これからの時代のECサイトは、商品購入ページに写真、商品名、商品説明以外に、当たり前のように動画も配置する時代となる。
そして、動画から商品詳細ページに誘導させ、購入を促す動画コマースという新たな動画ECチャネルが広がると思われる。
最近では、新型コロナ禍で動画コマースのひとつであるライブコマースというマーケティングがトレンドである。
今回は、2018年から市場が拡大しつつある、ECサイト上に掲載した動画コンテンツから、商品を購入できる「動画コマース」について、「YouTube」、「TikTok」の最新動向、そして「動画コマース」のメリット、デメリットついて整理した。
「動画コマース」とはライブコマース、動画ECなどと区別してた捉えられる事が多い。 つまり、ライブ動画ではなく、ECサイト内の動画を視聴しながら、直接商品を購入できる新たな通販システムを言う。
下のスクリーンショットは、ニトリの動画コマース「ウチソト」である。 この動画コマースは、期間限定でECサイトに公開された。
内容はシーズンに合わせた商品を動画で紹介し、動画内にサムネール表示された商品をタッチすることで、商品詳細画面や購入画面に移動し商品を購入することができるものだ。
動画コマースの良いところは、商品をきれいに並べただけではなく、その利用シーンを見せることでユーザーベネフィットを喚起し、購買意欲を高めることができるところだ。
「YouTube」は2021年から、YouTube上で見つけた商品を購入できる動画コマースを開発しているが、その見本となる仕組みが発表された。
それは7月20日、「Shopify Japan」はYouTubeとパートナーシップを締結することで「YouTube」から新たなショッピング体験を提供するというものだ。
「Shopify」導入企業でYouTubeチャンネル登録者数が1000人以上あり、資格要件を満たせば、「YouTube」上にショッピング環境を提供できるというもの。
現在は「ライブストリーミング」と「ストアタブ」の2つの機能が利用できるとしている。
動画上タグや画像をクリックすると、「Shopify」の自社ECサイトに移動する仕組みである。
「Shopify」利用者にとっては、「YouTube」からの流入が格段にアップすることが期待できる。
TikTokは、グローバルでのダウンロード数が30億回を超えた世界最大級のモバイル向けショートムービープラットフォームである。
海外TikTokの利用者数は、2021年9月時点で10億人を超えている。
そして、TikTokの本家、中国の抖音(中国版TikTok)や、アジア圏の国々では、ライブストリーミングを基盤としたeコマースが成功を収めている。
ヨーロッパでは今年上半期にはドイツ、フランス、イタリア、スペインの5カ国で、下半期には、米国でライブコマース機能の提供を開始する予定だった。
しかし、英国でのEC事業の展開に苦戦を強いられ、7月5日、「フィナンシャル・タイムズ」によると、欧州でEC事業展開を断念したことを明らかにした。
また、日本では7月11日、ショッピングカートシステムを提供する「OpenCart(オープンカート)」と「TikTok」が業務提携した。
今後は、「YouTube」と「Shopify」の提携と同様に、「OpenCart」利用者が「TikTok」上でキャンペーンを行ったり、TikTokムービーから、タブや商品をタップすることで商品ページと同期し、ECサイトで商品購入が可能となることだろう。
TikTokには潜在的に購買意欲の高いユーザーが視聴するというデータがあり、TikTokユーザーの3人に1人がTikTokで見つけたものをすぐに買った経験があるという。
7月18日のXinhua Newsによると、TikTokの本家中国では、コロナ禍でEC事業は停滞(実店舗が39.7%減、オンライン店舗が5.8%減)する中、ショート動画コマースの売上高は、60%増と大幅に伸びたことを伝えている。
「ECサイトで動画を活用しても効果があるのだろうか?」。このような不安の声が聞こえてきそうだが、ここでは、動画コマースのメリット、デメリットを解説する。
(1)ユーザーは動画を視聴することで多くの情報が得られる
(2)ユーザーは動画を視聴することで具体的な利用シーンが想像できる
(3)動画から一気に商品ページで購入できる
(4)いつでも視聴できる
(5)購入前の不安が解消される
写真やコピーからは得られない多くの情報を動画では再現できる。
ファッションアイテムなら、素材感、様々な角度からの商品の見た目、実際の色、サイズ感など、静止画の5000倍の情報をユーザーに示すことができる。
テレビショッピングが人気なのは、商品を具体的に使って見せているから。
つまり、商品の利用シーンが単純にイメージできるからである。 その商品を使った後、商品を購入した後のベネフィット、自分の姿がイメージでき、そのベネフィットは購入者が商品を使った後のミスマッチを防ぐことにつながる。
動画コマースのメリットは、ユーザーが商品を購入する時にECサイトへ飛ばす必要がないこと。
ニトリの例にもあるように、動画をクリックするだけで、商品ページで購入が可能なところだ。
通常の動画では、動画を観る→動画を止める→サイトに移動→商品検索→商品ページ→決済ページと言う流れだが、動画コマースでは、「動画を観る→商品ページ→決済ページ」のステップとなる。ステップが少なくなれば、離脱率も下がるだろう。
ライブコマースでは、インフルエンサーなどライブで商品を紹介している時間に合わせて視聴する必要があるが、動画が視聴できる環境さえあれば、いつでも動画を楽しく視聴できる。
Eコマースを利用する人は、返金、返品などの保証がどこまでなされるのか。
ショップは信頼できるのかなど、不安があるもの。 動画コマースなら、その不安のいくつかを解消することが可能だ。
例えば、企業の上層部が商品を説明することで、ショップの信頼度が上がるだろう。
(1)動画は時系列でしか視聴できない
(2)動画は魅力的でないと視聴されない
(3)動画制作にはコストがかかる
写真や文章であれば、飛ばし読みもできるが、動画は見たいところだけを見るというわけにはいかない。
そして、動画は出だしの部分が、面白くないと視聴してもらえないというリスクがある。
(1)と同様で、ライブコマースなど、インフルエンサーではない素人の出演で魅力的な動画作りをするには、しっかりとしたシナリオ、出演者の選択、撮影、演出、編集、テロップの挿入に到るまで計画して、撮影し編集する必要がある。 つまり、製作に時間を要する。
(2)のように魅力的な動画を製作するにはそれなりに時間とコストがかかる。
したがって、動画製作においてはショップの売れ筋商品や商品の取り扱い方、組み立て方が難しいもの、ユーザーからのフィードバックの多い商品など、動画による説明があった方が商品理解がスムーズになるものに限定して効果的な動画を作る必要がある。
このコロナ禍でインターネット動画がますます身近になってきており、SNSでも動画投稿を多く見かけるようになった。
また、動画コマースはランディングページ(LP)に活用しても効果があるだろう。 下に長く伸びる細かい商品説明を最後まで読んで、購入ボタンを押すという手間のかかる内容より、動画で商品メリット、ベネフィット、保証などをショートムービー化するシンプルなLPはコンバージョン(CV)率を高めるだろう。
動画は、画像や文章だけでは、わかりにくい、伝わりにくい内容をイメージし易くし、ユーザーに訴求できるメリットは大きい。
参考: