米ソーシャルコマースサービスの「Fab」に、日本の伊藤忠商事が500万ドルを出資したというニュースが飛び込みました。「Fab」といえば、ローンチ前に10万人のメール会員を集めることを目指し、実際にはティザーページ公開後わずか30日で5万人、3ヶ月後には16万5000人ものメール会員を集めたということでも注目を集めた企業です。
Fabは、ローンチ前に多くのメール会員を集めるために、ユーザーが他のユーザーを招待することでインセンティブがもらえる仕組みをもったランディングページを準備。ユーザーが自分好みのデザイン、デザイナーの商品、インスピレーションを簡単に共有できる機能も提供しました。また、デザインをより重要視するユーザーに対しては、サムネイル画像を利用したfecebook広告が功を奏したと伝えられています。
参照:http://www.slideshare.net/fabulis/fab-2011-timeline
では、実際にこのように集めたメール会員に向けて、どういったメールが配信されているかを見ていきましょう。
Fabからは、取り扱う予定の新商品について紹介されるのはもちろんのこと、登録時に興味があると示したカテゴリのアイテム写真が掲載されたメールが毎日届きます。
また、メールを開封せず、リンクをクリックしない日が続くと、メールマガジンの購読継続について問うメールを送ってくるという点なども怠りありません。
デザイナーからのビデオメッセージ、ときには同社のCEOであるJason Goldberg氏の名前でアンケートメールやメッセージが届くこともあります。Fabの本部があるニューヨークのウェストビレッジをハリケーンが襲った際、物流倉庫の状況などをいち早く説明するメッセージなども同氏からメールにより発信されていました。また配送の遅延などがあったときにも直筆でお詫びのメッセージを送ることもあるといいます。
Jason Goldberg氏はあるインタビューで、「自分たちはこのエモーショナル・コマース(感情に訴えかけるコマース)のマーケットリーダーになろうとしているとした上で、「他のどこでも買えないユニークなプロダクト、万人受けするものではなく、カラフルで、テイストがいいブランド、そして買い物の楽しさを常に提供し続けること」がその戦略のコアだと語っています。
敢えて、ソーシャルメディア上での情報の共有を促すマーケティングではなく、ターゲットとなるユーザーの個々の受信箱に直接メールを届ける手法を採用したのも、こうしたECのスタイルの差別化を狙ったからではないでしょうか。
自分の嗜好に合わせてカスタマイズされたアイテム情報が毎日届き、時には自分の想いがサービスに反映される仕組みが、ユーザーに共感と信頼を抱かせるのは容易に想像がつきます。そして、実はそうしたハッピーなユーザー体験がソーシャルメディア上での共有を促進することが、今後のソーシャルコマースの一方向を指し示している点に注意を払いたいところです。
タグ: Fab, Jason Goldberg, メールマガジン, 伊藤忠商事