中国では、今、「ライブコマース」が盛況である。ライブコマースとは、LIVE配信型Eコマースである。
よく、弊社のASPカートLive Commerceと勘違いし、お問い合わせいただくこともあるが、弊社のLive Commerceは越境ECサイト構築を支援するシステムである。お間違いないようお願いしたい。
中国では、商品に対する信用度の低さから、KOLと呼ばれるインフルエンサーの推薦する商品が売れ、KOLがビジネスとして定着している。そして、最近ではこのKOLがライブで商品を紹介し、そのまま紹介された商品をECサイトで購入できる「ライブコマース」が、顧客のリピート率・成約率の高さにより、今、業界の目玉となっている。
日本でも、今週11月1日に柏木由紀(AKB48)さんのコンサートがそのまま、Eコマースと連携する「ライブコマース」が実験的公演として行われる予定だ。
日本ではまだまだ、普及しているとは言えない「ライブコマース」であるが、今回は「中国のライブコマース」の現況と「日本ライブコマース」の認知度、課題などを調べてみた。
中国の「ライブコマース」は大手ECサイト「淘宝(タオバオ)」を筆頭に大きく市場を拡大している。
2018年「タオパオ」が運営する「淘宝直播(タオバオライブ)」は、前年同期比で約400%も増加し、1000億元(約1兆5000億円)を突破したとしている。
タオパオだけではなく、「京東(JD.com)」、「TikTok(抖音)」や「快手(Kwai)」などもショート動画から「ライブコマース」の連携に取り込み始めている。
中国ではライブ(動画)配信やEコマースの成長が伸び悩むなか、新たな活路をこの「ライブコマース」に見出そうとしている。
そして、タオバオの「ライブコマース」は大きく2つのタイプに分かれており、一つはインフルエンサー中心のライブコマース。
もう一つは、豊富な商品を保有する店舗が中心とした、ライバー(店舗実演者)本人によるライブコマースである。
KOLと呼ばれる中国インフルエンサーは、中国国内に何十万人というフォロワーを持ち、優れた販売力を持っている。
第一の「ライブコマース」モデルは、このインフルエンサーによる配信を通じて、ユーザーを豊富な商品を持つECサイトに誘導するものである。
中国では商品の信用度、安全性などが薄いという現実があり、自分が信用するインフルエンサーの紹介の商品なら、安心して商品を購入する。中国でインフルエンサーが絶大な力を持つのはこのためである。
例えば、開始5分間で1万4000本の口紅を売った李佳琦(Austin)、そして、6月18日に実施された「618」のセールで、5億元(約75億円)超という成約額を叩きだした薇婭(viya)など、超有名インフルエンサーによる「ライブコマース」では販売記録が次々と塗り替えられている。
そして、来月開催される中国最大のセール「W11(ダブルイレブン)」ではまた、新たな記録が生まれるだろう。
もう一つは、店舗の従業員などによるライブ配信を行い、ECサイトへ誘導するとタイプである。この店舗実演者主体の「ライブコマース」は、タオパオライブの流通総額の7割を占めると言われている。さらに、「タオパオライブ」の配信回数の9割を占めている。
豊富な商品を持ち、店舗主体に行うライブコマースは、実店舗や通常のECサイトから一定のファンを獲得した店舗と個人経営の小規模店舗に分かれる。
さらに、中国ではこのようにインフルエンサーを活用しないで、店舗実演者主体で行う「ライブコマース」のための育成サービスやライブコマース代行サービスなどのビジネスモデルも登場している。
ライブコマースはLIVE配信+ECであり、形を変えたテレビショッピングではないかという意見もあるが、実態はテレビショッピングより効果は高い。
なぜなら、リアル(実況)であるということと、インタラクティブ性である。
ライブ配信であるため、動画編集が無いので、使用体験に嘘がないリアル感がユーザーにダイレクトに伝わるところである。
さらに、消費者の質問にその場で答えたり、リクエストに応えることで、視聴者の疑問や不安をその場で解決することができる。そのためにニーズが満たされ購買意欲もさらに固まるのである。
下記に「ライブコマース」のメリットをまとめた。
データによると、2018年に「タオバオライブ」による取引金額はすでに1,000億元(約1兆5,000億円)を超え、前年同期、400%近く成長し、「ライブコマース」は巨大市場となっている。
次に、日本の「ライブコマース」を見てみよう。
中国では物凄い勢いで拡大している「ライブコマース」であるが、日本ではどうだろう。
ライブ動画を見ながら、買い物ができる新しいタイプのEコマースで中国から遅れること1年、日本でも2017年から様々なプラットフォームが出現した。
しかし、2年が経ち、「メルカリチャンネル」、「PinQul(ピンクル)」、ディー・エヌ・エーの「Laffy(ラッフィー)」が相次いで「ライブコマース」から撤退している。
そんなかで、楽天は5月17日、ライブ動画配信サービス「Rakuten LIVE(楽天ライブ)」の提供開始したが、勝算はあるのだろうか?
