先週に、スマート関税事前徴収機能をリリースしました。詳細はプレスリリースをご覧ください。
本日は、この機能について技術的な解説をしたいと思います。
越境ECをしている事業者にとって、関税をチェックアウト時に商品代金と一緒に払ってもらうか、それとも納品後にお客様が納付書に基づいて払ってもらうかの2つの選択肢があります。
当社は基本特定の国を除いてはほとんどの国が関税後払いですが、関税を後払いで出荷すると1%程度の確率で関税を払わない人がいます。昨年だけでもその額が107万円もあり、何も対策をしないとこの額は売上増加に比例してどんどん増えていってしまいます。そもそも、関税は受取人が払うものなのに、FedExもDHLも受取人払わない一定期間が過ぎると、配送元である当社にその請求書がきてしまいます。
これが越境ECビジネスにおける関税課題です。
現在、amazonや eBayなどの大手プラットフォームを介して越境ECビジネスを行う場合はプラットフォームが関税回収まで対応してくれるで問題はありませんが、独自型サイトで越境ECを行う場合は関税をどのタイミングで徴収するのかを事前に対策しておかないと忘れたころに想定外の請求が来るということです。
ECサイトのチェックアウト時に同時に関税金額を計算して商品代金、送料、関税諸費用を最初に前払いしてもらう方式のことです。事前払いにすることで、以下のようなメリットがあります。

関税支払いイメージ:ZONOS APIで返された関税金額をチェックアウト時に同時に支払いできる
一方で、事前払いにすることで、以下のデメリットもあります。
関税が事前に分かってしまうことは、両極端の特性があると思っています。
いくつか有用な外部データが見つかりました。ZONOSのDDP施策やLive Commerceの関税事前徴収機能の効果検証に使えそうなものを中心にまとめます。
PayPal調査(Avalara引用)
関税・追加費用が不明瞭であることによるカート放棄率について、国別の具体的な数字が出ています。イタリアでは海外販売者からの購入で追加費用が不明瞭だったために27%の消費者がカートを放棄した経験があり、カナダでは42%が同様に放棄した経験があるという調査結果です。 Avalara
→ このケースでは関税額を提示したほうがポジティブになった可能性があることを示唆しています。
Purolator(2025年データ)
2023年、世界のオンラインショッピングのカート放棄率は2013年以来初めて70%に達し(Statista)、2025年の米国では消費者の約40%が送料・税金・手数料などの追加費用を理由に購入を放棄したと回答しているとのことです。 Purolator
→ このケースでは関税額を提示したほうがポジティブになった可能性があることを示唆しています。
MakerSights社の全米消費者調査(2025年)
価格上昇に直面した際の消費者の反応を調査したもので、商品価格が10〜20%上昇した場合、58%が「同様のより安い商品を探す」と回答し、17%が「値引きを待つ」と回答した一方、値上げされた価格のまま購入すると答えたのはわずか14%だったという結果です。 Makersights
→ このケースでは関税額を提示したした結果、購入をためらったことがあることを示唆しています。
Avalara社の越境EC調査(2024年)
「サプライズ」の関税・税金・複雑な規制を経験した消費者の75%が、同じ事業者での再購入を検討し直すと回答しており、また関税の高額な追加費用を経験した消費者の約半数(49%)が荷物の受け取り自体を拒否していることが分かっています。 Avalara
→ このケースでは関税額を提示したした結果、購入をためらったことがあることを示唆しています。
2025年8月時点で、米国消費者の3分の2が関税への懸念から裁量的支出を既に削減しているという調査結果もあり、関税に対する消費者の警戒感自体が高まっている時期であることも背景として押さえておく価値があります。 Forbes
→ このケースでは関税額を提示したした結果、購入をためらったことがあることを示唆しています。
上記のようないくつかの事例もあるため、越境ECビジネスにおいて、関税を事前払いにするか否かによっては大打撃の可能性も否定できません。
そこで、当社が取った対策が、関税を
という3つのグラデーションを用意しました。
例えば、ブラジルは実行関税率が60%~200%にもなるため、当社が過去に商品を送ったときには多くの顧客が想定外の費用に受取拒否を選択していました。その費用は最終的に当社が負担になるため、この教訓からブラジルは事前払いの徹底ということが分かりました。これにより、ブラジルのお客様はトラブルなく、越境ECでお買い物していただけるようになったのです。
フランスは、非常に難癖をつけてきて関税を払わないユーザーが最も多かったです。
WEBサイトにも、注文メールにも、注文の最終確認画面にも同意ボタンを付けて購入する仕組みにしましたが、ここまで行っても関税が事後的に請求されると、「そんな追加費用は払えない」というカスタマーがいかに多いことか。フランスは知らないものは絶対に払わないという国民性なのでしょう。なので、フランスについても事前払いで100%強制徴収する形にしたところ、関税のトラブルが完全に解消されました。
アメリカは、多くのユーザーが越境ECを通じて海外からモノを買うことが結構日常化していることもあり、関税のリテラシーが高いため、事前払いを任意で選べるようにして運用しています。

関税は国別に、強制徴収、任意、後払いの3つのオプションを指定できるようになっている。
関税事前払いは、越境ECにおける「取りっぱぐれ」という課題を解決する手段です。しかし、指摘したように、関税を事前に開示すること自体が売上に与える影響を考えて、どの国に適用するかといったことを決める際には慎重になる必要があります。
データが示す通り、価格の不透明さはカート放棄の大きな要因である一方、価格上昇が可視化された途端に「他の選択肢を探す」消費者が一定数存在することも、また事実です。
つまり、「関税事前払いを導入すべきか」という問いに、今のところ正解はありません。重要なのは、事前払い・任意選択・後払いという3つの選択肢を、国民性や関税率、消費者の越境ECリテラシーに応じて運用で対応するということかと思います。
実行関税率が突出して高いブラジルのような市場では、受取拒否によるロス自体が致命的になるため、事前払いを徹底することでトラブルの芽を摘む方が合理的です。一方、フランスのように「知らないものは払わない」という国民性が強く出る市場では、いくら事後の同意プロセスを重ねても後払いトラブルが解消されないため、これも事前払いの強制徴収が正解でした。そしてアメリカのように越境ECへのリテラシーが高い市場では、あえて選択の自由を残すことが顧客体験の満足度を損なわない選択となります。
ということで、この関税徴収オプションの国別運用結果をを今後もデータに基づいて継続的にチューニングしていく方針です。
タグ: Live Commerce, ZONOS, 関税計算