
マーケティングリサーチ会社のニールセンによって最近実施された調査で、「消費者の購入決定に最も影響力の大きいコンテンツは、専門家によるレビューだ」という興味深い結果が出ました。
消費者の購買行動に焦点を当てたこの調査の内容を詳しく見ていきましょう。
調査概要
調査の概要は、3つの異なるオンラインコンテンツ「専門家によるレビュー」「ブランド作成コンテンツ」「カスタマーレビュー」に対する印象を900名の消費者に個別に聞くというものです。特に9つの製品に対して、それぞれのコンテンツが、「親近感」→「好感」→「購入の検討」といった消費者の購買プロセスにおける意識に与える影響について調査されました。
3つのオンラインコンテンツの中で、「専門家によるレビュー」=「論理的で説得力のある、第3者によるオンライン記事」は、親近感、好感、購入の検討という、購入におけるすべての意識段階において最も影響力が強いという結果がでました。数値に表すと次のとおりです。
専門家によるレビューは、
・商品に対する「親近感」を、ブランド作成コンテンツよりも88%多く、カスタマーレビューより50%多く生じさせた。
・商品に対する「好感」を、ブランド作成コンテンツよりも50%多く、カスタマーレビューより20%多く生じさせた。
・商品に対する「購入の検討」を、ブランド作成コンテンツよりも38%多く、カスタマーレビューよりも83%多く生じさせた。

調査対象となった商品カテゴリーは、自動車保険・新車・テレビ・スマートフォン・ドライヤー・チャイルドシート・デジタルカメラ・テレビゲーム・電動歯ブラシの9種類です。商品別にみても、専門家によるレビューの影響力は強く、次のような結果となりました。
専門家によるレビューは、
・商品に対する「親近感」を、9製品のうち7製品において最も強く押し上げた。
・商品に対する「好感」を、9製品のうち5製品において最も強く押し上げた。
・商品に対する「購買意欲」を、9製品のうち6製品において最も強く押し上げた。
これに対して、ブランド作成コンテンツは、カメラのように、商品の性能が購入決定の決め手となる商品においては最も影響力が大きく、カスタマーレビューは、テレビゲームのようにユーザー側にたくさんの実践知識がある商品においては、最も影響力が大きいという結果も出ました。

では、購買決定において、なぜ専門家のレビューが他のコンテンツよりも消費者に好まれるのでしょうか?
1つめの理由として、専門家のレビューは信頼度が高いと考えられている点にあります。ブランド作成コンテンツは、客観的に商品を評価できているのか疑わしいと50%の消費者が感じています。また、カスタマーレビューについても、企業側がお金を払って好意的なカスタマーレビューを集めているのではないか?と疑う消費者が61%も存在するのです。その点、専門家による論評は、企業から離れた立場で書かれており、信頼がおけるというのです。
2つめの理由としては、消費者は専門家のレビューの方が、他のコンテンツより情報量が多いと感じている点にあります。平均すると、ブランド作成コンテンツに比べて8%、カスタマーレビューに比べて10%も情報量が多いと感じられているのです。専門家ならではの視点から、細かい部分にも観察眼が行き届き、企業が触れたくない欠点についても的確に評価されているのです。
この調査は、アメリカのラスベガスにおいて、オンラインで実施されたものですが、Eコマース市場が飛躍的に拡大している日本でも、注視すべき結果ではないでしょうか。
自作のコンテンツを工夫したり、カスタマーレビューを充実させたりといった努力を重ねている企業は多いと思いますが、この調査結果からは、企業が作成したコンテンツやカスタマーレビューを見ながら、第三者の意見に耳を傾ける冷静な消費者像が浮かび上がります。
新製品を出した場合などには、例えば業界紙などを通じてその分野で信頼されている専門家を紹介いただき、忌憚のない意見を述べてもらうように働きかけるといった、市場での評価を高めることも今後ますます重要になりそうです。
参考:
・Which Type of Online Content Most Influences Customers?