Googleは7月28日、ChromeブラウザにおけるサードパーティCookieのサポート完全終了の延期を発表した。
これまでは「来年2023年後半から段階的に終了する」とされていたが、「2024年後半には段階的な廃止を開始する」に改めた。今回の廃止延期は2度目となる。
米Googleでは、現在、サードパーティCookieを代替し、匿名性を保ちつつ広告主やパブリッシャーにとって機能する「プライバシー・サンドボックス」の試験運用を開始している。
今回は、この「プライバシー・サンドボックス」と、Cookieに依存しない新しいWEB広告手法「コンテキスト広告」のメリット、デメリットをまとめた。
「プライバシーサンドボックス」とは、Googleが提案するCookieを利用したデジタル広告に代わる新しい広告の仕組みのこと。
現在、ユーザーのオンライン行動を分析してその興味関心を推測し、ターゲットを絞った「ターゲティング広告」は、Googleの大きな収益源となっている。
このユーザーの行動追跡に利用されているのが「サードパーティーCookie」である。
このCookieは、個人情報の保護やプライバシーリスクの観点から2024年には廃止となり、その代替としてGoogleが提案しているのが「プライバシー サンドボックス」だ。
当初は、「FLoC」(Federated Learning of Cohorts)と呼ばれるアルゴリズムが採用されていたが、批判的なフィードバックが多く寄せられたため、現在はそれに代わる「Topics API」が検討されている。 (※FLoCについてはこちらのブログでも解説している)
「Topics API」とは、ブラウザがユーザー閲覧履歴に基づいて「その週の最大の関心事」となる項目(トピック)を決定するという仕組みである。
具体的なトピックの種類には「フィットネス」「旅行」「自動車」「本」「コミック・アニメ」などがあり、保存されたトピックは3週間後に削除される。
そのため、古いデータが残ることはない。 さらに、トピック情報はGoogleや外部のサーバーと共有されず、完全にデバイス上で選択されるものである。
そこで、どのように広告が表示されるのかだが、ユーザーがTopics APIを導入したウェブサイトに訪れると、ユーザーのブラウザに保存された過去3週間のトピックの中からそれぞれの週で1つずつ、計3つのトピックが選択される。
そして、3つのトピックがウェブサイトやその広告パートナーと共有されるというものだ。 広告パートナーは、ユーザーの共有されたトピックを元に、ユーザーに適した広告を表示することが可能となる。
なお、「このトピックで配信される広告は見たくない」などの場合、ユーザー自身でブラウザからトピックを追加・削除したり、その機能を完全にオフにしたりすることもできる。
また、Googleは、トピックには「性別や人種などといったセンシティブなカテゴリーは含まれません」とされており、あくまで興味関心に関する項目のみがトピックに追加されるものとしている。
詳しい内容はこちらの「プライバシー サンドボックスの新しい Topics API について」https://japan.googleblog.com/2022/01/topics-api.htmlでご確認いただきたい。
「プライバシーサンドボックス」はGoogleが今後、提供するであろう、サードパーティCookieに依存しない広告表示手法である。
一方、サードパーティCookieに依存しないもう一つの広告表示手法が「コンテキスト広告」である。
コンテキスト広告とは、Webページのキーワード、テキスト、画像などをAI(人工知能)が自動解析し、ページの文脈(コンテキスト)に見合った広告を表示するものである。
つまり、「コンテキスト広告」はコンテキストターゲティングであり、コンテンツの内容、分脈に沿った、ターゲティングを行う広告と言える。
また、似たようなワードで「コンテンツターゲティング広告」があるが、これは、WebサイトやWebページをカテゴライズして広告配信を行う手法であり、混同しないようにしなければならない。
下の画像は、Criteoのコンテキスト広告ソリューションだが、文脈でターゲティングするという性質から、配信先URLのフルパス分析(ページ内のすべてのテキスト情報、画像、言語情報の解析)を行うため、従来の「コンテンツターゲティング」などに比べ、広告の内容と配信面のマッチ率が上がるというメリットがある。
次に「コンテキスト広告」のメリット3点、デメリット3点をまとめた。
ブランドイメージを左右する広告配信は非常に重要である。
企業はテレビCMにおいては、自社ブランドに合っていないテレビ番組にCMを流したりはしない。 「コンテクスト広告」は、テレビCMのように、自社ブランドに合わせたWEBサイトのコンテンツページに広告を掲載できる。
「コンテキスト広告」はCookie、IDFAに依存しない。
GDPR、CCPA、AppleによるIDFA(広告用識別子)の規制、2023年に控えているGoogleによるサードパーティCookieのサポート終了に見られる、プライバシー保護重視の高まりを見ると、今後、「コンテクスチュアル広告」はさらに需要が高まるだろう。
今や、機械学習によってAIは、WEBページの文脈、センチメントをより深く理解し、ブランドのとの関連性、安全性を見極めるようになってきている。
「コンテキスト広告」のAIテクノロジーは日々進化しており、精度が飛躍的に向上し、コンテンツの中の文脈だけでなく、その中の微妙なニュアンスやセンチメント(感情)までAIが理解するようになった。
「コンテキスト広告」は見込み客(その分野に興味や関心が高いユーザー)への訴求には強いが、潜在顧客へのアプローチは難しいとされる。 ユーザー自身も気づいていないニーズへの訴求、潜在顧客へのアプローチなら、リマーケティング広告など追跡型広告が適切である。
機械学習したAIが、広告を掲載するサイトのコンテンツページのカテゴリや内容を解析し、判断するのがコンテキスト広告である。
だが、この判断がいつもうまくいくとは限らない。 ターゲティング広告などWEB広告は、ユーザーの行動履歴などデータから判断されるが、これまで閲覧したユーザーストーリーまで解析できないところが課題であり、AIがどの程度までWEBサイトを解析できるかにかかっている。
コンテキスト広告は新しい広告表示手法のため、広告効果がまだ十分に検証ができおらず、費用対効果の検証という課題がある。
これは、Googleのプライバシー サンドボックスも同様に言えることである。 ユーザーの行動履歴に依存しない広告で、費用対効果を出すためには、AIの機械学習の精度が上がることやコンテキスト広告と併用して行う施策など試行錯誤が必要となるだろう。
2024年、サードパーティcookie廃止以後は、新規ユーザー獲得策としてGoogleの「プライバシー・サンドボックス」と「コンテキスト広告」のどちらの活用が有効となるか、又は両方の活用が有効となるか、方向は分かれるところになるが、WEBデジタル広告の大きな分岐点となることは間違いないだろう。
参考:
タグ: Google, Google AdWords, WEB広告, コンテキスト広告, サードパーティcookie, プライバシー・サンドボックス