アメリカ向け越境ECはデミニミス終了でどう変わる?アメリカ向け越境EC関税100%時代の攻略法

2025年8月29日、トランプ関税によりデミニミス措置が終了します。これに伴い、日本から米国向けに輸出される全ての貨物に関税が発生します。越境EC事業者は「関税をどこで払うのか」という新しい課題に直面することになります。本記事では、その影響と具体的な対応策について詳しく解説します。

デミニミス措置とは何だったのか?

米国ではこれまで、800ドル以下の貨物には関税がかからない特例(de minimis)が存在しました。この規定によって、日本からの小口輸出や越境ECは大きな恩恵を受けてきました。しかし、この制度が2025年8月29日をもって完全に終了します。

デミニミス終了後に起こること

終了後は、貨物の申告価格に関わらず必ず関税が課されます。最低15%、アパレルでは30%近くになるケースも。結果的に、消費者の購入コストは上がり、事業者は「関税の扱い方」をめぐってビジネスモデルを再設計せざるを得なくなります。

越境ECでアメリカに商品を送るとき、「どの配送方法を選ぶか」によって、関税の計算ルールが大きく変わります。

今回の表は、「郵便(EMSなど)」と「民間の国際宅配便(FedExやDHL、UPSなど)」では、関税がどう課されるのかを分かりやすく整理しました。。

  • 郵便(USPS/EMS)で送る場合
    → デミニミス終了後も、当面の間は「ad valorem duty(申告価格に応じた割合課税)」か「定額課税(1個につき$80〜$200)」のどちらかが適用されます。これは郵便で扱う荷物の数が多すぎるため、処理を簡単にする暫定的な仕組みです。
    注意:2025年8月28日時点では、日本郵便のEMSは米国向け貨物の取り扱いを中止しています。

  • FedEx / DHL / UPSなどのエクスプレス便で送る場合
    → 郵便のような特例はなく、すぐに「HTSに書かれた基本税率(例:4%などの ad valorem duty)」が適用されます。さらに、トランプ関税などの追加関税が上乗せされることになります。

つまり、郵便と民間キャリアでは、同じ商品を送っても関税のルールが違うということです。
初心者の方が一番覚えておきたいのは、

  • 郵便 → 暫定的に簡易課税(ad valorem または定額)

  • FedEx/DHL/UPS → 正式な関税(HTS基本税率+追加関税)

というシンプルな違いです。

輸送手段 課税方式(措置内容) 根拠・出典
USPS / 国際郵便(EMS等)
  • ad valorem duty(申告価格に対する割合課税)
  • または 定額課税($80〜$200)
  • ※ 6ヶ月間の暫定措置
AP通信
USCBPガイダンス
FedEx / DHL / UPS
(民間エクスプレス便)
  • ad valorem duty(HTS基本税率に基づく関税)
  • + 追加関税(トランプ関税等)
  • ※ de minimis終了後は即適用
RedStag
IF Global

「関税をどこで払うのか」が最大の論点に

従来は関税ゼロが前提だったため、DDU(Delivered Duty Unpaid、関税後払い)で問題ありませんでした。しかし今後はDDUでは顧客体験が悪化し、受け取り拒否リスクも高まります。そこでDDP(Delivered Duty Paid、関税事前払い)モデルへの移行が必須になります。

越境EC事業者が取るべき3つの対応策

1. プラットフォーム・カートの見直し

Live Commerceでは、関税事前徴収が可能です。全てのプランで無償でこの機能を提供しています。
関税事前徴収機能(ZONOSプラグイン)を有効化し、米国向けのみ事前徴収をする場合、以下の業務フローになります。

当社(デジタルスタジオ)はお客様の関税を支払いします。
EC事業者はその関税を当社からの請求に基づき支払いします。

  • お客様: 越境ECサイトで、商品代金+関税+送料 をお支払い
  • EC事業者: ↑の売上が全て入金される
  • 当社: 関税の請求書をEC事業者に発行

2. 物流パートナーの選定

FedExやDHLはDDP対応可能ですが、EMSは関税事前徴収のアカウントがまだ出ていません。
物流契約の根本的な見直しが求められます。

3. 価格戦略の再設計

関税を上乗せしても競争力のある商材かどうかを精査。安さ頼りの商品は厳しくなり、高付加価値・ブランド力のある商材へのシフトが必要です。

集客とマーケティングの再定義

関税込み価格をどう伝えるかが集客のカギになります。広告コピーに「No extra customs fees」や「関税込み価格」を明記し、顧客の安心感を高めることが重要です。

事業規模別の影響

  • 小規模事業者(月商500万未満):DDUモデルではリスクが致命的。物流と決済の簡略化が必要。
  • 中規模事業者(月商2000万規模):関税事前徴収の導入が必須。導入しないと成長が止まる。
  • 大規模事業者(月商億単位):関税事前徴収モデルを構築。現地法人や物流拠点設立も検討すべき。

顧客体験の差が命運を分ける

到着時に高額な関税を請求されれば顧客満足度は急落。一方でチェックアウト時に「関税込み」と明示されていれば、安心感からリピート率が向上します。この差が事業の存続を左右するのです。

まとめ:デミニミス終了は越境ECの第二の参入障壁

デミニミス終了は、越境EC事業者にとって「第二の参入障壁」となります。これまでのように商材と集客だけでは不十分であり、今後は「関税設計」こそが成功の鍵になります。

成功に必要なのは以下の3点です。

  1. 関税事前徴収(DDP)の導入
  2. 物流契約の見直し
  3. 高付加価値商材へのシフト

この3つを整えた上で集客設計を固めること。これが、アメリカ市場で越境ECを成功させる最低条件です。

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