国内のデジタル広告(インターネット広告)市場は、2019年初めて、2兆円の大台に乗り、テレビ広告を上回った。
昨年2020年はコロナ禍で、広告市場はどうだったのが、その動向が気になるところだが、22020年12月22日、株式会社サイバー・コミュニケーションズから、「2020年下期インターネット広告市場動向レポート」が公表された。
これは、新型コロナの影響で、インターネット広告キャンペーンがどのように変化したのか、その内容をアンケート調査し、まとめたものだ。
今回はこのアンケート調査の内容と2020年のデジタル広告の動向、さらに今後期待されるデジタル広告の分野についてまとめた。
株式会社サイバー・コミュニケーションズは2020年11月、国内と国外のデジタルマーケティング業界の関係者を対象に、新型コロナ禍における「インターネット広告市場」の動向に関する調査を実施し、その内容を公表した。
2020年上期も同様の調査を行っており、その際の内容では、インターネット広告予算は、前年同期比61.5%減と、インターネット広告は、コロナの影響で大きく減少した。
だが、下期にあっては、広告予算は36.1%が増加したと回答。そのなかでも9.8%の回答者は大きく増加したと回答している。
下期に入ってデジタル広告は回復傾向にあるとされている。
インターネットメディアへの広告費取引手法別の増減を上期と比較すると、予約型、検索型、ソーシャル広告、運用型広告(動画広告含)、アドネットワーク型、アフィリエイト広告については全て、下期に入って増加に転じている。
中でも大きく増加に転じているは、ソーシャル広告(30.3%)と運用型広告(36.0%)であった。
特にこれらは、キャンペーンにかける入札額が増加していることに起因し、SNS広告と運用型広告、その運用型でも動画広告がデジタル広告を牽引しているようだ。
サイバー・コミュニケーションズの調査内容にもあるように、2020年のコロナ禍においては動画広告が近年以上の拡大成長を遂げているようだ。
下図は2020年12月17日発表されたサイバーエージェントがまとめた「国内動画広告の市場動向調査」であるが、2020年の動画広告市場は2,954億円、昨年比114%の見通しとなっている。
さらに、この市場は2021年には3,889億円、2024年は6,856億円に達すると予測している。
そして、下図を見てもわかるように、2020年動画広告のスマートフォン広告需要は、昨年比114.8%の成長しており、動画広告市場全体の89%にまで達すると予測している。
また、「国内動画広告の市場動向調査」から、2020年の動画広告の商品種別では、インストリーム広告が1156億円、インフィード広告が1,192億円、インバナー広告が166億円、その他440億円となっている。
2021年予測では、インストリーム広告が1,586億円(137%増)、インフィード広告が1,547億円(130%増)、インバナー広告が191億円(115%増)とインストリーム広告とインフィード広告が今後拡大見込みが大きいことを示唆している。
デジタル広告がまだ、開拓されていない分野にデジタル音声広告がある。
デジタル音声広告とは、radikoやSpotifyなどで配信されているような、音声による広告表現を主軸としたデジタル広告である。
2019年時点のデジタル音声広告市場規模は7億円にとどまったが、この市場は大きく拡大すると見込まれおり、2020年には16億円、2022年以降は急成長を経て、2025年には420億円に達すると予測されいる。
それらを見越して、電通グループではプログラマティック広告によるPremium Audio広告の提供を開始し、デジタル音声広告の取り扱いを強化しているし、博報堂も海外企業と連携し、デジタル音声広告のダイレクトレスポンスニーズの取り込みに向けた研究開発に着手した。
今後、普及が進むとされるスマートスピーカーであるが、普及が進めばこの分野でも広告配信が増加は間違いないだろう。
2020年は「巣ごもり需要」に象徴されるように、消費者の消費行動が変化した年と言える。
この傾向は2021年も続くと予想され、この「巣ごもり需要」から、今、新たなメデイアに注目が集まっている。それは、コネクテッドテレビである。
インターネット端末へ配信される動画番組をテレビで視聴するという形態がコネクテッドテレビである。
そして、このコネクテッドテレビに配信される動画番組の広告がコネクテッドテレビ広告である。
アメリカでは既に、このコネクテッドテレビ広告分野においては、大きな需要があり、2019年で65.5億ドル(約6,878億円)の市場規模となっている。
2020年は新型コロナによる「巣ごもり需要」により、インターネット動画配信サービスをテレビ端末で視聴するという需要は大幅に増加した。
この視聴の増加に伴い、コネクテッドテレビ向けに配信された広告量も急増し、2020年の国内コネクテッドテレビ広告市場は102億円と、前年比1.6倍となることが見込まれている。
テレビで視聴するデジタル広告は、今後どのように広がりを見せるのか。
インターネットをテレビで視聴するのが当たり前の時代になると、ますます、この分野の広告は高い比率で増加するだろう。
最後に世界のデジタル広告市場を寡占してるといっても良いだろう、Googleの2020年の決算報告の第2四半期(4月~6月)と第3四半期(7月~9月)から、2020年はデジタル広告は拡大したのか、縮小したのか検証してみる。
公表によると、第2四半期、4月~6月のGoogle売上高は383億ドル(約4兆円)で、前年同期比の2%減少。純利益は69億6,000万ドル(約7270万円)となっている。
そのうち、Google広告の売上は298億6,700万ドル(約3兆1,100億円)で、前年同期比で26億2,700万ドルの減少とされている。
ただ、減少の中にあっても、YouTubeの広告収益は38億1,000万ドル(約3,980億円)で前年同期比で5.8%増と拡大している。
そして、第3四半期、7月~9月のGoogleの売上高は461億7,300万ドル(約4兆8300億円)。
前年同期は404億9,900万ドル(約4兆2,370億円)だったので、56億7,400万ドルの増加であり、この第3四半期は回復した。
そして、広告売上高においても、370億9,500万ドル(3兆8,700億円)で前年比9%の増加に転じた。
さらに第3四半期、大きく拡大したのは、YouTube動画広告で、50億3,700万ドル(約5,260億円)。「巣ごもり需要」によるYouTube動画視聴の増加が、動画広告の配信を伸長させたようだ。
Googleの第4四半期(10月~12月)の決算報告はまだ発表されてないので、この期間の収益に関する増減は気になるところだが、2020年4月〜9月において、Google広告は、新型コロナ禍で一時期、収益は減少したが、下期においては広告事業はYouTube動画広告が牽引する形で、事業は増収増益に転じたようだ。
今やニュースなど情報源はテレビの時代ではなく、インターネットやSNSからの情報が最速の時代である。
そして、デジタル広告も主流は、PCからスマホへ、さらに、よりパーソナルなSNSへの表示へと変わろうとしている。
2020年はコロナの影響で「巣ごもり需要」が増加し、スマートフォンで動画を視聴する消費者が拡大した。
今後、5Gの普及が本格的に展開されれば、動画コンテンツ視聴は増加し、動画広告市場はますます、拡大が予想される。
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