先週より、ラクビーワールドカップ2019日本大会が開催され、まず、日本はロシアに快勝し、予想以上の盛り上がりを見せている。大会会場も座席は観衆で埋め尽くされ、今後のインバウンド状況がどう変化するのか、気になるところだ。
そして、先月8月訪日外国人数が公表された。発表によると、今年初めて前年度比で2.2%減少したと発表された。これは、日韓情勢の影響で観光人訪問客の減少が大きいとみられ、9月以降、インバウンドはどこまで回復するか見守りたい。
また、9月17日には日本政策金融公庫より「インバウンド対応」に対して現況や課題に対するアンケート調査の結果が公表された。
今回は、この資料の内容を元にインバウンド集客の現況と課題についてまとめた。
今年8月のインバウンド数は、2018年8月の257万8千人を約6万人下回り、前年同月比2.2%減の約252万人となった。これは、2018年9月以来、11か月ぶりに前年の同月を下回ったことになる。
また、インバウンド数が単月で100万人を超えたのは中国である。中国は前年同月比16.3%増の1,000,600人で、8月として過去最高を記録している。
中国は日本の訪日外国人数を牽引している状況である。そして、台湾、タイ、シンガポール、フィリピン、ベトナム、インドは8月として過去最高を記録し、さらに、欧州(フランス、ドイツ、イタリア、ロシア)、アメリカ、オーストラリアも過去最高の2桁の伸びを示している。
大きく下回ったのは韓国である。8月は日韓情勢悪化の影響で訪日旅行を控える動きが顕著に現れ、前年同期月比48.0%減の308,700人であった。
9月以降、韓国訪日客の減少がどこまで続くのかと、ラクビーワールドカップ2019によるインバウンド数がどこまで増長するかが問題である。見守っていきたいところだ。
9月17日、日本政策金融公庫では「インバウンド対応に関するアンケート調査結果」を公表した。
このアンケート調査は訪問面接で2019年4月〜6月期に行われ、47都道府県の3,142企業(内訳は多い順に飲食業、美容業、理容業、クリーニング業、ホテル・旅館業、食肉・食鳥肉販売業、公衆浴場業、映画館、氷雪販売業)に対し回答を得たものである。
概要的には外国人集客に向けた取り組みに対して、「実施している」が30.3%と前年度比を4.5上昇し、3年連続で取り組みが進行しているようだった。
インバウンド数は韓国を除き確実に増加しており、今月からラクビーワールドカップ2019が開催され、さらに9月、10月、11月と訪問客数は増加するだろう。
さらに、来年には東京オリンピック、パラリンピックが開催され、インバウンド対応が急務である。今回のこの調査は、現況ではインバウンド対応がどこまで進んでいて、何が課題となっているかを知るよい統計結果となっている。
以下にアンケート内容を整理した。
インバウンド対策に向けた取り組みは、「実施している」と回答した企業割合が30.3%と前年調査を4.5ポイント上回り、3割を超え、3年連続で上昇している。
また、今回は前年比を見ると取り組み率が17%上昇している。
業種別にみると、ホテル・旅館業が75.4%と最も高く、次いで、公衆浴場業が47.7%、飲食業の33.9%となっている。
外国人観光客の集客に向けた取り組みで効果的なものは、「キャッシュレス決済の導入」と回答した企業割合が34.4%と最も多く、次いで、「Wi-Fiなどインターネット接続環境の整備」の27.8%、「メニューや施設内の案内等の外国語表記の実施」26.8%となっている。
今回の内容では特質すべき点は、「キャッシュレス決済」の浸透である。
前回2018年調査では、Wi-Fiがトップで、次にメニューの外国語表記、次にクレジット(キャッシュレス)決済の導入となっていた。しかし、今年は「キャッシュレス決済の導入」がトップであり、これは多くの中国人観光客に対応するため実施されていることと、日本の10月増税による「キャッシュレス決済によるポイント還元キャンペーン」などがキャッシュレス化を後押ししているものと思われる。
各業種により、外国人観光客の集客対策には違いがあり、それぞれ効果があるとしたのは、以下の内容となっている。
飲食業では効果的なものは「メニューや施設内の案内等の外国語表記の実施」で37.2%。理容業では「キャッシュレス決済の導入」で38.6%。
