを意味する「1」が並ぶことから、「独身の日」と呼ばれており、中国EC最大手、アリババが2009年よりこの日にバーゲンセールを開始したことが始まりで、中国全土で、この日は1年でもっとも、大きなバーゲンセールの日として定着している。
この日の「アリババ」から発表された取引額は、前年比27%増の2135億元(約3兆5,000億円)と過去最高を記録した。約3兆5,000億円という金額は、日本のECモール楽天の年間流通総額を1日で稼いだことになる。
今回は、「独身の日(2018.11.11 )」の、中国の2大ECモール「Tmall」と「JD.com」の取引内容など見ていこう。
アリババの「天猫Tmall」は中国BtoC市場では56.8%のシェアを占有している。
2018年11月11日の「独身の日」のセールでは、取引額が2,135億元(約3兆5,000億円)、前年比約27%増と発表された。
取引経過は、午前0時のセール開始1分で取引額が51億元(約836億円)を記録し、午後3時50分には昨年の取引額を超えた。 今年のW11には18万社のブランドが参加し、取引額が1億元を超えたブランドは237ブランドで、前回の167ブランドを上回っている。
注目の海外の取引額第1位は、昨年に引き続き日本。2位がアメリカ、3位は韓国。 海外商品で良く売れたものは「健康食品」、「粉ミルク」、「フェースマスク」、「紙おむつ」など。 ブランドでは、オーストラリアのサプリメントブランドの「Swisse」がトップで、2位が「Moony」3位「花王」と日本のブランドが上位となっている。
W11で海外取引額で大きかったものをみると、どんな中国人が、何を海外製品に求めているいるか理解できる。
製品分野売れ筋トップテンをみると、どれも肌に触れる商品であったり、体内に入る食品である。つまり、安全性の関心や要求が高い、20代後半から30代前半の乳幼児を持つ女性が、越境ECで買い物をしているということだ。
「京東集団(JD.com)」は中国BtoC市場では「Tmall」に次ぐ、24.7%のシェアを占有している。
「独身の日」のセール期間においては、取扱額は1,598億元(約2.6兆円)、伸び率は前年比120%増と発表されている。 京東集団が展開した「独身の日」キャンペーンは11月1日から11月11日まで行われた。
スタートから10日後には1000億元(日本円で1兆6000億円、1元16円で換算)の達成し、11日の時36分に2017年実績の1271億元(日本円で2兆336億円、1元16円で換算)を突破した。
詳細な発表はないが、セール期間中に最も売れた商品は、携帯、エアコン、ノートパソコン、テレビ、洗濯機。
海外販売では、1位がアメリカ、2位が日本、3位がドイツ、4位がオランダ、5位が韓国となっている。
海外製品で多く購入されたものは、カメラ、製麺機、おむつ、スポーツシューズ、髭剃りなどとなっている。
「京東集団(JD.com)」は、アメリカ「ウォルマート」と資本提携しており、海外販売の取引額には、ウォルマート製品も含まれている。
また、「京東集団(JD.com)」は、中国50カ所に無人倉庫を保有し、自動ロボットによる仕分けと自社配送網による着実な配送で、90%の注文を当日、または翌日配送を実現した。
さらに、このセール期間中にはドローンを約2万回飛行させ、総計12万キロに及ぶ飛行で荷物を配送している。
カスタマーサポートでも、AIサポートサービスに約1630万回対応し、その中の90%はAIサポートサービスだけで完結できたと報告されている。
「京東集団(JD.com)」の自動ロボット、ドーロン、AIサポートといった新しいサービスを貪欲に現実化する試みなどは見習うべきところだ。
「アリババ」が進めているオンラインとオフラインの融合を目指す、O2O戦略「ニューリテール」は、今年も「独身の日」で展開された。
アリババグループの「ニューリテール戦略」では、いろいろな取り組みが行われた。
例えば、生鮮スーパー「盒馬鮮生」(ファーマーションシェン)では、「食材注文で、調理までしてくれるスーパー“盒马鲜生”」を実行し、 スターバックスでは、コーヒーデリバリーを開始したり、外食デリバリーを担当するEle.me(ウアラマ)や、地元に密着したライフサービスを展開する口碑(コウベイ)などを含めて20万実店舗が新たに参加している。
オンラインとオフラインを繋げ、実店舗の売り上げを拡大した。
「京東集団」もオンラインとオフラインの融合をめざす小売概念「ボーダーレスリテール」を展開した。
Webからリアルへ、リアルからWebへの誘導を強化している。 「京東集団」では、事業提携しているインテリア・家具販売などの「曲美家居集団」の実店舗とECサイト(JD.comに出店)で連携し、実店舗では「独身の日」キャンペーンの告知を大々的にリアル店舗と連携を進めた。
日本では「無印良品」が「京東集団」と提携し「ボーダーレスリテール」に参加し、販売を強化した。
「アリババ」も「京東集団」も名前は違うが、どちらも「実店舗とオンラインとの融合」「無人コンビニの拡大」などの”新しいユーザー・エクスペリエンスの提案”である。
このような取り組みが、「独身の日」の売り上げ増加を牽引しているのだろう。
「独身の日」のアリババグループと京東集団の2社合算金額は、6.1兆円であり、この数字は、日本の小売であれば、セブン&アイ・ホールディングスの年間売上高、6兆378億円に匹敵する額である。
アリババと京東集団の2社は前年比20%以上の高い伸び率を記録した。 中国経済が停滞している中で、「独身の日」の売り上げが昨年以上の数字を示した背景には、オンラインだけではなく、オフラインからオンラインを活用した売り上げの増加、すなわち、アリババの「ニュー・リテール戦略」、京東集団の「ボーダーレスリテール戦略」の成功の証であろう。