ECコマースで「SDGs」に取り組む3つの方法


SDGsイメージ

世界にコマースプラットフォームを展開するShopifyの調査データによると、消費者にとって、サステナビリティ(持続可能性)が重大な関心事であり、日本の消費者2000人のうち32%が、「すでに持続可能な買い物を実践」しているという。
また、45%の消費者が「年末年始の商戦中、持続可能なブランドから製品を購入する可能性が高い」と回答している。
アフターコロナとなっている現在、消費者は「SDGs」に大きな関心を寄せていることは事実だろう。
今回は、Eコマース企業が商品販売以外で「SDGs」に取り組む方法について解説する。

Eコマース企業で「SDGs」を重要課題としているのは3割程度

株式会社エルテックスの公表した「通信販売調査レポート2022年」によると、「ESG/SDGsなど企業の社会的責任」は、32.7%となっており、Eコマースに取り組む事業者の3分の1は、「SDGs」がビジネス上の重要課題と認識していることがわかった。

下の図は、「あなたの会社、事業所の通信販売事業(EC)について、 ビジネス上重要と思われるものをいくつでもお選びください(複数回答)」という質問に対しての回答である。

SDGsの取り組み

 

Eコマースでは梱包材が最も取り組みやすい

また、9月25日、ネットショップ作成サービス「BASE」が公表した「SDGsに関する意識と実態調査」によると、対象者1,160名の内の83.1%のネットショップ担当者は、SDGsに興味や関心はあると回答している。 その他の回答として「いいえ」が11.0%、「SDGsを知らない」が5.9%であった。

また、「SDGsへの興味関心がある」と回答した968人を対象に、販売商品以外で、SDGsに関して工夫や、取り組みをしているか質問については、71.7%が「している」と回答しており、Eコマース事業者は、「SDGs」に積極的な姿勢であることがわかる。

さらに、下の図は「SDGsの具体的な取り組み」について示したものだ。 「梱包材」が38.4%、「商品を製作するうえで配慮している」が32.3%、「売上金を支援に充てている」が4.6%などとなっている。

Eコマース事業では配送に関わる梱包材、つまり、ダンボールや緩衝材を環境に配慮したものを使用することが、最も多いことがわかる。

SDGsの取り組み

ECでの商品販売以外で「SDGs」取り組める3つのこと

Eコマース事業で「SDGs」に対してどのように取り組むべきかついては、色々と考えられる。
最も多いのは、SDGs目標12の「つくる責任 つかう責任」を意識した、訳あり商品や消費期限が迫っている商品をECで販売し、フードロスに貢献すること。
または、環境に配慮した商材をEC販売するビジネスなどがあげられる。
ここでは、それらEC運用以外に取り組むことができる、Eコマースの「梱包材」、「配送」、「返品」でSDGsに取り組める3項目についてまとめた。

(1)梱包材

・ダンボールを再利用し、長く使えるものにする取り組み

「stible=still usable」という梱包材は、折り畳みができ、何度も使える再利用型梱包材である。
梱包材のクリーニングや修理を行うことで、商品納品時だけでなく、商品の配送や返却、レンタル商品の配送や回収にも使える。再利用は20回以上可能だ。

・緩衝材

梱包においては、ビニール袋やプチプチに含まれるプラスチック製の緩衝材が多く使われる。
「SDGs」の観点から、脱プラで環境に優しい緩衝材、例えば、木を削った鉋屑を緩衝材に利用する試みがある。
EC事業では、商品発送に関わる梱包材を如何に環境に配慮したものを使用するほか、リサイクル可能、再利用可能、堆肥化可能がキーワードだ。

(2)配送

国土交通省が2020年4月に公表した「運輸部門における二酸化炭素排出量」によると、運輸部門における二酸化炭素排出量は減少傾向にあるが、排出量のうち約9割を自動車輸送が占めており、「排出削減対策」が低炭素物流を実現する為のポイントとなるだろう。
配送においては、カーボンニュートラルにための二酸化炭素削減に貢献する配送業者を選ぶとも間接的な「SDGs」の取り組みなるだろう。

(3)返品

ネットショップの返品率は15~30%と高い水準にある。 Eコマース事業者はこの返品された商品はどうしているだろうか?
廃棄するのだろうか? 返品に関するSDGsの取り組みは、廃棄するのではなく、「返品された製品を低価格で再販売する」が最も良い取り組み例である。
サステナビリティを重要視するユニクロでは、返品された商品は、着用可能なものはアジア・アフリカなど海外での衣料支援に回され、そうでないものは固形燃料(RPF)として再利用(リサイクル)されている。

まとめ

ECビジネスにおいても「SDGs」の機運は高まっていると言える。
「SDGs」は人に、地域に、社会に、世界に対して広く貢献できるビジネスであり、その貢献度を高めることで他社と差別化できたり、ブランド構築にもなる。
「SDGs」が進んでいるヨーロッパでは、SDGsを意識した取り組みを行うEコマース企業が消費者から選ばれる時代になっている。

参考:

 

 

関連する記事

新型コロナ禍 南米で急成長するメルカドリブレとは... 今、南米のECサイトで最も人気のあるEC企業はどこか? それは、Amazonではなく、メルカドリブレというECモールサイトである。 このメルカドリブレは株価的にも注目されており、新型コロナ禍でのロックダウンによる巣ごもり消費の恩恵を受け、5月のEコマースの売り上げは70.5%(前年同月比...
EC化率の低いフードECに未来はあるのか... 経済産業省の「平成30年度 我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備」報告書によると、2018年の日本国内のBtoC-EC市場規模は17兆9,845億円となっており、EC化率も、6.22%と右肩あがりの増加傾向となっている。その中で、食品におけるEC市場(フードEC市場)を見ると、その市...
2020年 国内BtoC-EC市場は初の減少も EC化率は8%と大きく上昇... 7月30日、経済産業省は「令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)」を公表した。 これは2020年の国内BtoC-EC市場、BtoB-EC市場、CtoC-EC市場、越境EC市場の市場規模、さらに2020年のEC市場の特徴などをまとめたものである。 その内容によると、2...
コロナ禍で最も拡大したECカテゴリーは何?... 2020年は新型コロナ感染拡大以降、緊急事態宣言発令や外出自粛などの影響で、実店舗での買い物を控える人が増えた。 そして、この期間が長く続くことで、人々の消費活動が大きく変化した年となった。 それは、ECサイトで商品を購入する人の増加であり、これまで、ECを利用したことのない70歳以上の...
2017年の日本のEC市場、越境EC市場はどのくらい成長した?... 経済産業省は4月25日、「平成29年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備」 (電子商取引に関する市場調査)を発表した。この内容は2017年の日本の電子商取引市場の実態や日米中3か国間の越境電子商取引の市場動向についての調査内容をまとめたものである。 今回はこの内容をベースに201...
ECサイトに消費者が求めるものとは   2018年のEC(BtoC)市場規模は17兆9,845億円だった。その中で物販系部門は9兆2,992億円であり、前年比8.12%と伸長率は高い割合となっている。 物販系部門とは、「衣類・服装雑貨」、「生活家電・AV 機器」、「雑貨、家具、」、「書籍、映像・音楽ソフト」、...

タグ: , , ,

コメントは受け付けていません。