2018年のインバウンド総数は前年比8.7%増の3,119万1,900人と発表された。
2012年の835万人と比較すると、約3.7倍の成長ということになる。この日本の成長率は世界でも、最速である。日本の主要都市はインバウンド観光客で溢れんばかりである。
この成長を牽引している要因は、主に中国経済の活況や観光ビザの緩和政策だろう。
我が国は、今後、このインバウンド観光を活性化させ、インバウンド観光業を中心とした地方文化の再生、新たな雇用の創出など、日本経済の原動力として推進させる必要があるだろう。そして、2020年にはインバウンド総数を4,000万という目標もある。
このインバウンド観光を2020年のオリンピックイヤーの後も拡大成長させるために、何に取り組む必要があるのか、今回は、「2018年インバウンド市場の動向とさらなる市場拡大に向けて」からそのポイントをまとめてみたい。
日本政府観光局(JNTO)が2018年の年間訪日外国人数(訪日外客数:推計値)を発表している。
その内容によると、2018年は前年比8.7%増の3,119万1900人で統計開始以来の最高記録を更新。伸び率では2015年の47.1%増から低下傾向にあるが、2018年は3,000万人の大台に乗せた。
年時別の伸び率を見ると、2015年が最高の47.1%伸び率をピークに、2016年は21.8%、2017年は19.3%と徐々に下降している。さらなる上昇、成長をうながすには、新たなインバウンド施策が必要である。
下のグラフは2018年の国、地域別のインバウンド数トップテンを示したものだ。
トップは中国の838万100人(13.9%増)、続き韓国の753万9000人(5.6%増)、台湾がの475万7300人(4.2%増)、香港だけがマイナス1.1%の220万7900人、そして5位にアメリカの152万6,500人となっている。東アジアの4市場(中国、韓国、台湾、香港)でインバウンド総数の7割を占めている。インバウンドではトップテンに東アジア、東南アジア地域が8つも入っているのが、日本のインバウンドの特徴と言えるだろう。
今後はアジア圏以外のヨーロッパ方面、オーストラリア、カナダなどから誘客を促進する必要があるだろう。
2018年のインバウンドの1人当たり旅行支出平均は15万3000円と推計されている。
国、地域別では、オーストラリアが最も高く24万2000円、次いでスペインの23万7000円、イタリア22万4000円の順となっている。
インバウンド客数ではアジア圏の客数は多いが、消費する金額についてはオーストラリアやヨーロッパなど西洋諸国が上位を占めている。
この項より「2018年インバウンド市場の動向とさらなる市場拡大に向けて」より
図資料を一部引用させていただき、これからのインバウンド拡大に向けてどのような施策が必要となるのかをまとめた。
レポートによると、アジア圏と欧米豪圏の行動嗜好を踏まえた上で取り組みを推進することが重要であるとしている。
アジア圏の人気の訪問先は桜や紅葉、雪景色などの四季の風景を観光することや、テーマパークの人気が高い。そして、食事やショッピングにも重点が置かれている。
一方、欧米豪圏では、寺社仏閣や日本庭園などの歴史や文化遺産などの観光に人気が高く、日本の観光地(神社、仏閣など)を巡るといったものが好まれるようだ。
そして、それら観光や宿泊、食事、ショッピングなどの情報収集方法にはアジア圏、欧米豪圏両地域では共にWEB媒体では口コミサイトを活用し、紙媒体ではガイドブックの利用されているようだ。
さらにアジア圏では、個人ブログやSNSなど情報収集にはスマートフォンを活用する傾向が強い。
レポート「2018年インバウンド市場の動向とさらなる市場拡大に向けて」では、日本のインバウンド市場の現状や課題への対応について述べられている。
レポートではインバウンド拡大には以下の4つのポイントが必要だとしている。
日本の国際線格安LCCの就航はアジア圏のみである。これを、欧州、米国西部路線まで拡大することを提案している。格安格安LCCを利用することで、旅費がネックとなって訪日を見合わせていた、ヨーロッパ諸国の客層を開拓しようというものである。
