アメリカ向け越境EC戦略の転換点(2025年版)

2025年8月29日、トランプ関税発動によりアメリカ向け越境EC戦略は大きく変わります。本記事では、Live Commerceを中心にプラットフォーム選びと関税対策について解説します。

従来の論点から新たな課題へ

アメリカ向け越境ECというと、従来は「どんな商材で挑むか?」「集客はどうするか?」の2点が主な論点でした。ところが、2025年8月29日を境に、新たに「関税の徴収をどうするか」という3つ目の課題が加わります。

従来、800ドル以下の貨物には発生しなかった輸入関税が、今後は申告価格に関わらず課税されます。最低でも15%、アパレルなどは30%近い関税を輸入者が支払うことになり、越境ECにおける大きな障壁となります。

アメリカ向け越境ECの成功の鍵

結論から言えば、成功のためには「集客を担うオンラインマーケティングの設計」が何よりも重要です。関税対策はあくまで受注後の課題。まずは集客の導線を構築し、その上で物流や関税対策を考える必要があります。

Live Commerceでアメリカ市場を攻略する

アメリカ向け越境ECを行う場合、整えるべき要素は次の5点です。

  1. プラットフォーム
  2. 販促
  3. 決済
  4. 物流
  5. 関税

すでに販促・決済・物流については多くの情報があるため、本記事では①プラットフォームと⑤関税に絞って掘り下げます。この記事ではその中でもプラットフォームについて解説します。

ECプラットフォームがなぜ重要か

越境ECを始める際、プラットフォーム選びは極めて重要です。ここを間違えると、事業の成功が大きく狂います。

実際、事業者の95%はeBayから始める傾向があります。理由はシンプルで、集客コストも不要で商材さえあればすぐに始められる敷居の低さです。

一方、ブランドを持つ企業は自社サイトで勝負します。私は自社越境ECの支援を専門としており、集客からオペレーションまで含めて月商億単位の実績がありますので、ここではeBayの話は割愛します。

集客と成長ステップ

Google広告とMeta広告をプロが運用すれば、月商2,000万までは比較的スムーズに到達可能です。しかし月商2,000万を超えると、物流体制や関税の事前徴収が整っていないと、次の月商5,000万には進めません。

月商数百万〜500万までは努力やセンスに依存しなくても到達できますが、月商2,000万を超えると「確実に選ばれるサイト」でなければなりません。つまり、お客様の期待通りの動作・価格・購入体験が満たされているサイトである必要があります。

「お客様の期待通りの動作」を実現するには?

ShopifyやLive Commerceでサイトを立ち上げる際に欠かせないのがカスタマイズです。カスタマイズできない体制では競争に巻き込まれ、広告コストが増えるだけで、数百万規模で頭打ちになります。逆を言えば、カスタマイズするから、「お客様に選ばれる」わけです。

「お客様の期待通りの動作」とは、

  • どんなお客様がいて
  • どんな不満を感じていて
  • どんな想定外の体験を期待しているのか

こうした情報をアクセス解析やツールを駆使して把握し、即座に改善していくことです。

Shopifyの誤解とデータ活用

ブログやYouTubeの動画を拝見すると、「Shopifyだから大丈夫」「アプリが豊富だから安心」という考えを持っている人が多いようですが、これはワンオペのビジネスモデルが前提になって、一人社長、いわゆる一人株式会社で事業をスケールさせることを考えていない人たちの思想です。

その思想根拠として、Shopleadsというカナダ発のECプラットフォームの分析ができるツールを参照すると、プラットフォーム別に、従業員の雇用数がわかります。

EC規模が大きくサイトほどカスタムカートで、小さいサイトはWooCommerceやShopifyのユーザーが多いというのが結果として読み取れます。

 

では、広告を適切に運用すればカートインは増えますが、成約率は平均5%以下です。データを分析すると次の課題が見えてきます。

  • 1日に何人がカートに入れたか
  • カート内の合計金額はいくらか
  • ユーザーはゲストか会員か
  • 会員なら最終ログイン日はいつか

これらをもとに「なぜ会員なのにチェックアウトしないのか」を明らかにする必要があります。

プラットフォーム選びの本質

「お客様の期待通りの動作」を実現できなければ、成約率は低いままです。その期待に応えるためには、開発者がフルカスタムできるプラットフォームであることが重要です。

EC-CUBEがオープンソースでフルカスタマイズ可能なのと同じく、最初から月商2,000万〜億単位を狙う事業者は、カスタマイズ性を基準にプラットフォームを選ぶべきです。

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