昨年12月27日、インターネット上などで広告と明らかにせず口コミや感想を装って宣伝する「ステルスマーケティング(ステマ)」の法規制に消費者庁が全面的に乗り出すと公表された。
ステルスマーケティング規制については日本は遅れており、OECD加盟国(名目GDP上位9か国)において、規制がないのは日本だけである。
規制の実施は今年の夏頃とされ、今後はステルスマーケティングの基準や、どのような内容がステマに該当するか明確に示し、運用を図るものと見込まれる。
今回は、このステルスマーケティング規制の内容やステルスマーケティングにインフルエンサーはどう対応すべきかなどをまとめた。
ステルスマーケティングとは、インフルエンサーや著名人などが広告主から金銭などの対価を受け取りながら、公平な口コミや専門家の意見など第三者のような体裁をとって、商品などを宣伝する行為。 つまり、「消費者に宣伝と気づかれないような形態で行われる宣伝行為」である。
消費者庁によると、ステルスマーケティングには「なりすまし型」と「利益提供秘匿型」の2つの類型に分類することができるとある。 これらは、夏以降、違法となるので注意が必要だ。
企業が、自ら口コミサイトなどにレビューを書き込み、その口コミが第三者が書いたかのように誤認させる行為。
企業がタレントやメディアなどをはじめとする第三者に金銭・または何かしらの経済的利益を供与しているにもかかわらず、その事実を開示しない行為を指す。
ステルスマーケティングの規制は景品表示法に追加されることになる。 景品表示法とは、企業が商品やサービスの品質、内容、価格等を偽って表示することを防ぐための法規制である。
現状の景品表示法では、ステルスマーケティングに対して明確な禁止を定めておらず、ステルスマーケティングが景品表示法上の優良誤認などに違反した際にのみ、消費者庁が処罰を下すことができるものとなっている。
つまり、景品表示法の中には、実際より著しく優良と誤認させる広告などを禁止する一方で、広告であること自体を隠して中立性を装う表示を禁じる項目はなかった。
しかし、景品表示法の規制項目として、「事業者による商品・サービスの表示であることを消費者が判別するのが困難であるもの」の一文を追加する見通しだ。
下の図は、消費者庁有識者検討会議が報告書で示されている、「ステルスマーケティング(ステマ)」に対する判断基準である。
消費者庁では、今後上記内容を踏まえ、景表法の告示に規制内容を追加し、運用基準を策定する。
現段階で違反と想定されるのは、広告主が投稿内容を指示・依頼したり、金銭などを提供してインフルエンサーなどに書き込ませたりした場合だ。
明示的な依頼がなくても、経済的な利益があると、窺わせる場合も規制対象となる。
インフルエンサーが行う場合が多いとされるステルスマーケティングは、インフルエンサーマーケティングの違いは何だろう。
インフルエンサーマーケティングとは、SNSやYouTubeなどで多くのフォロワーや視聴者を抱えているインフルエンサーや著名人に広告を依頼することであり、一方、ステルスマーケティングとは、広告主が広告とわからないように著名人やインフルエンサーなどが告知してもらうことである。
ステルスマーケティングとインフルエンサーマーケティングには、大きな違いが無いようにも見える。
統計を見ても、インフルエンサーもステルスマーケティングの理解度が低く、ステマを行うことがあるとの回答が下の表より明らかになっている。
下左図は、現役インフルエンサー300人に「これまでに、あなたはステルスマーケティングを広告主から依頼された経験がありますか。」に対する回答率である。
「依頼された経験がある」が41%にも昇る。
また、下右図はさらに、「ステルスマーケティングを依頼されたインフルエンサーに対して、依頼を受けたことありますか?」についての回答率である。
ステルスマーケティングの依頼を引き受けた経験があるインフルエンサーは約45%にもなる。
さらに、下の図はステルスマーケティングの依頼を受けたインフルエンサーに対して「なぜ、ステルステルスマーケティングの依頼を受けたか」についての回答である。
トップは、「ステルスマーケティングに対する理解が低かった。」が63.6%、「広告であることを隠すことを条件に、広告主から報酬(現金、商品、サービス等)がもらえるから。」が30.9%などとなっており、ステルスマーケティングと理解せず、投稿するケースが多い。
この夏以降、ステルスマーケティング規制においては、広告主からの報酬を受けて宣伝PRを行う場合、〇〇企業の広告あると隠さずPRすることが重要となる見込みだ。
今後は、広告主や事業主からの依頼で、インフルエンサーマーケティングなど投稿を行う場合は、「広告」、「プロモーション」などの文言で、事業者の広告・宣伝であることを明示する必要がある。
つまり、インフルエンサーマーケティングがステマと見なされない対応としては、シンプルに「PR」と表示するかどうかで簡単に違いが出せる。
投稿に「PR」、「プロモーション」、「記事広告」、「提供:◯◯◯」、「◯◯◯とのタイアップ」など、しっかり表示すればステマとはならい。
もし、違反した場合は「消費者庁が再発防止を求める措置命令を出し、広告を依頼した事業者名を公表する。」としている。
従わない場合は、2年以下の懲役または300万円以下の罰金、または、同時に二つ以上の刑となる。
また、両罰規定として法人も最大3億円が科される可能性があるとも述べている。 そして、「投稿した側は処分されない。」となっているが、ステマを行ったインフルエンサーは、フォロワーの信頼を大きく失うことになるでくれぐれも注意が必要だ。
ステルスマーケティングとは、新製品やサービス、映画、本などを広告だとユーザーに悟られないようにSNSやブログなどで広めたりするものである。
ステマは今年の夏ごろまでには、ステマ規制内容が明確になり、運用されることとなるだろう。
今後、インフルエンサーなどに広告を依頼する場合や、インフルエンサーマーケティングを行う場合は、「広告」であることを明示することが必須となるので、事業主、広告主、インフルエンサーは、ステマと見なされないよう、しっかり対応しなければならない。
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