ここでは、「ライブコマース」の利用度、期待度、販売商品、さらに日本における「ライブコマース」の課題など見ていこう。
下に紹介した「ライブコマース」データは、マクロミル・翔泳社(共同調査)によるもので、2019年7月2日(火)~2019年7月4日(木)に全国15歳(中学生を除く)~49歳の男女(マクロミルモニタ会員)1000人に対してインターネットリサーチを行ったものだ。
ライブ配信を視聴したことがあるかどうかの質問に対しては、ライブ配信を観て商品を買ったことがある、または観たことがある人は全体の19%となっている。
実際に商品を購入したのは、その中でも3.3%と非常に低い結果となっている。
別データの認知度に関しても、「ライブコマース」の内容について「よく知っている」とした人は4%程度であった。
ライブコマースを利用意向についての質問「ライブ配信を視聴しながらショッピングができるインターネットサービス(アプリ)を今後、利用したいと思いますか?」に関しては、「とても利用したい」が2.6%、「まあ利用したい」は21.2%となっている。
「使いたくない」とした回答は39%となっており、ライブコマースに対して積極的に活用するイメージを持っていないことがわかる。
では「ライブコマース」では何が購入されているのだろう。
下記ランキングを見ると、
1位は「服」で42%、2位は「家電」で40%、3位は「コスメ・香水・美容」で32%、4位は「家具・インテイリア」で32%、5位は「スポーツ・アウトドア用品」で27%という結果である。利用者は女性ということになる。
別データであるが、利用者としては、「35歳以上(女性)」の利用意向は最も高い数値になっている。利用したくないとした年齢層も、「35歳以上(女性)」で利用意向が二極化している。
「ライブコマース」が日本で始まって、2年が経ったが、利用経験者は3%止まりであり、ライブコマースにはマイナスイメージも多いようだ。
次に、日本における「ライブコマースの課題」について見ていこう。
上の調査内容から、日本の「ライブコマース」は浸透していないと言っても良いだろう。要因は、中国と日本では商品やブランドに対する背景が違いすぎる点が大きいだろう。
つまり、日本の商品は信用があり、安心、安全であるといこと。ライブ配信を見る時間を作って、商品を買うよりAmazonで検索して買えば良い、と考える。それだけのメリットが「ライブコマース」にはない。
また、アンケートによると、ライブコマースでは「誇大表現があるかもしれない」や「動画の視聴が面倒・時間がない」、「イメージが沸かない・使いこなせなさそう」などマイナス意見が多くあることも事実である。
さらに、日本には商品のメリットをアピールして「売る」ことができるインフルエンサーが少ないのも事実である。
Instagramのインスタグラマーは商品を魅力的に魅せることは得意とするが、ライブコマースのインフルエンサーに求められるのは、商品の魅せ方も重要だが、商品プレゼンテーション力(トーク力)が必要である。そのような、ライブコマースに特化したインフルエンサーが少ないのである。
今後、「ライブコマース」の普及には、ライブを得意とする、トーク力があり、商品の魅力を適切に伝える力をもったインフルエンサー数の増加がなくてはならない。
日本では課題の多い「ライブコマース」であるが、NTTドコモは10月7日、音楽ライブ映像と連動した新しい電子商取引(EC)サービスを正式導入すると発表した。
これは、NTTドコモが11月1日に中野サンプラザホールで開かれる柏木由紀さんのソロコンサートを独占配信する際に、ライブ動画上を気になる部分をクリックするだけで商品ページに遷移し、商品購入ができるというものである。
この技術はNTTドコモとバロニム(東京都港区)が共同開発した「TIGライブ」という技術である。
例えば、コンサートだけではなく、ファッションショーなどでも、ライブ動画を見ながら、モデルの服に触れるとその服の購入ページに繊維し、その場で商品を検索することなく、服を手に入れることができる。
「TIGライブ」はライブ動画を視聴しながら、ショッピングを楽しむ「ライブコマース」であり、2020年から始まる5Gを見据えた新しいEコマースとして期待度は大きい。
以前のブログ「時代は変わる 5G時代のEコマースの未来」でも解説したように、来年から5Gが開始される。「ライブコマース」は5Gインフラの変革とともに、時間とともに普及する新しいEコマースのビジネスモデルとなると思われる。
日本ではまだまだ、普及しているとは言い難い「ライブコマース」であるが、新たな顧客を生み出す潜在的ニーズは高いと感じている。
●参考: