2017年11月、中国3大IT企業のテンセント(騰訊)が時価総額5,230億ドル(約58兆7700億円)とアメリカSNS大手フェイスブックを抜き、アジアの企業として初めて時価総額世界5大企業に入った。
この時価総額世界トップ5企業とは、トップがアップル、2位がアルファベット(グーグルの親会社)、3位マイクロソフト、4位アマゾン、次いで5位、テンセントとなったのである。
テンセントとはアリババと並ぶ中国のITネットワーク企業で、利用者が9億人を超えるSNSサービス「WeChat」で有名だ。 今回は、中国ではアリババが有名なIT企業だが、このテンセントとはどのような企業なのかを調べてみた。
日経ニュース:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO23745470R21C17A1FFE000/
中国で代表的なIT企業は、百度、アリババ、テンセントである。中でもテンセントは驚異的な成長を遂げている。 テンセントは1998年創業のオンラインゲーム会社で、2004年には香港市場に上場した。 今では、このブログで何度か紹介している「WeChat」を主軸に幅広いサービスを展開している企業である。
テンセントはオンラインゲームが主流で中国でのシェアは5割以上で、オンラインゲームでは任天堂やソニーなど日本からの攻勢を受けることもなく、独占的にシェアを伸ばしたと言える。
テンセントが急激に伸びた理由は、ゲームのスマートホン化への対応の早かったのと、スマートホンの普及がゲームユーザーを増大させたところだろう。 そして、オンラインゲームだけではなく、テンセントはオンラインチャットのQQ(PC向け)、SNSアプリ「Qzone」、WeChat(スマホ向け、日本のLINEに相当)などプラットフォームを開発し、事業を拡大することで中国では独占的なシェアを有している。
今後、さらに注目されているのが、「WeChatペイ」、モバイル決済である。スマートホンでQRコードを読み取ることで即、支払いが完了する決済方法が中国では浸透している。 キャッシュレス決済ではアリババのアリペイがあるが、シェアはアリペイが50%、WeChatペイ38%となっている。「WeChatペイ」は日本では訪日中国観光客を対象として既に50,000店を超える小売店で使用が可能で、昨年、6月にはドンキホーテ37店舗で「WeChatペイ」の使用を可能にしている。
まとめるとテンセントとは、任天堂のようなゲームアプリを提供しながら、LINE、FacebookなどのSNSサービスを手がける企業で、さらに、今ではニュース、ビデオ、音楽、ブラウザ、モバイル決済など様々なプラットフォームを構築し、サービスを展開している企業と言える。
中国のITが発展し背景には、中国共産党の意図に従わない企業は中国では開業できないという中国のIT規制がある。中国では、FacebookやTwitter、YoutubeやGoogleの検索エンジンまで、IT規制により使用できず、GoogleもFacebookも中国からは撤退を余儀なくされている。
この中国のIT規制の壁、大きな堀に中国のITネット産業は守られているところが成長要因だと言えるだろう。 今や、中国のIT企業は中国の人口13億人という巨大マーケットを独占することで、成長しようとしている。
さらに、中国経済は毎年5.6%の成長が見込まれ、これからは、輸出主導から、内需拡大に転換しするなか、国内消費を対象としたさまざまなITサービスがこれからも伸長してゆくだろう。
テンセントはソフトバンクグループが保有するフィンランドのゲーム会社スーパーセルを90億ドルで買収すると報道している。テンセントはこのスーパーセルのゲーム資産を現在のテンセントが確保する中国市場に最適化することができれば、買収金額は高くはないのだろう。
日本の優良ゲーム企業である任天堂などと比較すると、テンセントはゲームを開発・提供しながら、売上、時価総額の面では圧倒的に上回っている。 それはテンセントは、開発した様々なコミュニケーションプラットフォームを基盤としてその空間にゲームコンテンツを提供するという、マネジメントの巧妙さにある。
日本の企業もテンセントの「常に新しいユーザーを拡大、創造する」という戦略に学ぶべきポイントは多い。
中国IT企業は、一見敵なしのように見えるが、中国では国がGoogleやFacebook、Twitterなど、世界に開かれているITを規制しているため、ある意味守られた中での成長と言えるだろう。
そして、中国国内の需要が限界に達した時、海外展開に向けた成長戦略が必要になるだろう。海外の激しい競争に打ち勝つことは容易ではない。中国IT企業が海外に開かられた中で戦うとき、テンセントの真価が問われるときかもしれない。
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