経済産業省は4月24日、「平成28年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備」 (電子商取引に関する市場調査)の結果を発表した。
内容は2016年の日本の電子商取引市場の実態や日米中3か国間の越境電子商取引の市場動向についての調査結果である。
今回はこの結果をベースに国内のEC市場や越境EC市場規模が、2015年からどのように推移したのかなどをまとめてみた。
2016年の国内のBtoC市場規模は15兆1,358億円、前年比9.9%増と拡大した。
国内のBtoB-EC市場規模、各分野の構成比率を見ると、物販系分野で8兆43億円、サービス系分野で5兆3,532億円、デジタル系分野で1兆7,782億円となっている。どの分野も前年比増となっている。
EC化率(すべての商取引のうち、電子商取引が占める割合)についても年々増加、2016年においては5.43%と前年比0.68ポイント増と増加傾向である。
世界のBtoC EC市場規模もどのエリアにおいても拡大傾向にある。2016年の世界のEC市場は1億9,200万USドル、前年比23.7%の伸びとなっている。
これはスマートフォンの普及、インターネット人口の増加、物流システムの充実、決済機能の多様化対応、オンラインショッピングのインフラ整備など様々な要因があげられる。
2020年には4億USドルまで成長が見込まれている。世界の国別EC市場を見ると、市場規模でトップは中国で9,276億USドル、2位はアメリカ3,983.5億USドル、3位はイギリス1,060.8億USドル、日本は第4位で774.1億USドルとなっている。
その中でも成長著しいのはやはり、中国で前年比は40%と圧倒的である。世界のEC市場では中国、アメリカが大きな存在感を示している。
次に日本、アメリカ、中国各国間の2016年の越境EC市場動向についても見ていく。 2016年の世界の越境EC市場は4,000億USドルとなっている。前年比成長率は31.6%の伸びで、2020年までは20~30%の成長率が見込まれている。
日本、アメリカ、中国各国間の2016年の消費動向の結果は、日本の消費者が、アメリカ、中国から越境ECで購入した金額は2,396億円で前年比は7.5%増。
アメリカの消費者が日本、中国から越境ECで購入した金額は1兆415億円で前年比15.1%増となっている。
そして、中国の消費者が日本、アメリカから越境ECでの購入額は2兆1,737億円で32.6%と金額、伸び率と越境ECを牽引する存在となっている。 越境ECは中国を中心に大きく拡大していることがわかる。
2016年から2020年までの日本、中国、アメリカ各国の越境EC市場規模のポテンシャルを推計を見ると、日本は1.18倍、アメリカは1.72倍、中国は1.84倍規模になると予測されている。
2016年の日本、中国、アメリカの3カ国の越境ECによる総計消費額、3兆4,548億円は2020年には1.75倍の6兆748億円にまで拡大するとされている。
下の図は日本、アメリカ、中国各国間での越境ECで購入される金額の2020までの予測を推計し、越境ECの市場ポテンシャル推計としたものだ。
中国とアメリカの越境ユーザーはどのような理由で、日本の商品を買っているのだろう。その理由を知ることも重要だ。
中国とアメリカユーザーは日本商品に対してどのような感性をもって、消費されるのかがまとめられている。
まず、中国の場合は「商品の品質が保障されている」がトップである。日本商品は安心、安全という評価が浸透しており、日本製である、日本ブランドであるという理由が消費行動につながっている。日本製品は「偽物もほとんどなく正規品を手に入れられる」ということが最大の理由だ。
また、中国ユーザーの場合、日本滞在時に日本商品を購入し、帰国しリピート購入し、さらに、その商品が口コミで売れるようになるという流れも見逃せない。
また、報告書ではアメリカの越境ECユーザーの購入理由についてもまとめられている。 アメリカのユーザーで最も多いのは「比較的安い価格で商品を買えるため」が49%で半数にのぼっている。
また、「好きなブランドや商品が国内で購入できないため」が43%となっており、それらを総合すると、アメリカユーザーは日本製品の独自性ある商品でること、さらに価格が安いことが消費行動をにつながっていると言える。
国内EC市場は2016年も2015年に続き、15兆1,358億円(前年比9.9%)と拡大し、日本の越境EC(対中国、アメリカ)市場も1兆6,522億円(前年比23.6%)の増加となり、順調な伸びを示した。
そして、2020年東京オリンピック開催まで訪日外国旅行者は拡大し、国内EC、越境ECはともに成長するだろう。
また、報告書によれば、日本企業の越境ECについては、海外ECと比較して越境ECビジネスに取り組む企業の割合は、まだまだ低いと記されている。
日本製品は信用があり、人気も高い。さらに越境ECビジネスを行う環境条件も整ってきた。ここを商機として、自社の商品、サービスを越境EC市場に投入し、ビジネスを成長、拡大してみてはいかがだろう。
出典:経済産業省「平成28年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備」より