モバイル決済は日本に浸透するのか?

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先月、8月28日、Amazonジャパンは、実店舗でAmazonアカウントを利用して決済できる仕組みの提供し始めた。
「Amazon Pay」を実店舗でのモバイル決済に対応したもので、「Amazonショッピングアプリ」に表示されるQRコードを使い、実店舗でもAmazonアカウントを使用し決済できるというものだ。
Amazonは、これで、日本のキャッシュレス決済に実質、参戦した形になる。ApplePay、LINEPay、楽天Payなど、日本ではすでにキャッシュレス決済においては先行しているものはあるが、どこまで追随できるか見所でもある。
今回はこのモバイル決済の日本の現況やキャッシュレス決済には何が問題なのか?など見ていこう。

 

●日本の決済方法事情はどうなっている?

モバイル決済とは、「スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末、またはウェアラブル端末を通して料金の支払いやその受け取りを行うこと」を指す。
マイボイスコム株式会社が2018年2月1日~5日に実施したアンケート調査(10,674件の回答)によると、 直近1年間の代金の支払い方法(ネットショッピング以外)は、「現金」での買い物が86.1%となっている。
次にクレジットカード支払いが66.3%、「suicaやモバイル系電子マネー」は49.4%となっており、「電子マネー」での支払いは伸びているものの、圧倒的に現金での支払いが多いという現実が浮き彫りとなっている。

図01

 

●クレジットカード・電子マネーとスマートフォン等の決済の利用状況

クレジットカードと電子マネー(カードタイプの電子マネー)とスマートフォンアプリの使用割合を比較すると、94.9%がクレジットカードとカード型電子マネーを利用しているとなっている。
また、スマートフォンアプリ、ApplePay、LINEPay、楽天Pay、おサイフケータイなどの利用は14.5%とモバイル決済は浸透していない。
まだまだ、キャッシュレス決済ではクレジットカードなどのカード型決済が主流であるようだ。

図02

 

●モバイル決済(スマートフォン決済)の決済アプリサービスの利用状況

モバイル決済のうちどのようなサービスが良く利用されているかを調査した結果をみると、先行してした「おサイフケータイ」の利用率が59.2%と利用率が高い。
次に「楽天Pay」が15.2%と追随している。「楽天Pay」は2017年より増加傾向にあるとしている。

図03

 

●モバイル決済を行った場所はどこか?

マイボイスコム株式会社のアンケート調査によると、直近1年間に代金をスマートフォン等のアプリ・機能で支払った店・場所を調査した結果によると、「コンビニエンスストア」が78.5%と圧倒的に多い。
次いで「スーパー」が39.5%、さらに、「自動販売機」「ドラッグストア」「飲食店、喫茶店など」「電車・バス運賃」が各20%台となっている。
その他、MMD研究所の調査内容をみても、モバイル決済では、「コンビニエンスストア」の利用比率が高いようだ。まだまだ、実店舗での支払の際にモバイル決済利用する割合は低いようだ。

 

●モバイル決済に賛成か?反対か?

MMD研究所はスマートフォンを所有する男女7,956人を対象に「2018年5月 モバイル決済 利用者・未利用者比較調査」を実施している。
この調査結果のなかでモバイル決済のへの意向として、「キャッシュレス化に賛成か反対か」を調査したものをみると、「賛成派」は66.6%、「キャッシュレス化に反対派」7.7%となっている。
この結果をみると、キャッシュレス化の受け入れ態勢はできており、後はモバイル決済のための店舗等の環境整備、さらに政府が整備の後押しがあれば、普及するだろうと考える。

図04

 

●モバイル決済を普及のための課題は何?

日本ではモバイル決済というと、おサイフケータイによる決済やアップルなど、ApplePay、LineのLinePayなどを意味するが、スマートフォン自体にこれら機能を搭載した機種(2017年3月時点では3000万台)が販売されているにもかかわらず、その利用率が6%程度しかないとはどういうことだろう?
インフラが整っているにも関わらず、モバイル決済を利用する人が少ない理由については、以下のレポートが参考になる。
レポートでは、

  1. モバイル決済を利用できるようにする初期設定(アプリのダウンロードやカード情報登録など)が難しい。
  2. 機種変更時の作業が煩雑。
  3. 支払いは現金でしたい。

 

このレポートをみると、モバイル決済を利用しないのは、登録など設定が面倒なイメージがあること、現金やクレジットカードといったすでに普及している支払い方法を上回る利便性が感じられないところなどが原因のようだ。

モバイル決済普及のためには、機種購入の際に決済アプリなどは、カメラモードのようにあらかじめ設定されていること。
さらに決済の登録などは生体認証などでセキュリティを強化し、少しで簡便にすること。そして、クレジット決済より、利便性の高い利用サービスとして個人間送金アプリサービスの搭載など行う必要があるだろう。
また、小売り店舗など、モバイル決済の行えるエリアもっと拡大できるように、政府の後押しも必要だろう。

 

●まとめ

キャッシュレス化は、決済が迅速に行えるだけでなく、セキュリティや不正の防止にも役立てることができる。
また、今後、インバウンドがさらに拡大し、外国人旅行者が増える中、「日本は現金しか使えない遅れた国」では、「おもてなしの国、日本」のイメージダウンし、インバウンドも失速するだろう。
日本政府はキャッシュレス化の推進として、QRコードの表示などモバイル決済を新たに導入する企業を対象に、一定期間は減税することも検討している。 2020年、東京オリンピックの開催は、このモバイル決済によるキャッシュレス化への大きな転換期となるだろう。

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