NetflixやAmazon Prime Videoのトップ画面にずらりと表示される、あなたへの「お勧め作品」。このパーソナライズドレコメンド経由で作品を選択し、視聴する割合は80%以上もあるらしい。
また、ファッションECではパーソナライズ機能により、洋服やコスメなどしっかり顧客の趣味嗜好に合ったものを提案しているECサイトが顧客購入率をアップさせ、ストアの売上を上げている。
コロナ禍で在宅期間が長くなることで、Eコマースや動画配信サイトの利用が高まり、多様なユーザーの顧客体験を高める「パーソナライズ」が注目されている。
今回は、特にECサイトの「パーソナライズ」についてその種類、メリット、デメリット、さらに現在、開発中の「LiveCommerceのパーソナライズ機能」などについてまとめた。
パーソナライズ(personalize)とは、それぞれの人(person)に合わせるといった意味で、マーケティングにおいては、企業が多様なユーザーの属性や趣味嗜好、行動履歴に合わせて個別に情報や商品、サービスを提供することである。
パーソナライズの利点は、ユーザーが意識的にも無意識的にも欲しいと感じている情報を的確なタイミングで届けることができるところだろう。
ユーザーにそのような情報なり、商品・サービスの提案は実店舗で言えば、有能な接客である。心に響くパーソナライズ体験はユーザー体験となり、クリック、口コミ、シェアというアクションにつながる。
ここでは、ECサイトのパーソナライズについてその種類を見ていこう。
ECサイトにおいてのパーソナライズ機能の代表的なものは、レコメンド機能である。そのほかにはプシュ通知、メルマガ配信などもパーソナライズ機能によるものだ。それぞれの特徴をまとめた。
ECサイトに最も重要なレコメンド機能は、ユーザーの登録情報や購入履歴、似たような属性のユーザーの閲覧履歴などをもとに、商品閲覧者に対して最適な商品をお勧めするために表示する機能である。
レコメンド表示例は、「お客様が閲覧した商品に関連する商品」、「お客様の買い物に基づくおすすめ商品」、「あなたの購入傾向からみたおすすめ商品」、「この商品を見ている人はこちらもチェック」などがある。
ECサイトでは以下の場面でレコメン商品を提案できる。
・トップページのお勧め商品
・商品詳細ページでのお勧め商品
・カートインページでのお勧め商品
・決済完了ページでのお勧め商品
ECサイトの場合、最も効果があるのは、トップページでのレコメンド表示だと考えられるが、レコメンド効果が高いのはカートインページで類似商品やおすすめをポップアップ形式で表示させることである。
なぜなら、顧客は商品を買うと決意し、カートへ入れた瞬間が、買い物の緊張感から解放され(特に高額商品の場合)、つい、その他のお勧め商品を追加で購入する傾向が高いのである。
プッシュ通知とは、ECサイトで何らかの通知をすることで、高倍率を上げる手法である。
「カゴ落ち」メールとしての利用が多く、ユーザーが商品をカートに入れたあと購入手続きのないまま数時間後や数日後、「カゴの中の商品を忘れてませんか?」と購買履歴データからメールなどお知らせを送るものである。
メルマガにもパーソナライズは活用できる。これはメルマガに自動的に個別ユーザーにお勧め商品などを掲載するものだ。
ユーザーの属性や居住地域、購入履歴などのデータをもとに、送るメールの内容やタイミングを変えることで、ユーザーは自分にとって関係のない情報を受け取らなくて良いいうメリットがある。
ECサイトはパーソナライズ化することで、ユーザーの探す手間、商品を見つける手間を省く利便性がある。
多くの商品がある場合、検索するか、カテゴリーから探すことが一般的だが、もう一つ「お勧め商品」として顧客の興味のある商品がトップページ並んでいることで、顧客はじっくりサイトを回遊し、直帰率は減少する。
あるECサイトでは、トップページのパーソナライズにすることによって、直帰率を70%から30%にまで低減することができた。ここでは、パーソナライズのメリットを整理した。
