2022年6月1日から、特定商取引法が改正され、インターネット通販の新しい表示ルールが導入されている。
EC事業者は、改定内容はECサイトなどの申し込み確定の直前画面に詳細な注文内容を表示する義務が追加される。
また、契約申し込みの手順などについて消費者を誤認させる表示が禁止されるなどがある。
今回は、特定商取引法改正によりEC事業者が遵守すべきポイントをまとめた。
特定商取引法の改正となった背景には、下の図にもあるように、定期購入やサブスクリプション契約における消費者トラブルが増えていることがある。
消費生活相談件数は2020年には59,560件となり、2015年(4,141件)の約14倍になっている。
定期購入における「初回無料」「お試し」などと表示しておきながら、実際にこれらは定期購入の加入が前提だったり、「いつでも解約可能」と表示しながら、解約には細かな規定が小さい文字で書かれていており、消費者にとっては詐欺としか言いようがない、悪質なものが増加したことだ。
これら問題を解決すべく(消費者を守るため)、特定商取引法の改正では通信販売の申込み段階において 、「表示の義務付け」「誤認させるような表示の禁止」について具体的に示している。
特定商取引法改定では、ECサイトの最終確認画面において、取引における基本的な事項について分かりやすく表示することが義務付けられ、消費者を誤認させるような表示も禁止される。
最終確認画面とは、ECサイトにおいて、消費者がその画面内に設けられている申込みボタン等をクリックすることにより、契約の申込みが完了することとなる「契約申し込みの直前の画面」のことである。
特定商取引法改定では、法第12条の6第一項の表示義務がその主たる内容だ。
ECサイトにおける「最終確認画面」の表記には以下の6項目についてわかりやすく表示することが義務づけられた。
一つずつ解説する。
分量については、図01にあるように商品の数量・購入回数・購入期間を表示する必要がある。
(図01)
また、定期購入契約の場合は、図02にあるように「各回に届く分量」と「総分量」を表示する必要がある。
(図02)
販売価格・対価については、図03にあるように、複数の商品をまとめて購入した場合、個々の商品の販売価格(送料を含む)だけでなく、支払総額も表示する必要がある。
(図03)
定期購入契約の場合は図02にあるように「各回の代金」と「代金の総額」を表示する必要がある。 期限を設けていない定期購入などの場合、一定期間を区切った支払額を目安として表示することが望ましいとされている。
(図02)
支払の時期・方法については図02にあるように、代金の支払い時期や、支払い方法を表示する必要がある。 定期購入契約の場合は初回の支払い時期だけでなく、「各回の代金の支払い時期」を表示する必要がある。
(図02)
お届け先、発送方法、商品引渡時期、キャンセル・返品については、図01にあるようにわかりやすい表示が必要である。
(図01)
また、定期購入の場合には、図02にあるように、初回に商品を引き渡す時期だけでなく、「各回の引渡し時期」も記載する必要がある。
(図02)
申込みの撤回、解除に関することについては、図03にあるよに商品の返品や解約の連絡方法・連絡先、返品や解約の条件等について、顧客が見つけやすい位置に記載する必要がある。
(図03)
申し込み期間(期限のある場合)については、図04にあるように季節商品のほか、販売期間を決めて期間限定販売を行う場合は、その申込み期限を表示する必要がある。
(図04)
また、キャンセル及び返品について、ECサイトの画面のスペースに限りがある場合などには、消費者がわかりにくくなるような事情がある場合、図03にあるように、 一部の情報については記載箇所(またはページ)のリンクを最終確認画面に貼り、消費者が別ウィンドウで参照できるようにするといった対応も可能である。
(図03)
特定商取引法改正により、書面だけではなく、電磁的記録によりクーリング・オフを行うことも可能となった。
メールなど電磁的記録による通知についても、書面と同様、発した時にその効力を生ずることとなる。
そのため、EC事業者は「書面又は電磁的記録により」クーリング・オフができる旨を記載しなければならない。
また、トラブル回避のためには、消費者に対し、クーリング・オフを受け付けた旨について 連絡することが望ましいとしている。
ECサイトに導入された規制(改正特商法第12条6、改正特商法 第13条2)に違反した場合、行政処分(行政から事業者に対する業務改善指示や業務停止命令)や罰則(懲役や罰金)の対象となる。
例えば、ECサイトの最終確認画面に必要な項目(改正特商法第12条6第1項で定められた内容)を表示しなかったり、事実と異なる表示をした場合の罰則は、法人は1億円以下の罰金となるので注意が必要である。
まとめ
特定商取引法の改正により、通信販売事業者は、取引における基本的な事項について、最終確認画面で明確に表示することが必須である。
EC事業者でASPカートやEC構築パッケージを利用している場合は、利用されているベンダー企業が対応されていると考えられるが、フルスクラッチで構築している場合は自社での対応が必要となるので、公表されているガイドラインに沿って改変しなければならない。
また、消費者の皆さんは、「注文を確定」をクリックする前に、商品の内容や取引条件・解約条件などを慎重に確認することが求められる。
参考: