以前のブログ、「2020年の日本の広告費 広告メディアを牽引する運用型広告とは」で記したが、2020年の日本の広告費は6兆1,594億円(2019年は6兆9,381億円)と前年比88.8%となり、9年ぶりに減少となった。
広告費全体では減少する中にあって、インターネット広告費(インターネット広告媒体費、物販系ECプラットフォーム広告費、インターネット広告制作費)は、2兆2,290億円と、前年比105.9%の増加となった。
そして、3月10日電通グループは、そのインターネット広告費についての詳細な内容が発表した。
2020年、2021年と続くコロナ禍においても、拡大し続けているインターネット広告費であるが、いったい、どのようなインターネット広告媒体が拡大しているのか、その詳細内容とさらに今後のインターネット広告のあり方など見てみよう。
2020年のインターネット広告費の全体では2兆2,290億円で前年比105.9%の増加となった。
その内訳は、インターネット広告媒体費、1兆7,567億円(前年比105.6%)、物販系ECプラットフォーム広告費が1,321億円(前年比124.2%増)、インターネット広告制作費が3,402億円で(前年比101.4増)である。
このインターネット広告費の中のインターネット広告媒体費、1兆7,567億円(前年比105.6%)についての詳細内容が今回、電通グループが発表した「2020年 日本の広告費 インターネット広告媒体費 詳細分析」である。
ポイントは、(1)動画広告媒体は予想以上の拡大 (2)運用型広告は伸長したが、予約広告、成果報酬型は減少 (3)ソーシャル広告は3割超えの拡大 (4)2021年インターネット広告は堅調に拡大を予想 の4つである。
では、その(1)から(4)について以下に整理した。
インターネット広告媒体費は媒体別に検索連動型広告、ディプレイ広告、成果報酬型広告(アフェリエイト)、動画広告、となっている。
その媒体別の変化(2018年〜)を示したのが下のグラフである。
2020年のインターネット広告媒体費、1兆7,567億円の詳細は検索連動型広告は6,787億円(占有率38.6%)、ディスプレイ広告は5,733億円(占有率32.6%)、あわせて全体の7割を占め、動画広告は3,862億円で前年比121.3%の3,862億円と大きく伸長しており、占有率も2割を超えたのが分かる。
次いで、成果報酬型広告は956億円(占有率5.6%)、その他のインターネット広告が200億円(1.1%)と続いている。
検索連動型広告など微増する中、動画広告媒体はコロナ禍でYoutubeなどの動画視聴が増加し、想定以上に伸長している。
インターネット広告の取引において、大きくその運用方法を大別すると、入札方式で行われる「運用型広告」、非入札方式の「予約型広告」、さらに、アフィリエイトなどの「成果報酬型広告」となる。
主流は、入札方式の運用型広告で2020年は1兆4,558億円で前年比109.7%の増加で、全体の8割を超えた。
それ以外の予約型広告(前年比87.5%)や成果報酬型広告(前年比93.9%)はどちらも減少に転じている。
インターネット広告媒体をソーシャル広告とそれ以外の広告の2つに分けた場合の推移を表したものが下のグラフになる。
2018年は3,890億円(占有率26.9%)、2019年は4,899億円(占有率29.5%)、そして2020年は5,687億円(占有率32.4%)と占有率は3割、前年比は116%の拡大となった。
このソーシャル広告は、種類別に「SNS系」「動画共有系」「その他」に分類すると、「SNS系」が2,488億円で、最も規模が大きい。
前年と比較すると、「SNS系」より、「動画によるソーシャル広告」が大きく伸長している。
インターネット広告媒体費は、2020年は1兆7,567億円(前年比105.6.%)だったが、2021年はどの程度拡大するのだろうか。
その予測値は下のグラフ1兆8,912億円(前年比107.7%)となっており、緩やかだが、継続的成長が続くとされている。
一般社団法人 日本インタラクティブ広告協会(略称:JIAA)は、2020年11月、全国のインターネットユーザー(1グループ4名×5グループ、計20名)を対象に、「2020年インターネット広告に関するユーザー意識調査(定性)」(オンラインでのフォーカスグループインタビュー)を実施した。
これは、一般消費者がインターネット広告体験から感じている本音を掘り下げ、インターネット広告の信頼性の向上に繋がるファクターを抽出し、調査結果としてまとめたものだ。