パーソナライズは潜在顧客のアプローチにも有効である。多くのユーザーは自身が求めているニーズに気づいていないケースが多い。パーソナライズを利用することでユーザー自身が求めてきた情報に気づかせることができ、潜在顧客を取り込むことができる。
ECサイトに訪れた顧客に対して、最適なタイミングで、最適な情報を、最適な方法で提供するパーソナライズ。パーソナライズは既存顧客の信頼も獲得できる。
パーソナライズを利用した顧客に適した情報を提示は、サイトの商品やサービスのファンにつながり、顧客が利用停止するのを防いだり、他社サービスへの利用へ乗り換えを防ぐ効果がある。
ファンになった顧客は、顧客満足度が上がることで、口コミやSNSでの拡散効果も期待できる。
パーソナライズはユーザー情報の収集・蓄積、さらに分析に注力することになり、分析した情報をもとに、新商品開発に活用することもできるだろう。
このパーソナライズで収集したユーザー情報を活用・開発は、将来的には「DX」にもつながる。
DVDの宅配事業からスタートしたNetflixは、WEBサイトのレコメンドAIを進化させ顧客データ分析に基づいて、今やオリジナル作品を企画している。
パーソナライズは、顧客の詳細データを収集・分析である。これらを活用し精度の高い提案をすることである。だが、その提案は、パターン化してくると顧客はまた、同じ嗜好内容かと飽きられる可能性がある。ここではパーソナライズの陥りやすいデメリットをまとめた。
パーソナライズの基本はユーザー情報のパターン化である。
パーソナライズは膨大なデータを基にして行うが、それが必ずしも全てのターゲットに当てはまるとは限らない。
表示頻度を調整したり、ユーザー層を狭く絞るなど、パーソナライズ設定を修正できるような運用環境も必要である。
パーソナライズはユーザーの趣味嗜好、属性などに合わせた情報の提供が強みであるが、設計によっては提供する情報が偏ったものになる可能性がある。
ユーザーにいつも同じような商品を提案してしまうと、しつこく感じてしまいマイナスのイメージを与えてしまうことになる。
常に、行動履歴から、新しく情報が変化し、ユーザーにとって最適なものを提案できるパーソナライズ機能でなくてはならない。
現在行っているLive Commeceプラグインのパーソナライズ開発はトップページのパーソナライズである。
このパーソナライズ機能を導入することで、多くのユーザーが今の自分にとって興味のある商品が次々に見つかる越境ECサイトに変貌することができる。
内容は既存顧客ばかりではなく、初めてECサイト訪問したユーザーでも、ユーザーの過去の行動履歴から「おすすめ商品」がトップページに並ぶというもの。
さらに、ユーザーがECサイト滞在時においても、商品閲覧が進むにつれ、そのユーザーが「今いちばん」見たいだろう商品がリアルタイムに変化するというものである。
ユーザーの入り口であるトップページに自分の興味にあった商品があったり、関連商品が並んでいれば、直帰率も減り、ユーザーが求める商品も見つけやすくなるだろう。
ECサイトの顔でもあるトップページには、「最高の接客係」でナビゲートしていただきたい。
パーソナライズはメリットも多いが、これからのパーソナライズはデメリットでもある提案されるコンテンツの偏りをなくし、偶然性の創出が必要になるだろう。
パーソナライズが浸透すれば、考えられるのは、どのサイトでも自分の好みにあったものばかりが提案されることへ鬱陶しさを感じることになる。
例えばビートルズをよく聴くユーザーは、YouTubeでもGoogleニュースでもAmazonでもどこでもビートルズ関連コンテンツが提案されることになる。時にはもっと変わったものも提案してほしい、偏った提案は時にはマイナス効果になる。
そこに必要な発想は「反パーソナライズ」であり、偶然性、セレンディピティによる予想外の新しい発見があることである。
これらは「偶発的消費を実現」とも呼ばれ、AmazonやNETFLIXが研究している分野だ。
ユーザーがECサイト上で思わぬ商品との出会い、素敵な偶然によって、ついつい買い物をしてしまう、ECサイトを閲覧し、買い物することに幸福を感じるパーソナライズ体験が必要である。
参考: