越境ECというと、ターゲットとする市場は、まず、アメリカ、ヨーロッパ市場、さらに中国、香港、台湾、韓国など思い浮かぶが、東南アジア諸国、ASEANも昨今、EC市場の成長が著しく、見逃せない地域となっている。
東南アジアのEC市場は今現在の市場は小さくとも、今後は爆発的な成長を期待できるだろう。 その注目を浴びる東南アジアで、人口の増加と経済成長が止まらないフィリピン。
今回は国民所得も増加の一途のフィリピンのEコマース事情について見ていこう。
フィリピンはマニラを首都とした7,109の島々から成り立っている島国で、日本のおよそ8割の299,404平方キロメートルの面積をもつ国である。
フィリピンと日本との時差は1時間、サマータイムはない。 また、フィリピンの真ん中にあるセブ島は、世界的なリゾートとして、日本人観光客も多いエリアである。
そして、フィリピンの中心は首都マニラで、このマニラを中心とした、政治・経済・情報・文化が集まる地域群を「メトロマニラ」 と呼んでいる。
この「メトロマニラ」にフィリピン総人口、約1億人(2014年時点)のうち、約2200万人が「メトロマニラ」に集中しており、世界第5位の大都市圏 となっている。
人口も2015年に1億人を突破し、1年で2%増加しており、また、平均年齢も24歳と非常に若い。今後はさらに労働・消費世代が増え続けると見られている。 下記にフィリピンの基本情報をまとめた。
フィリピンのインターネットの利用率は高く、「Digital2019」のデータによれば、フィリピン人の71%がインターネットを利用しているようだ。
その中でECサイト利用率は63%程度となっており、市場規模としては2015年統計で、4兆円規模となっている。
また、フィリピンの特徴は、SNSを積極的に利用しているというところだ。 具体的には、Facebookが97%、YouTubeが96%、FB-Messengerが89%と、いずれも高い利用率を示している。
フィリピンのEC市場の期待値は非常に高く、これから伸びる市場である。
少し前のニュースになるが、中国のアリババは、東南アジアで展開しているLazada(ラザダ)に2100億円の追加投資を行なっている。
フィリピンではよく利用されるECサイトはAmazonフィリピンではなく、このラザダのECシェア率が高い。その次に、市場を拡大しつつあるのはショッピーである。
下記に、Lazada、OLX、Shopeeについてまとめた。
2011年に設立されたLazadaは、フィリピンのEC市場において大きなシェアを誇っている。
ラザダは、衣服からガジェット、家電製品まで、ほとんど全てのカテゴリー商品をネット販売している。このLazadaは東南アジアのEコマースの強者として君臨している。
Lazadaは現在、フィリピン他、インドネシア、マレーシア、、シンガポール、タイ、ベトナムでサービスを展開している。
OLXはニューヨーク、ブエノスアイレス、モスクワ、北京、ムンバイを拠点とするインターネット企業である。
OLXのECサイトの販売項目にはコンピュター、携帯電話から不動産、家具、美容、ファッションから求人、車販売、サービス、コミュニティ、個人広告など様々なカテゴリーに及んでいる。
また、OLXのECサイトではユーザーが作成したクラシファイド広告(三行広告)を無料で掲載することができる。
Shopeeは、東南アジアと台湾で主要なモバイルECプラットフォームである。
2015年12月ローンチし、フィリピン他、インドネシア、台湾、ベトナム、タイ、、マレーシア、シンガポールにに展開しており、6言語対応し、160万人のフォロワーがフォローしており、人気カテゴリーはファッション、美容、ホーム&リビング用品が並ぶ。
Shopeeが今後、さらに伸びると言われているのは、お店とチャットで会話できるチャット機能である。
このチャット機能のおかげで、ユーザーは商品の細かい情報を問い合わせ、偽物でないことを納得し、安心して注文することができる。
フィリピンユーザーが越境ECで商品を購入する際によく活用されているのが、LAZADAマーケットモールである。
大手日系企業がフイリピン市場で結果を出すには、東南アジア各国でマーケットシェアNO.1のECモールLAZADAに出品するというのが一般的だ。
日本の商品の売れ筋商品としては、電化製品(スマートフォン、タブレット)、趣味(航空券など)、衣料、靴などファッション関連、 家具、食料、化粧品となっている。
最近では、日本のミラーレス式のデジタルカメラが売れているようだ。 これはInstagramで「映える写真」を撮るためと言われている。 2018年の市場(金額ベース)では前年比10%増の売り上げを記録している。
それでは、フィリピン越境ECの可能性はどこにあるのだろう。 下にまとめた。
フィリピン経済は右肩上がりに成長しており、都市部は建築ラッシュである。ドゥテルテ政権になり、地下鉄を含めた鉄道や高速道路などの大型インフラ整備が進んでいる。
さらに、インターネットの回線速度、オンライン決済、配送など、ドゥテルテ政権ではeコマース発展支援に向けた長期目標をあげている。目標はGDPの25%をeコマース市場で達成するというものだ。
米ムーディーズによると「フィリピンは今後、世界のほとんどの国を上回って成長する『アジアのライジング・スター(新星)』である」とフィリピンに高い評価を与えている。
フィリピンが東南アジアでもっとも注目される一番の理由は、フィリピンが世界トップクラスの消費大国だからである。
フィリピン人は浪費家が多く貯蓄が少ない傾向があり、最近では、メトロマニラの中心部でクレジットカードが段々と普及してきている 。そして、国民の旺盛な購買欲はEC業界にとって大きなチャンスと言える。
東南アジアで最も親日国なのはフィリピンである。 2017年のアウンコンサルティング株式会社のアンケートによると、「日本が好きですか?」という問いに対して「大好き」と答えたフィリピン人は 82%にも昇っている。
さらに、日本の製品対する好感度も高い。日本製品というだけで、「高い品質、安全、安心」と非常に良いイメージを持っている。フィリピンでは日本製品を売りやすい環境が整っていると言える。
しかし、フィリピンで越境ECで商品を販売するには、知っておくリスクも存在する。 まだまだ、購買欲は高いが、インターネットインフラなど、需要に追いついていないという状況がある。
下記にそのポイントをまとめた。
クレジットカードが普及していない フィリピンでEコマースの発展の障壁となっているのは、決済の問題だ。
下図にあるように、クレジットカードの普及が遅れている。 銀行振込の割合を見ても分かるように、銀行口座自体の普及も遅れているのだ。
クレジットカード、銀行口座を持っているのは富裕層と一部の中間層に限られている。
フィリピン配送は民営物流会社を利用するのが一般的だ。 国内ではLBCExpress、PHL Post、2GO、Air21など、代表的な企業がある。
海外からの発送では、国際宅急便BalikbayanBox、DHL、FedExなどがある。
問題は都市部への配送はサービスが日々進化しているが、都市部を離れると、配達が難しく、料金も高く、配送格差が起こっている。
また、常に都市部では交通渋滞を起こしており、ドゥテルテ政権下でどこまで改善されるかが課題である。
中国ほどではないが、フィリピンでも模倣品の製造は盛んである。模倣品にオリジナルブランドをつけて、店頭やECサイトで売られていたりする。
フィリピンで人気がでれば、模倣されるリスクが高くなる。また、ブランドロゴを変形し、自社製品に勝手につけることもある。
こうしたことは防ぎようがないので、このような場合に対処できるよう現地法律家の準備を行う必要もあるだろう。
以上フィリピンEコマースの可能性とリスクについてまとめたが、リスクについては越境ECを行う前にこのリスク対策を検討しておいた方が良いだろう。 最後にフィリピンの輸入既製品ついてまとめた。
フィリピンに生鮮品を含む食品を輸出する場合、フィリピンの輸入業者や流通業者は輸入・販売許可を取得する必要がある。
食品の種類によって所轄官庁が異なっているので注意が必要だ。 また、包装されている加工食品(肉、魚肉加工製品を含む)や飲料、加工食品向け原 料や食品添加物などを輸入する際には、保健省食品薬品管理局(FDA)からライセ ンスを取得する必要がある。
以下が輸入禁止品目の内容となっている。
出典:https://www.jetro.go.jp/world/asia/ph/trade_02.html
東南アジアはアメリカ、中国に次ぐ市場開拓の中心的存在になりつつある。
その中でも平均年齢が24歳と若いエネルギーに満ちているフィリピンは注目の存在である。 フィリピンはネット環境、決済、配送サービスなど課題もあるが、それ以上にフォリピンのもつ、伸び白、潜在能力には大きいものがあると感じている。
今年4月、デジタルスタジオはフィリピンに会社法人を設立した。社名は「LIMDER」である。このフィリピン支店では、主にLive Commerceの新サービスの開発案件を行う部署として機能する。フィリピンの若いエネルギーに期待したい。
最後に、このブログを執筆していた22日、フィリピンでM6.1の地震が起こった。被害に会われた方々に謹んでお悔やみ申し上げるとともに、1日も早い復興をお祈り申し上げる。