デジタルツールの普及が急激に進むアフリカでは、フィンテックやスタートアップ、科学技術を用いたイノベーションによって、リープフロッグ*を実現する環境が着々と整ってきています。
世界的にも注目されているケニアの決済システム「M-Pesa」を例に見てみましょう。
M-Pesaは、ケニアで発展したモバイルマネーサービス*で、世界的に成功した事例として広く知られています。2007年にイギリスの通信会社ボーダフォンとその子会社であるケニアの通信企業サファリコム(Safaricom)によって導入され、ケニア全土で広く利用されています。携帯電話を使って送金、支払い、貯蓄、融資を行うことができ、銀行口座を持たない人々にも金融サービスを提供することが可能なサービスです。
M-Pesaのようなイノベーションは、しばしばディスラクティブ・イノベーション(破壊的イノベーション)と呼ばれます。何故ならそれは既存の銀行が必要とされなくなったことを意味するからです。もはやM-Pesaがあれば、銀行の支店もATMも必要なく、携帯さえあればチャージした通話料がそのまま現金のように使えたり、送金できたり、貯金や融資にも利用できるのです。
現在、ケニアの成人の約80%以上が利用していると言われており、日常の支払いからビジネス取引まで幅広い用途に使われています。2024年時点でのケニアの人口は約5,600万人なので、その8割というと約4,000万人以上の人が利用していることになります。ものすごい普及率ですね。
この例のようにアフリカやアジア、インドのような新興市場は、デジタルに精通した若い人たちによって、特にテクノロジーとeコマースにおけるイノベーションの発展が目覚ましいのが特徴です。国際通貨基金(2024年7月)の経済成長率予測によると新興市場国と発展途上国の世界成長率は、先進国をしのぐ勢いです。
先進国では、越境ECといったビジネスがレッドオーシャンになりつつあるのに比べて、M-Pesaのような決済システムがゲームチェンジャーとなり、新興市場におけるビジネスチャンスはかつてないほど高まっています。まだまだブルーオーシャンである市場であるとも言えます。このような市場を開拓していくには、現地での決済の必要性を掘り下げ、取引を成功させるための知識が必要です。海外展開は難しい面もありますが、適切な知識やナビゲートがあれば実現可能です!
ケニアは、新興市場への参入を目指すグローバル企業にとって魅力的な国であり、ケニア政府と中央銀行がデジタル分野の継続的な改善に取り組んでいます。2019年、ケニア政府は、すべての国民、企業、組織がデジタルにアクセスし、デジタル経済に参加し、繁栄する能力を持つ国を目指すといった内容の「デジタル経済の青写真」を発表しました。また、ケニア中央銀行は「国家決済戦略2022-2025」により、金融インクルージョンとケニア国民に利益をもたらすイノベーションを支援する、安全、迅速、効率的かつ協力的な決済システムをどのように促進していくかという概説を発表しました。
このように、政府や銀行も積極的にその決済環境においてデジタル化の未来を開拓し、受け入れ続けており、このダイナミックな市場に足掛かりを築こうとしているグローバル企業にとっては、今は大きなチャンスを秘めているタイミングです。急成長しているeコマース市場は、2027年までに35億米ドル(GMV)になるといった予測がされています。着々と成長の準備が整ってきているケニアでの決済システムへのシームレスな参入のためにぜひd localをご活用ください。
アフリカでは、既存インフラや既得権益などのレガシーが少ないため、いきなり固定電話が普及する前に携帯電話が広がるといったリープフロッグによるイノベーションがあらゆる分野で起きています。一気に先進技術が普及して、まさに蛙のジャンプのように一足飛びに発展していくのは、岩盤規制や既存インフラ、既得権益にがんじがらめになっている先進国にとっては羨ましい現象ですね!
*リープフロッグとは、「かえる跳び」の意味。過去の習慣にとらわれずに、さまざまな知恵や技術の組み合わせによって生まれ得るイノベーションを有効活用しながら、必要なルールの見直しなどを加えることで、過去に他国が経験してきた発展の順序を必ずしもなぞらずに一足跳びに発展すること。
*モバイルマネーサービスとはインターネットのアクセスではなく携帯電話サービスを通じてのみ機能するため、データ通信量が高すぎたり、一般の人々がアクセスしにくい地域の人々にとって使いやすい。