中国のEC市場は、旺盛な購買意欲に支えられて著しく成長していることは、周知の事実だ。
数年前に日本を賑わせた爆買いから2016年は、越境ECに市場は移行し、まさに、越境EC元年とも言える年であった。その内容を裏付ける報告書が富士経済より発表された。報告書は「中国向け越境EC市場の実態と今後2016」と題されたもので中国の越境EC市場に関するものである。
今回はこの内容をもとに、中国の越境ECで市場規模、越境EC売れ筋商品、2大越境ECモールについて見ていこう。
中国の越境EC市場規模はグラフにあるように前年比23.7%増の2,320億元(3兆8,443億円)が見込まれ、以降も市場拡大が予想される。今年2019年はさらに2倍強の4,700億元(7兆7,879億円)と大幅な成長と予測している。
越境ECでの商品購入国のトップは日本、次いでアメリカ、韓国の順となっている。日本からの購入品では生活雑貨のベビー用品、マタニティ、ビューティ関連のスキンケアを中心に人気が高い。
中国消費者が日本製品を好む理由は、日本製品の品質の高さである。高品質かつ安全・安心な商品を求める中間層や富裕層の増加が日本ブランドを支持している。
中国向けの日本からの越境EC市場は、2016年は613億元(1兆158億円)が見込まれる。 2019年には1,270億元(2兆1,044億円)の2倍強と予測している。
日本ブランドの中国進出、販売する手段としては中国ECモールサイトへの出店がある。中国最大の2大ECモール「天猫国際」、「京東全球購」などへ開設するケースが多い。
それぞれ、売れ筋商品に違いがあるが、全体的には、生活雑貨、ビューティ関連商品に人気が高い。
表にあるように日本製品で人気が高いのは、生活雑貨のベビー用品、おむつ用品、マタニティだ。越境ECが普及する以前から、中国製に不安のある消費者の日本製への人気によるものだ。
次の売れ筋商品はスキンケアを中心にした化粧品関連だ。昨年4月に行郵税が廃止され、実質100元以上の商品は減税となったことにより、高級ビューティ関連商品がよく売れているようだ。
アパレル系ではベビー・子供服、インナーウェア、マタニティウェアなどで、家電は炊飯器や空気清浄機などが人気商品であるが、取り扱いは小規模だ。
「食品」は菓子類や飲料(リキッド、茶葉類)が中心で、「フルグラ」「じゃがポックル」(ともにカルビー)など、「健康食品・医薬品」はサプリメントが中心であるが、規模は小さいようだ。
中国の最大越境ECのショッピングモールサイトは「天猫国際(Tmall国際)」と、天猫に次ぐ売上を誇る「京東全球購(JD Worldwide)」である。両者を比較すると2016年の総売上は、Tmall国際はJD Worldwideの約1.5倍となっている。
2016年の両者の売上の月別推移を大きな差があるのは、11月である。11月は独身の日W11があり、この期間のTmallのイベントがいかに影響力があるかがわかる。
また、6月の売上はJD WorldwideがTmall国際を大きく上回っている。これはJD.comが6月18日にアニバーサリー記念セールを実施した影響によるものだ。
全体的に大きな差がつくのは独身の日のイベントセールなどでどのようなマーケティングを行うかがポイントとなる。
上のグラフはTmall国際とJD Worldwideの両者の売れ筋商品のカテゴリーの割合を示したものだが、Tmall国際は1位から順に美容関連、食品・健康、マタニティ・ベビーとなっており、JD Worldwideは1位から順にマタニティ・ベビー、デジタル製品・家電、美容関連となっている。両者でどちらにも多いのがマタニティ・ベビー商品であり、Tmall国際は美容関連が強く、JD.comはデジタル家電が強いようだ。
TmallとJD.comの通常のモールでは両者には大きな差があるが、越境ECに関しては、通常モールほどの差はない。その差のほとんどは、独身の日の消費者行動をどう確保するかがポイントとなる。
商品もTmall国際は多種多様な商品が売上で売上を伸し、JD Worldwideではデジタル商品など、一部の商品に偏る傾向が強いことがわかる。
今回の越境ECの売上げ(2016年見込み)など調査内容をみると、日本から中国に商品販売する越境ECは大きく拡大 を遂げていることがわかる。
この越境ECからの購入を支えているのは、20~30代の若い富裕層を中心とした購買層である。彼らは越境ECを活用し、気軽に日常的に海外製品を購入し、豊かな生活を手に入れている。
そのような海外製品を購入の際に利用されているのが、「天猫国際(Tmallグローバル)」や「京東全球購(JD Worldwide)」などの越境ECモールである。越境ECで中国へ販路拡大する場合、それぞれの各モールの特性を考慮して、出店検討してみるのも良いだろう。
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