今年も続いている新型コロナ感染症のパンデミックは、地球上のほぼすべての人々、組織、国を新しい状況への適応へと駆り立てた。
現時点で世界の経済の回復にはばらつきはあるが、世界のどの国を見ても、オンラインショッピング、Eコマースの利用拡大は顕著な事実として認められる。
報告によると2020年の世界の小売りEコマースの売上は28%近く上昇したとしている。
特に言えるのは、これまでEコマースが進んでいなかった、いくつかの国でオンライン購入が急速に加速したことである。
今回は、アメリカのデジタルマーケティングリサーチ専門会社「eMarketer」の7月14日の記事と6月28日、グローバルなオンライン決済サービスの「ペイパル(PayPal)」が発表した「ペイパル海外通販レポート」より、現在、世界のEC市場で最も成長著しい「インド」、「ブラジル」、「ロシア」、「メキシコ」を取り上げ、そのEコマースの現況についてまとめた。
中国はオンライン販売の価値が実店舗の価値を超える世界初の国になると予想されている。そして、それは、そう遠くない未来である。
下のグラフは「eMarketer」が公表した2021年の世界のEコマース売上シェアをトップ10を示したものだ。
中国は全世界の小売eコマース売上の52.1%を占め、アメリカの19.0%を大きく上回っている。
中国は2021年も、最大の単一EC市場であり続け、2.78兆ドル(約306兆円)をオンラインで売り上げるとも予想されている。
世界のEコマースで最も成長すると予想されているのが、新型コロナ、パンデミックの影響が続くインドである。
インドは未だ、Eコマース発達途上国であるが、コロナ感染流行をきっかけにデジタルシフト化が進み、2021年から2025年の間に急速な成長が見込まれている。
下の図は「eMarketer」は7月に公表した、「2021年Eコマースで成長する国トップ10」である。
インドが27%の成長が予測されトップ。次に続くのが、ブラジル(26.8%)、ロシア(26.1%)、アルジェリア(26%)、メキシコ(21.1%)などとなっている。
これらの国に共通するのは、これまで、ネットショッピングがあまり利用されていなかった点である。
そして、今回のコロナ感染パンデミックにより多くの小売業者がオンラインストアを立ち上げ、拡大したことにより、これらの国々は、今後、EC市場の成長が大きくなると予測されている。
6月25日に公表された「ペイパル(PayPal)」の海外通販レポートは、世界の主要な13EC市場(オーストラリア、ブラジル、中国、オーストラリア、ドイツ、香港、インド、日本、メキシコ、ロシア、シンガポール、イギリス、アメリカ)における成人を対象に海外販売に関する調査結果をまとめたものである。
ここでは、そのレポートから、「eMarketer」が2021年以降、EC市場が大きく成長すると予測した「インド」、「ブラジル」、「ロシア」、「メキシコ」をピックアップし、Eコマースの現況などを見ていこう。
新型コロナ感染パンデミックの影響が続いているにもかかわらず、インドは2021年、デジタル売上高は27.0%飛躍すると予想している。
なぜなら、インドではまだ、ネットショップが十分活用されていないからである。
インターネット普及率なども他国と比較しても低い現状であり、これらがパンデミックにより、オンラインショッピングの利用が一気に増加した。
今後ネット環境の整備、普及とともに大きく変貌することは間違いないだろう。
ペイパルレポートでは、インドのオンラインショッピング利用者の4分の3以上は、前年より 2021年にオンラインショッピングの利用をさらに増やすと予定しており、これは調査対象となったすべての市場の中でも最高水準と記している。
ラテンアメリカ最大の経済大国であるブラジルは、新型コロナ感染パンデミックによる被害が最も深刻だった。
経済的課題に追われGDPが4.1%下降し、通貨の不安定によるコストの上昇や深刻な失業に直面している。
しかし唯一、Eコマース産業だけが急速に台頭し、闇に包まれたブラジル経済の光となった。
スマートフォンが行き渡っているブラジルでは、オンラインショッピングの利用者はオンライン決済の78%がスマートフォンで行われた。
また、ペイパルレポートによると、越境EC利用率が高いの特徴で、ペイパルの認知度は74%もあり、クレジットカードより「信頼できるブランド」と記している。
ロシア・インターネット取引業協会(AKIT)の発表(2021年2月19日)によると、2020年のロシアのEC市場(BtoC)は前年比58.5%増の3兆2,210億ルーブル(約4兆5,094億円、1ルーブル=約1.4円)を記録した。
また、ペイパルレポートによると、「オンラインショッピング利用者の42%が、新型コロナウイルス流行以前より、オンラインでの購入が増えた」と記している。
ロシアの特徴は、ソーシャルメディア(SNS)熱である。ロシアの国民は、1日平均2時間以上をSNSサイトで過ごしており、これは欧州最長である。
オンラインショッピングの新商品をSNSで見つけて購入するSNSコマースも拡大している。
また、ロシアは広い国土ゆえの物流・インフラの整備が課題とされていたが、近年は整備されつつあり、Eコマースを活用して、地方の人が都市部の人と同じものを手に入れるのが比較的容易になったことなど、今後、ロシアのEC市場拡大は大きくなると予測されている。
メキシコはラテンアメリカで2番目の規模を誇るEC市場であり、パンデミックによる大きな打撃を受けたものの、企業による新規オンラインストアが開設されたことにより、記録的な数の消費者がオンラインに集中した。
ペイパルレポートによると、「2020年第3四半期末の推計では、Eコマース利用者は2019年第2四半期比で13.1%増加し、オンラインショッピング利用者の60%以上が、2021年〜022年にはさらにオンラインでの消費を増やす予定だ」と記している。
メキシコのネットを利用する際の端末としては、スマートフォンの利用度が高く、モバイルコマースの年間普及率が20%に達している。
最後に我が国、日本のEC市場をペイパルレポートではどのように見ているのだろう。
日本のEC市場は、金額ベースでは世界トップ4にランクインしているが、日本のEコマースが小売業全体に占める割合はわずか13%しかない。
これまで日本は、商品を実際に見てみたいという気持ちがEコマース普及の大きな障壁なっていたが、パンデミックによる外出自粛により、オンラインによる購入が増加した。
ほとんどのカテゴリーでオンライン小売が10~20%成長したと推定され、消費者はコロナ収束後もオンラインショッピングを継続する意向を示していると記している。
日本の特徴は、越境ECによる海外からの購入率が他国に比べて、極端に低いことである。
日本人が日本以外の国から商品を購入を促進するためには、ペイパルなど第三者決済の普及と日本語による越境ECにより国内で買い物をしているのと同じような体験を提供することが重要であると考える。
そして、何より重要なのは、パンデミック収束後の日本経済(GDP)の成長拡大である。日本人はさらにEコマースを活用し経済を回し、さらに諸外国とも越境ECで商品の流通、ボーダレス化を促進する必要があるだろう。
タグ: EC市場, Eコマース, インド, ブラジル, メキシコ, ロシア, 中国