メタバースをリードするのは? Meta vs Microsoft

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2021年は「メタバース」が注目された年となった。
メタバースとは一言で言えば、「仮想空間」、「もう一つの次元」である。
新型コロナの感染症拡大で、対面を控えるようになったことから、個人や企業の活動の場が仮想空間へとその場を移しつつある。
特に、世界のトップ10に入るIT企業、Fecebook社が、社名を「Meta」に変更してしまうくらい大きく方向転換したことから、Fecebook経営陣がこの「メタバース」をどれほど重要視しているかがわかるだろう。
今回はこの「メタバース」について、メタバース7つの定義、メタバースの市場規模、Meta(旧FaceBook)と Microsoft(マイクロソフト社)のメタバース事業などを整理した。

メタバース7つの定義

「メタバース(metaverse)」とは、SF作家のニール・スティーヴンスンが1992年に発表した小説『スノウ・クラッシュ』に登場する、架空の仮想空間サービスに付けられた名前である。
metaverseとは「meta(超越した、高次の)」と「universe(宇宙、巨大な空間)」の造語である。
メタバースの意味は、インターネット上に構築された「仮想空間」を指し、自分の分身としてのアバターを介して、その仮想空間に入り、他の利用者とコミュニケーションを取ることができるというのが基本フレームである。

メタバースはゲームはもちろん、ビジネスにおけるバーチャルオフィス、様々なVRライブ・イベント、仮想通貨を使った経済活動など、現実世界と同じようにコミュニケーションできる「もう一つの現実」として、人々が生活を送るところまで想定されている。

メタバースについて詳しいアメリカのベンチャー投資家のマシュー・ボールは、2020年にメタバースの7つ必須条件として、以下の内容を示している。

1.永続性がある:終わらない、永遠に持続する。リセットやポーズ、エンドは存在しない。

2.ライブで同時多発:同時性及びライブ性を持つ。事前にスケジュールされたイベント等はあるものの、メタバースの世界では、リアルな世界と同様に誰でもリアルタイムにその世界で起こることをライブで体験できる。

3.ユーザーの上限なし:同時接続ユーザー数に制限がない。誰もがメタバースの一部となり、特定のイベントや場所、活動に一緒に、同時に参加することができる。

4.完全に機能する経済性を持つ:個人や企業が他者に認められる「価値」を生み出し、「仕事」に対して報酬を得ることができる。

5.実社会との垣根なし:デジタルとフィジカルの両方をまたがる世界。もしくは、プライベートとパブリック、オープンとクローズのプラットフォーム両方にまたがる体験であること。

6.相互運用性:データやデジタルアイテム、アセット、コンテンツに相互運用性があること(特定のゲーム内で購入したスキンを他のゲームでも活用できるといったこと)。

7.あふれるコンテンツと体験:個人、グループ、企業などによって提供された「コンテンツ」や「体験」によって構成される。

現在、メタバースはNFT(Non-fungible token)、ブロックチェーンと掛け合わせることで、従来より高度化した経済活動を行える可能性が出てきている。
このメタバース上の経済活動は、まだ不完全な部分があるが、いずれ法的整備がなされれば、近い将来、人の所有や個性の発揮に関する欲求がメタバース上で完結することが可能となるだろう。

メタバースの市場規模

メタバースの市場規模は、Bloombergの推計値によると、下図にあるように2020年の市場規模は4,787億ドル(約55兆円)であるが、2024年には7833億ドル(約90兆円)にまで拡大する(年平均成長率13.1%)ことが予想されている。

メタバースの市場規模

このメタバース市場の内訳には、「AR&VRハードウェア」、「ゲームソフトウェア、サービス、広告」、「ライブ・エンターテイメント」、「ソーシャルメディア広告」などが含まれている。

今後はメタバースはゲームが中心となって伸びていき、その市場規模は非常に大きく、将来的にも成長が期待されている分野である。
そして、2024年に90兆円規模に拡大するメタバース市場はゲームばかりではなく、ビジネス、音楽、観光、イベント、医療、教育、スポーツ分野など、その利用価値は大きく変わっていくことになるだろう。

今、なぜメタバースなのか

新しい言葉として「メタバース」はトレンドとなっているが、以前から「セカンドライフ」など、メタバース的サービス(仮想空間でのサービス)はあった。
「セカンドライフ」は仮想空間内での交流を目的としたサービスで、物品やサービスの売買において、ゲーム内通貨が使用できることでユーザーを集めた。
だが、サーバー環境が追いつかず、ユーザー離れが起き、ブームは去った。
そして、時代はネットインフラが整備され、多数のユーザーの同時接続を可能にした。(2007年は50人程度が接続可能だったが2021年には数万人規模まで拡大した)
さらに、大きな違いとしてあるのは、VRのヘッドセットの高機能化(没入感の向上)とブロックチェーン技術を利用したNFTによる経済活動、つまり、アバターや土地などアイテムなどの売買が可能となったところである。