その概略は、インターネットは、「生活に欠かせないもの」、「自分のもう一つの頭のよう」など高い評価を得ているが、一方で、「インターネット広告」については、「詐欺っぽいものもある」、「TVのように質が一定でない」、「飛び込みセールスみたいで不快」など、その評価は高いとは言えない。
インターネット広告はネガティブ要素が強いことが明らかになっている。
「インターネット広告」は、企業から個人まで誰もが出稿できるメディアのため、マス広告のような規制、制限やチェック機関も各IT企業に委ねられている。
そのため、疑わしい広告や虚偽広告に、消費者が騙さるなど社会的悪影響も出ている現実がある。
インターネットユーザーは、このインターネット広告は肯定しつつも、広告に関しネガティブ(嫌悪)感を抱いている。
嫌悪感に関する調査では、「広告表示のされ方」、「広告の表現内容」、「ターゲティング」、「業種やサービス」があり、JIAAではそれぞれについて、「広告フォーマットに関するガイドライン」の制定や、違法広告対策などの施策について検討している。
そのようなインターネット広告の中でも、「ターゲティング広告」について、嫌悪の声が報告書に記載されている。
例えば、「誰かに見られているような気持ち悪さ、怖さ」、「実は自分の情報がもっと漏れているかもしれないという不安感」、「ターゲティング自体より、配信された広告の内容やしつこさが嫌」などである。
「ターゲティング広告」がここまで、嫌悪を抱かれいるとは驚きだが、つまり、プライバシーポリシー、個人情報が保護されてないなど、広告のプライバシーポリシーの承認の必要性、ガイドラインがないことが原因と思われる。
そのような社会情勢の中、3月3日、アメリカGoogleはインターネット利用者の閲覧履歴を追跡する技術の使用制限を強化すると発表した。
Google(Chrome)は、一人ひとりの情報を使って広告を配信する技術を排除する方針を固めた。つまり、これは「ターゲティング広告」を全面的に廃止する方向が明らかになったことになる。
また、Apple(Safari)もプライバシー保護を強化しており、インターネット広告による配信対象を絞り込むターゲティング技術を高度にすることで成長してきたネット広告の大きな転機となるだろう。
今やインターネットがマスメディア(テレビ、新聞、ラジオ)に取って代わろうとしている時代である。
インターネット広告は2019年、テレビCM広告市場を抜き、広告媒体の王者となった。
そして、このコロナ禍においても、ますますインターネット広告の需要は高まっている。
その一方、このインターネット広告を嫌悪するユーザーが多いことも事実である。
インターネット広告に対しては早急に、大手IT企業、広告主、広告代理店、広告審議団体など広告業界関係者全員が力を合わせ、インターネット広告ガイドライン、広告規定・規制の整備、媒体審査など、インターネット広告に対する様々な取組みを行い、強化する必要があるだろう。
行うべきは、ネット広告が嫌悪される要因を潰すことである。
いかにも胡散臭い広告、広告の品質などではなく、虚偽的広告、例えば、「1週間で-20kgダイエットに成功したサプリ!」、「毎日30分アフィリエイトでで100万稼ぐテキスト」、「ステロイド頼りだったアトピーがせっけんを変えただけで?(通常1,000円が今だけ0円」」など、いかにも胡散臭い広告への警告、罰則や取り締まりである。
また、WEBページ遷移と同時に何度も現れる画面全体を覆う広告、スクロールしても何度も出てくる広告、コンテンツ以上にページを占有する大量の広告表示など、WEBブラウザやサイトに対して広告規制が必要である。
そういう意味では、今後、一般人が書いたブログの広告枠でお小遣い程度の広告収入が得られるようなアフィリエイト広告は、後退するだろう。
さらに、従来の行動や趣味嗜好のターゲティングが必須となるディスプレイ広告も、Googleが制限したように、今後は廃止される可能性が高い。
また、アドネットワーク型の広告、WEBサイトに横断的に表示される広告は少なくなるだろう。
今後は、インターネット広告においては、マス広告以上のプライバシーの配慮や嘘のないモラルの高さ、表示の方法、品質など品位のある広告が求められてくるだろう。
今のインターネット広告の現状を野放しにしておけば、インターネット利用者自体の存続が危うくなる。
広告主も違法でなければ、掲載OKというレベルではなく、いかに不快と思われない広告をつくるか、クリーンな広告、嘘のない広告、ユーザーに受け入れられる健全な広告が多く配信することが重要である。
参考:
タグ: Google AdWords, インターネット広告, マーケティング