
「Shopifyで売れない」は言い訳?プラットフォームのせいにしない「売れる思考」への転換法
「Shopify 売れない」Shopify の利用者増加とともに、このキーワードで検索する人が増えています。
これはShopify に限らず、eBay, Amazon, 他すべてのECカートを利用している事業者に共通する悩みです。
物が売れない理由をプラットフォーマーの技術的理由(カート落ち、集客ツールがない、レビューを集めるツールが少ない、購入ステップが複雑、サーバの応答速度が遅い等)に置換えているだけの思考で、これらは理由ではなく言い訳です。これらの技術的課題が仮に完璧に解決されたとしても、この思考自体が売上UPに結びつく思考ではありません。
では、技術的な「言い訳」を捨て、人間がモノを買う本質的なメカニズムに基づいた「売れる思考」への転換を、エビデンスを用いて解説します。
多くの事業者が陥る「プラットフォームの機能不足=売れない理由」という思考は、心理学でいう「外的帰属(External Attribution)」というバイアスです。うまくいかない原因を自分の外側(Shopifyの機能、Amazonの仕様など)に求めることで、自我を守ろうとする防衛本能ですが、これこそが成長を阻害する最大の要因です。
では、技術的な「言い訳」を捨て、人間がモノを買う本質的なメカニズムに基づいた「売れる思考」への転換を、行動経済学や心理学のエビデンスを用いて解説します。
~ハーズバーグの二要因理論~
まず、技術的な課題(サーバー速度、決済ステップなど)の位置づけを明確にします。 臨床心理学者フレデリック・ハーズバーグが提唱した「二要因理論」では、人間の欲求を以下の2つに分類しています。
衛生要因(Hygiene Factors): 不足すると「不満」を引き起こすが、満たされても「満足」にはつながらないもの。
ECにおける例: サイトの表示速度、決済の安全性、カートの使いやすさ。
動機づけ要因(Motivators): 満たされると強い「満足(購入意欲)」を引き起こすもの。
ECにおける例: 商品への憧れ、自己実現の期待、ストーリーへの共感。
つまり、プラットフォームの技術的課題を解決することは「衛生要因」を整えることとに過ぎません。「マイナスをゼロ」にする作業であり、顧客が「プラス(欲しい!)」の感情を抱く理由にはなり得ないのです。売れる思考へシフトするには、後者の「動機づけ要因」にフォーカスする必要があります。
~カーネマンの二重過程理論~
ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンは、人間の思考モードを2つに分けました。
システム1(速い思考): 直感的、感情的、無意識的。
システム2(遅い思考): 論理的、分析的、意識的。
「購入ステップが複雑だから売れない」と嘆く事業者は、顧客がシステム2(論理)で買い物をしていると誤解しています。しかし実際には、購買決定の瞬間、顧客の脳内ではシステム1(直感・感情)が支配しています。
ハーバード・ビジネス・スクールのジェラルド・ザルトマン教授の研究によれば、購買意思決定の95%は無意識(潜在意識)で行われています。
「カートボタンの色」や「ステップ数」を気にする前に、「画像一枚、キャッチコピー一行で、直感的に脳を刺激できているか?」を問うべきです。技術的な不備があっても、顧客の感情(システム1)が「これが欲しい!」と叫べば、人は面倒な入力フォームさえ乗り越えて購入します。
~クリステンセンの「ジョブ理論(JTBD)」~
経営学者クレイトン・クリステンセンが提唱した「片づけるべき用事(Jobs to be Done)」の概念は、ECにおいても重要です。
有名な格言に「顧客は4分の1インチのドリルが欲しいのではない。4分の1インチの穴が欲しいのだ」というものがあります。これをさらに深掘りすると、「穴」すら目的ではなく、「穴を開けて棚を取り付け、整理整頓された部屋で快適に過ごす自分」を買っていることになります。
【売れる思考への転換】 「Shopifyだから売れない」と言う人は、往々にして「ドリル(商品スペック)」を売ろうとしています。
売れない思考: 「この釣り竿はカーボン製で軽量です(スペック)」
売れる思考: 「この釣り竿なら、週末の数時間で、かつてない大物との格闘という非日常を味わえます(体験と変化)」
プラットフォームの機能に関わらず、顧客がその商品を通じて「どんなより良いバージョンの自分」になれるのかを提示できなければ、モノは売れません。
~プロスペクト理論と損失回避~
行動経済学のプロスペクト理論(カーネマン&トベルスキー)によれば、人間は「利益を得る喜び」よりも「損失を被る痛み」を約2倍強く感じる(損失回避性)とされています。
また、お金を支払う際、脳の「島皮質(痛みを感じる部位)」が活性化することが分かっています。これを「支払いの痛み(Pain of Paying)」と呼びます。
顧客が購入ボタンを押さないのは、サーバーが重いからではなく、「商品から得られる快楽」が「現金を失う痛み」を上回っていないからです。
言い訳をする事業者: 「Amazonならワンクリックで買えるから売れるのに、自社サイトは面倒だから売れない」
本質を知る事業者: 「面倒な入力というコストと、支払いの痛みを乗り越えさせるだけの『圧倒的なベネフィット』を伝えきれていない」
「Shopifyだから、Amazonだから」という議論は、道路の舗装状況について議論しているに過ぎません。道路が綺麗であることは重要ですが、その道の先に「魅力的な目的地(商品価値・体験)」がなければ、誰もその道を通りません。
売上を上げるための「売れる思考」とは、プラットフォームのせいにすることをやめ、以下の3点に全精力を注ぐことです。
感情(システム1)を動かすクリエイティブを作る。
商品ではなく、顧客の未来(ジョブ)を売る。
支払いの痛みを凌駕するほどの価値を提案する。
これらが達成されれば、どのようなカートシステムを使っていても、モノは必ず売れます。
作業思考ではなく、投資思考に変化させる必要があります。これはどういうことかというと、「売れる思考」をあなたの脳にインストールするためには必要な作業は、オシャレなサイトデザインを作ることではありません。ツールの使い方を学ぶことはではありません。他社の成功事例を学習して真似することではありません。
「人間心理を理解し、行動させる言葉」を選ぶために、時間を使う必要があります。そのためには技術書やマニュアルを一時的に閉じて、以下の3つを学ぶことをお勧めします。
ダイレクト・レスポンス・マーケティング(DRM):
「イメージ広告」ではなく、行動(購入)を直接喚起するための科学。
推奨: ダン・ケネディや神田昌典氏の著書。 推奨:「悪魔の法則」
コピーライティング(セールスライティング):
文章を綺麗に書く技術ではなく、「人間心理を理解し、行動させる言葉」を選ぶ技術。
推奨: 『ザ・コピーライティング』(ジョン・ケープルズ)。
行動経済学・進化心理学:
人間がいかに非合理的で、感情で動く生き物かを知る。
推奨: 『影響力の武器』(ロバート・チャルディーニ)。
「売れる思考」を実装するために必要な作業は、オシャレなサイトデザインを作ることではありません。以下の3つの「泥臭い作業」です。
1、レビュースコア「1」のレビューを徹底して読む:Yahoo!知恵袋やAmazonレビュー(競合商品含む)の「不満の声」を少なくとも100件ほど読んでみてください。
この作業をやると、顧客の怒りの根幹を知ることができると思います。つまり、顧客が何に怒りを感じるのか、これを特定するための作業に時間を使いましょう。
2、「取引条件」をオリジナルにする: メーカーが製造した商品は変えることができませんが、「特典」「保証」「ポイント還元」「納期」などはあなたのアイディア次第でオリジナルにすることができます。
「この価格でこの内容なら、買わない方が損だ(バカだ)」と顧客が感じる極端なレベルまで取引条件を作り直すのです。
3、スペックを価値に変換する:商品の特徴(機能)を全て書き出し、それぞれの横に「つまり、顧客にとってどんな良いことがある?」と書き加えます。
例: 「防水機能(機能)」→「雨のキャンプでも、家族の笑顔が消えない(ベネフィット)」
プラットフォーム(Shopify, Amazon)や集客手法(SNS, SEO)は、時代と共に変わります。しかし、「人間の本質的欲求」と「購買心理」は、1000年前から変わっていませんし、1000年後も変わりません。
商品の選定
誰に売るかの決定(ターゲット)
どんな価値を提供・約束するか(コンセプト/USP)
これらは事業の本質です。ここを他人に丸投げすることは、経営を放棄することと同義です。
技術的な設定(ドメイン接続、配送設定、アプリ導入)は、いくらでも外注してください。しかし、「誰のどんな痛みを解決して、どう心を動かすか」という設計図を描くことだけは、事業者の特権であり、最大の責務です。
今日から、「Shopifyだから売れない」「機能が足りないから売れない」という言葉を捨てましょう。それは、「筆が悪いから名画が描けない」と言っているのと同じです。
あなたの手元にあるShopify(あるいは他のカート)は、すでに売るための準備ができている状態です。 問題は「技術」ではありません。「何を描くか(メッセージ)」と「誰に見せるか(ターゲット)」です。
先ほどの解説で、「プラットフォームの機能不足を言い訳にせず、顧客の『買わない壁』を取り除くことこそが事業者の仕事である」という結論に至りました。
この「売れる思考」を、今最も熱い市場である「東南アジア越境EC」に当てはめた時、多くの事業者が直面する最大の「買わない壁」とは何でしょうか?
それは、「決済(Payment)」です。
先ほど触れた行動経済学の「支払いの痛み(Pain of Paying)」が、東南アジアでは物理的・システム的な壁となって立ちはだかっています。どれほど商品が魅力的でも(動機づけ要因)、現地の商習慣に合った決済手段がなければ、顧客は財布を開くことができません。
逆に言えば、この「決済という名の心理的・物理的バリア」を正しく取り除くだけで、売上は劇的に変わります。
ShopeeやLazadaなどのプラットフォームに依存するだけでは決して見えてこない、「顧客がスムーズに購入できる(痛みのない)導線」をどう設計するか。
その具体的な「答え」と「実証結果」を、このセミナーですべて公開します。
タグ: shopify