さらに、2021年10月29日Facebookのマーク・ザッカーバーグCEOが「Connect 2021」で、社名を「Meta」に変更したことが大きく影響している。
マーク・ザッカーバーグCEOは「今後、数年のうちに当社はソーシャルメディアを主とする企業ではなく、メタバースの企業と見なされるだろう」と宣言し、メタバース事業に大きく乗り出した。

次にGAFAMの中でMeta(旧Facebook)の動向と以前からメタバースに注力していたマイクロソフト社の取り組みについて見ていこう。

Metaとマイクロソフト社のメタバースの取り組み

メタバースは今、百花繚乱の時代から群雄割拠の時代になりつつある。
どのプラットフォームがメタバース利用者を獲得するかで勝者が決まることだろう。
1社が寡占することはないだろうが、一握りの企業がこのインフラを制するのは確定的である。なぜなら、メタバースには大きな資金力と設備が必要だからだ。
ここでは、世界のIT企業大手GAFAMの中からMeta(旧Facebook)とマイクロソフト社の動向を整理した。

(1)Meta(旧Facebook)のメタバースの取り組み

メタバースは大きくハード面とソフト面の両面の動向を視野に入れ、見ていく必要がある。
Metaの場合は、2021年10月販売開始されたVRヘッドセット「Meta Quest2」と2021年8月にリリースされた「Horizon Workrooms」である。

様々なゲームを楽しめる「Meta Quest2」の特徴は、PCやスマートフォンとケーブルで繋ぐことなくヘッドセット単独(オールインワン型)で動作する。
また、ヘッドセットをかぶったまま前後左右自由に動くことができたり、VRの中でインタラクションがとれる。
画像も高画質でVR酔いも軽減され、本当に自分がバーチャル空間の中にいるかのような強い没入感が体験できる。
「Meta Quest2」は現在のハード機器ではナンバーワンシェアとなっており、北米では出荷台数が800万台を超えた。

また、「Horizon Workrooms」は「Meta Quest2」を利用することで無償でダウンロードでき、仮想空間内で自身がアバターとしてミーティングができるサービスである。
アバターの口は動き、話す、振り向く、聞くなどコミュニケーションができる。
さらに自身のPCやキーボードを持ち込んだり、ホワイトボードに書いたり、ブレストできたりとその機能は充実している。
新型コロナ感染症でのリモートワークの普及と同時に、在宅勤務においてより柔軟な働き方を提供し、オフィスで働くことの意味を見直すことにも繋がるだろう。

workroom

(2)マイクロソフトのメタバースの取り組み

マイクロソフト社はかなり早い時期からメタバース分野に進出し、サービスをリリースしながら、着実にサービスを向上させてきた。
2014年、マイクロソフト社はゲームソフト会社のマインクラフトを買収し、このマインクラフトを基盤としたメタバースを開発を行っている。
最近では、今年1月マイクロソフト社は690億ドル(約8兆円)規模のアクティビジョン・ブリザード(Activision Blizzard)買収し、メタバースをさらに加速させようとしている。

マイクロソフトのメタバースの代表的なものは、MR機器としての「HoloLens」とバーチャル会議の「Mesh for Teams」である。

「HoloLens」は現在「HoloLens 2」となっており、これを装着すると現実空間に仮想空間(CGなどのデジタル情報)が重なり合わされるMR(Mixed Reality)、つまりリアルとバーチャルが融合される。
このMRに表示されるCGはトラッキングした手や目の動き、あるいは音声などで拡大縮小や移動させたりもできる。現在は一般向けには販売はなく、企業向けのみの販売となっている。

ホロレンズ2

2021年11月、マイクロソフトは「Mesh for Microsoft Teams」を発表した。
提供開始は2022年だが、現在の「Teams」を拡張版で3Dアバターを通して、仮想空間で会議、交流ができるサービスである。
現在のTeamsユーザー、2億5,000万人にリモートワークやハイブリッドワークの新しいアプローチを示し「メタバースの入り口」として機能する未来を目指すとしている。
マイクロソフトの創始者ビル・ゲイツ氏はブログのなかで、「今後2,3年の内にオンライン会議のほとんどがメタバース会議に移行する」と語っている。

teams

まとめ

「メタバースは第2のインターネットとなるか?」であるが、そもそもインターネットインフラがなくては、メタバースも存在しない。
メタバースの普及には、ごく普通の人々が利用して、これは便利だと思えるプラットフォームが出現したときだろう。
それはゲームなどではなく、人と人のとコミュニケーションであったり、教育であったり、医療であったり、エンターテイメントであったり、ビジネスであったり、買い物体験など、人々の生活に密着したものだろう。
一般の人たちがメタバースによってもたらされるメリットを享受し、社会における問題解決がなされたとき、社会は大きく変革しメタバースは無くてはならないものとなるのである。

参考:

メタバース(仮想空間)を活用したビジネスを展開する際の指針と今後の展望

メタバースは世界の大企業も注目!ビジネス・エンタメの常識を変えうる技術の詳細とは?

「Horizon Workrooms」を発表:リモートでの共同作業を再構築

 

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