日本を訪れる外国人観光客数は年々拡大し、観光庁の発表によると、2018年は過去最高の3,119万人(前年比8.7%増)となった。
昨年のトップは中国の838万人、次いで韓国753.9万人、さらに台湾の475.7万人、香港の220.8万人、アメリカの152.2万人と続いている。
そして、旅行消費総額の観光土産として買い物代は、1兆5,654億円という結果であった。
昨年トップの中国人観光客は外国人観光客全体の26.8%を占めており、昨年の中国人の買い物代も8,033億円と高い水準である。
以前の爆買いの時期ほど、その額は高くはないが、それでも中国人一人当たりの買い物代は11万923円で、訪日外国人の平均一人当たり買い物代の5万880円の2倍以上のお金を使っている。
今回は、この中国人が購入する観光土産に関して、『訪日外国人による越境ECでの観光土産のリピート購買(連鎖消費)の可能性について』のレポートを元に、観光土産に関する特徴と越境ECチャネルの重要性について見ていこう。
中国人観光客は日本のインバウンド市場において重要な顧客である。
2018年の中国人観光客は、2017年と比較すると、観光客数は735.6万人から、838万人と増加してるにも関わらず、観光土産代(買い物代)は8,777億円(2017年)から8,033億円へと減少している。
これは、従来の富裕層観光客から、中間層観光客へ拡大している可能性や、リピーターの増加により観光土産に対するニーズが変化している可能性が考えられるようだ。
そして、中国人観光客は観光土産を購入し、帰国した後、6割以上が越境ECサイトからリピート購入しており、越境ECはリピート購入の有効なチャネルとなっている。
『訪日外国人による越境ECでの観光土産のリピート購買(連鎖消費)の可能性について』のレポートによると、中国人は観光土産を他の人に贈与するために多くのお土産を購入する。
それは、自分のために購入するというより、隣人や親戚、親しい友人、知人へお土産として観光土産を購入している。
観光土産は、観光という非日常的な場に出かけることで、気持ちが高揚し、普段買わないようなものまで、その観光地で衝動的に買い物をし、さらに、人間関係を良好に保つために、お土産として他者への贈り物として購入される。
そして、中国人の面白いところは、そのお土産をもらった人は、さらに、そのお土産を親戚や、ご近所様、友人に観光土産をおすそ分けしているという。
つまり、中国人観光客は観光土産と買い、お土産を親戚、知人、隣人に贈ると、受けとった人はさらに、知人、隣人におすそ分けする、購入した観光土産は連鎖されている。
そして、その観光土産を気に入れば、もらったお土産を越境ECサイトで購入しているのだ。
次に観光土産のリピート購入に関する調査データを紹介する。
中国人の観光土産に関するリピート購入に関してのデータを見ると、日本への旅行で購入した観光土産を気に入って、帰国後に購入したか?については、21.5%が「よくする」と答え、43.3%が「したことがある」と回答し、6割以上の中国人観光客はリピート購入経験者であることがわかった。
また、観光土産を受けとった人に対しての質問では、後日、そのお土産と同じものをECサイトで購入したことがあるか?については49.9%が購入したと回答し、さらに、 第三者に貰ったお土産をおすそ分けしたか?に関しては、なんと、92.5%の人が第三者におすそ分けしたと答えている。
このデータから、日本で買った観光土産の6割の中国人は帰国後にリピート購入し、さらに、観光土産を貰った中国人の5割は越境ECサイトで同じものを購入していることになる。
地元の観光土産を消費拡大の一つとして企図する事業者は、買い手である中国人観光客ばかりでなく、さらにお土産を受け取った中国人も意識をした商品開発、マーケティング戦略を行うことが重要である。
次に、同レポートではリピート購入に関して、はじめての訪日中国人、2回目、3回以上訪日した人に、リピート購入意向の関係を分析している。
まず、「日本の旅行で購入した観光土産が、インターネットショップで手に入るなら再度購入してみたい」については、3回以上の訪日経験のある88%がリピート購買意向を示している。
また、ネットショップサイトに求められるサービスや機能については、 ショップサイトの中国語対応は3回目以上の訪日経験者の88%がリピート購買意向を示している。
さらに、電話やメールによる中国語でのお問い合わせについては、3回目以上の訪日経験者の73.8%がリピート購買するとなっている。
中国人が望む日本の商品、観光土産にはどのようなものがあるのだろうか。さらにお土産を受け取った中国人が越境ECを使って購入したくなるお土産はどんなものなのだろう。
それらについてのアンケート結果を見てみよう。
生産者や製造者による直接販売について3回目以上の訪日経験者の83.6%が、2回目訪日者の77.1%がリピート購入の意向を示している。
産地の明記については3回目以上の訪日経験者の77.0%が、2回目訪日者の77.6%がリピート購入の意向を示している。
日本からの直接発送では、訪日経験者の77.6%が、2回目訪日者の77.6%がリピート購入の意向を示している。
まとめると、2回目、3回以上の訪日者がこだわる観光土産は「生産者や製造者が直接販売する商品」、「産地が明記されている商品」、「日本からの直接配送商品」などと言える。
さらにアンケートでは、「日本でしか手に入らない特産品」、「果物などの季節感のある農産品など限定品」に対するこだわりは訪日回数が高くなるほど、大きくなる傾向にあるとしている。
インバウンドの最大マーケットである中国人観光客は、観光土産を買い、帰国後、親戚や友人、知人にお土産を贈り、さらに受け取った友人、知人はそのお土産を第三者にもおすそ分けする、観光土産の消費の連鎖。
さらに観光土産は、贈った人の6割が、貰った人の5割が越境ECを利用して購入する需要が存在する事実が確認できた。 そして、訪日する回数が多くなればなるほど、帰国後リピート購入する傾向も高くなることも確認できた。
この事実から、インバウンドで観光事業を拡大するには、リピート購入するための越境ECを構築することが必要不可欠の時代であると言えるだろう。 オフライン(リアル店舗)で集客後、オンライン(越境EC)で販売する、いわゆるオフラインとオンラインの融合した施策が重要である。
以下にその内容をまとめた。
まず、越境ECでは中国語対応(簡体語、繁体語)専用の商品ページの構築する。
さらに、オフライン(リアル店舗)、オンライン(越境EC)ともに観光土産については「日本製・日本産」、「地場産商品」などを強調する。
また、オンライン(越境EC)では、取引の安全性、商品の品質、商品の年間保証、返品保証を中国語で表記し、訴求する必要がある。
オフライン(リアル店舗)では、インターネットアクセスに誘導する中国語チラシや、アクセスを促す特典クーポンの表記などを行う必要があるだろう。
さらに、越境ECで観光土産を購入できることを紹介するポスターを作成し、地元観光地や観光案内所、ホテルなどに配布するなどが考えられるだろう。
今後は中国人観光客リピーターは増加し、観光土産に対して生産者、産地などへ関心が高まるだろう。そして、観光土産は帰国後、友人、知人に贈られリピート購入される。
つまり、観光地における対応と、帰国後の「旅アト」対応をしっかりと構築することが、インバウンド需要を拡大、成長させる重要なポイントとなるだろう。
出典:『訪日外国人による越境ECでの観光土産のリピート購買(連鎖消費)の可能性について』より