美容業でも「キャッシュレス決済の導入」で42.9%。
ホテル・旅館業では「Wi-Fiなどインターネット接続環境の整備」で59.5%。
公衆浴場業では「外国語でのパンフレットと、コミュニケーションツールの作成」が24.2となっており、各業種間でインバウンド対策において、効果的な取り組み内容に違いがあることがわかる。
外国人観光客に対する今後の方針は、「積極的に受け入れていきたい」、「受け入れてもよい」と回答した企業割合の合計が56.4%と、過半数以上を占めている。
受け入れの全体数(56.4%)については前年調査とほとんど変わっていない。「積極的に受け入れたい」が1ポイント上昇した程度である。
業種別に見ると、映画館が80.4%と最も高く、次いで、ホテル・旅館業(78.7%)、公衆浴場業(76.1%)となっている。
外国人観光客を受け入れる上での課題は、「従業員の語学力の向上」と回答した企業割合が38.5%と最も高く、次いで、「メニューや施設内の案内等の外国語表記の実施」が27.0%、「キャッシュレス決済の導入」が24.5%、「多言語によるパンフレット、コミュニケーションツールの作成」が20.2%などとなっている。
この「従業員の語学力の向上」、「メニューや施設内の案内等の外国語表記の実施」は前年調査と変わらない。
従業員が外国人に対して英語、あるいは中国語での接客教育など進んでいないことがわかる。
外国人観光客を受け入れる上での課題を上位から業種別にみると、「従業員の語学力向上」と回答した企業割合は、美容業が47.0%、映画館が46.7%、ホテル・旅館業が46.5%などとなり、「従業員の語学力」が多くの業種で共通の課題であることがわかる。
また、「メニューや施設内の案内等の外国語表記の実施」は飲食業が33.2%、
「キャッシュレス決済の導入」については、理容業が34.8%が課題としてトップである。
この調査では、「従業員の語学力向上」が、美容業、映画館、ホテル・旅館業は最重要で、飲食では38%、理容業でも33%と重要度は高い。
今回の調査では、まず、「キャッシュレス決済の導入」が進んでいることを裏付けた結果であった。
これは、中国人インバウンドの増大が大きく影響していると言えるだろう。
日本の象徴である富士山でも今年、7月1日より吉田口登山道に設けられた「富士山保全協力金」の支払い窓口に、Airレジ・Airペイが導入された。
これにより登山者は、クレジットカードや電子マネー、QRコード決済での支払いが可能となった。このAirペイ電子決済は、当然、中国決済スマホ決済Alipayなどにも対応している。
そして、中国の訪日観光客は、年々増えており、8月も100万人を超えた。この中国人観光客のニーズを満たすことが、インバウンドの受け入れ、成功への近道と言える。
中国人観光客のニーズに応えるためには、何を行えば良いか。それは、彼らが抱えている不安を解消することである。
中国ではキャッシュレスが日常生活では当たり前に利用されており、日本でも中国人が利用できるように、キャッシュレス化に対応し、アンケートにその内容が明らかにされている。
今後は、「従業員の語学力の向上」に注力るする。つまり、お店のスタッフとの中国人、外国人とのコミュニケーションを円滑に行えるように環境を整えることである。
下記に「従業員の語学力の向上」ための重要度順に整理した。
お店や施設では、従業員の外国語力アップのために、できるところから実施すべきである。
インバウンド対策で重要なのは、お店や施設での外国人とのコミュニケーションである。外国人は飛行機で何時間もかけ、日本では観光バスや電車を乗り継ぎ、観光地へ到着するのである。
外国人が訪店したら、「どこから来たんですか?」とか、「この商品が人気がありますよ、ゆっくり見てって下さい。」など、観光客に対して、踏み込んだコミュニケーションができることが大事だと考える。つまり、そのお客様を大好きになる、愛情を高めて接客することが成功への秘訣だろう。
外国人に対する苦手意識を克服するためにも、社員研修などを行い、おもてなしの心を伝えるために何が必要かを検討するのも良いだろう。
日本人は本来、ホスピタリティに優れた民族なのだから。
参考:「外国人観光客の集客に取り組む企業の割合が3割に上昇」日本政策金融公庫より
図に関しては「インバウンド対応に関するアンケート調査結果」のデータをもとに作成した。