欧州では、バルセロナーサンチアゴ、バルセロナーサンフランシスコなどの路線におけるLCC運行例もある。
格安LCCの運行には、燃油価格やロードファクター(有償座席利用率)、パイロットの確保といった採算面の課題、北極圏の通過許諾といった外交上の課題など、就航に向けた障壁は多いが開拓の余地はあるとしている。
日本はまだ観光資源を活かしきれておらず、もっと観光資源をPRして誘客に繋げようという提案である。それがスノーリゾートとゴルフツーリズムによる誘客である。
レポートでは、日本は世界第2位のスキー場数を誇るスノーリゾート大国であるにもかかわらず、スキー・スノーボード人口は減少し続け、観光庁では、「スノーリゾート地域の活性化に向けたアクションプログラム」を作成しており、活性化を施策中との内容だった。
さらに、ゴルフも同様である。日本はアメリカ、カナダに続く世界第3位のゴルフ場数を誇っている。
こちらもスノー人口同様減少の一途をたどっている。ゴルフ文化は欧米豪だけでなく、韓国、中国、タイといった訪日外客規模の大きい国々でも盛んなレジャーである。
地方への誘客として、このスキー、スノーボード、ゴルフ観光ビジネスの開発は有効な地方観光の活性化に繋がるだろう。
日本旅館の佇まい、日本庭園の風情、さらに温泉に浸かり旅の疲れを癒し、美味しい日本料理を頂く。
この「旅館」宿泊施設に高い付加価値をつけ、「おもてなし精神」をアピールする事が重要であるとしている。
日本には付加価値の高い日本旅館が多数ある。
1954年にフランスで発足した会員組織「RELAIS&CHÂTEAUX(ルレ・エ・シャトー)」がある。
「ルレ・エ・シャトー」とは、世界中から厳選された、素養と卓越、アール・ド・ヴィーヴルとおもてなしのセンスを持ち合わせたホテルとレストランオーナーらから組織されており、加盟するには厳選な審査がある。
この「ルレ・エ・シャトー」に日本から11の旅館と8つのホテルが加盟している。
海外に向け付加価値の高い日本旅館をアピールするためには、その水準を内外にアピールする事が重要としている。
「ルレ・エ・シャトー」の日本の加盟店を示したサイト:http://www.relaischateaux.jp/mem_jpn.html
最後に、抑えるべきは新しい情報発信ツールへの登録、活用である。
インバウンドでは「旅マエ」、「旅ナカ」での情報収集にはインターネットが主流の時代である。
そして情報を収集するだけではなく、観光地を検索して入場チケットを入手したり、ホテルを検索し宿泊予約をしたり、さらにレストランを検索して予約したり、などこれまで別々のサイトで行っていた「旅マエ」「旅ナカ」での情報検索、宿泊予約、決済をワンストップで行えるスマートフォンアプリが活用される時代になるだろう。
今後はこのような、スマートフォンアプアプリを活用し、インバウンド観光サービスの消費拡大に繋げる事が指摘されている。
JAPAN Trip NavigatorはJTBが提供する「旅マエ」「旅ナカ」での観光情報の提供、宿泊、ツアー、アクティビティなどの予約、飲食店予約やチャットポットによる旅行ガイドなどを行えるスマートフォンアプリである。
「JAPAN Trip Navigator」のようなひとつのアプリに様々な機能が集約された観光情報サービスのワンストップサービス化は、今後、ますます発展するだろう。
日本は経済大国でありながら、その観光資源を十分活用しきれているとは言えない。また、インバウンドに対して、観光資源の魅力についても十分に発信されているとは言えない。
日本の様々な観光資源の認知度アップには、これまで以上に、東京、京都、大阪以外の観光都市圏以外にも日本には多くの地方観光資源が埋もれていることをインターネットを活用した広報PRを拡大していかなければならない。
今回の様々な事業を官民両セクターが共同で取り組むことで、さらなるインバウンドの拡大、成長が望めるだろう。
インバウンド市場拡大に向けて行うべきことに使用した図は全て「2018年インバウンド市場の動向とさらなる市場拡大に向けて」より引用した。