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令和元年に行うべきインバウンド対策(2019年観光白書から)

   投稿者 : 2019年7月9日 By

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6月21日、令和元年の観光白書が政府より閣議決定された。この観光白書は毎年この時期に閣議決定され一般公開されている。
今年の観光白書では、インバウンドが大都市のみならず、地方にも波及しており、日本の観光立国として広がりを示しているとまとめられている。
特に、モノ消費から「コト消費」へ変化が特徴的だとし、インバウンドは、この「コト消費」が拡大することにより、インバウンド個人消費を増大し、日本経済の回復の一つの成長エンジンとなるだろうとされている。
今回は、この観光庁の「令和元年版観光白書について」を取り上げ、2018年のインバウンドの特徴や令和元年のインバウンド施策などについてまとめてみた。

日本の外国人観光人口は世界の中では第何位?

国連世界観光機関(UNWTO)発表の世界観光動向によると、2018年(平成30年)の国際観光客は前年比7,400万人増の14億300万人(前年比5.6%増)となった。近年は、アジア太平洋地域の増加が著しいとしている。
2017年(平成29年)の日本の外国人観光客の受け入れランキングを見ると、日本はインバウンド総数2,869万人で12位と、ランクを上げている。アジアでは第3位である。
トップはフランスの8,682万人、2位はスペインの8,187万人、3位はアメリカで7,694万人である。ランクを上げたのはスペインで2016年は7,556万人から約600万人の増加である。逆に減少したのが、アメリカである。
また、昨年、2018年の日本のインバウンド総数3,119万人は2017年では、11位に相当する。

日本の観光人口

日本の観光収入は収入額は増加したが、順位は変わらず

2017年(平成29年)の「国際観光収入ランキング」においては、日本は、341億ドル(約3.7億兆円)で世界ランキングでは11位で前年と同順位であった。アジアでは4位という結果である。
観光人口は、2016年は2,404万人から2017年は2,869万人で前年比は19%増。
観光収入額は2016年は307億ドルから2017年340億ドルで前年比は10%増で、インバウンド人口は増加に対して、インバウンド収入額の方が前年比が低くなっている。
観光人口が増加し、同じように観光収入も増加するというのが、理想的である。
また、2018年(平成30年)の日本の国際観光収入411億ドル(約4.5兆円)は、2017年(平成29年)の「国際観光収入ランキング」では8位に相当するとしている。

観光人口

2018年(平成30年)のインバウンド人口と消費額

2018年の訪日外国人旅行者数は、3,119万人(対前年比8.7%増)となっている。2020年は4,000万人を目標としており、堅調な伸びと言えるだろう。
訪日外国人旅行者数の内訳は、アジア全体で2,637万人。これは全体の84.5%で圧倒的にアジアからの観光客が多いことがわかる。トップは中国の836万人、次いで韓国の754万人、3位は台湾の476万人である。

日本の観光人口内訳

2018年のインバウンドの消費額も過去最高の4兆5,189億円。内訳を見ると、中国が1兆5,450億円(構成比34.2%)と最も大きい。次いで、韓国の5,881億円 (同13.0%)、
台湾、5,817億円(同12.9%)、香港の3,358億円(同7.4%)、米国の2,893億円(同6.4%)となっている。これら上位5カ国で全体の73.9%である。

観光消費額

2018年(平成30年)のインバウンドの特徴は地方インバウンドの拡大

2018年の国内のホテル・旅館等における延べ宿泊者数を見ると、5億902万人泊で前年比0.1%減であった。
内訳は、日本人延べ宿泊者数4億2,043万人泊で前年比2.2%減に対し、外国人延べ宿泊者数は8,859万人泊の前年比11.2%増となっており、日本人宿泊者数は減少しているが、インバウンド宿泊者数は大幅に伸びているという結果である。
しかも、地方での宿泊者数が大きく伸びており、地方ブロック別に見ると、東北地方が34.7%増、中国地方が21.6%増と高い伸びを示している。
さらに、北陸信越(14.0%増)、中部(18.0%増)、近畿(11.9%増)、四国(11.3%増)、沖縄(13.6%増)も全国平均を上回る伸びであるとしている。

地方のインバウンド増加率

三大都市以外の地方都市のインバウンド数の増加の背景には、「コト消費」の関心の高まりがあるとしている。観光白書では、「スキー・スノーボード」などの「コト消費」を行う訪日客は、地方部への訪問率が高いとしている。
下の図表は訪日外国人が行なった、日本での観光で行なったことと地方部訪問率を示したものだ。
「スキー・スノーボード」がトップの87.4%となっており、スキーやスノーボードを行うために地方に訪れる割合が高いことを示している。
日本では下降気味のウィンタースポーツだが、訪日外国人には人気の体験となっているようだ。

スキーとスノーボード

さらに、スキー・スノーボードの体験の有無による訪日客1人当たり旅行支出の差と、体験した訪日客数より算出したスキー・スノーボードの経済効果は約650億円と「コト消費」は経済効果が高く、その効果は大きいと言える。

スキーとスノボードの経済効果

2018年の特徴は、ただ単に観光地を訪れて、食事して、お土産を買ってと言った「モノ消費」から、体験を重視した「コト消費」に傾向が変わってきている。そして、この「コト消費」は訪問回数が増えるにつれ、その傾向は高くなる。
多いのは、「スキー・スノーボード」、「温泉に入ること」、「自然体験ツアー」などで、どれも、日本をより深く楽しめるコンテンツである。
今後のインバウンド市場を支えるには、この「コト消費」をいかに提供するかであると予想される。

地方のインバウンド取り組み事例

観光白書では「コト消費」の多様な地方の取り組み事例についても紹介している。その一部を抜粋した。

沖縄県でのリゾートウェディング

沖縄県では、中国、香港、台湾、韓国などインバウンドに対して、リゾートウェディング誘客の重点市場としてプロモーション等を実施しており、2017年は2,066組のウェディングが行われた。リゾートウェディングは実施に伴い多数の参列者の訪問をもたらし、経済効果が大きいとしている。
国籍・地域別にみると、香港(1,218組)、台湾(596組)、中国(164組)、韓国(49組)の順となっている。
人気の要因は、海のみえるチャペル等での挙式と沖縄の海や城跡などのロケーションで写真を撮る「フォトウェディング」の高まりにあるとしている。
外国人観光客のリゾートウェディングは年々増加傾向にあり、2017年はウェディング参加者総数は41,178名、消費額も一人あたり、9.8万円と高い傾向にある。

伊勢志摩での海女小屋体験

伊勢志摩地域では、インバウンドの約8割が伊勢神宮を訪れるという。2018年は10万1,446人が訪れ、アクティビティ体験者についても増加している。
三重県鳥羽市などにある海女小屋体験施設では、海女小屋で素潜り漁の手焼きによる新鮮な魚介を食する体験が行われ、インバウンド利用者が急速に増加している。
2018年の実績では、9,284人の外国人が体験し、割合では香港38.7%、台湾22.6%、シンガポール5.8%、タイ5.1%となっている。一人当たりの消費額は5,785円となっている。

サイクルツーリズム(瀬戸内しまなみ海道)

自転車に乗りながら、地域の自然や食、温泉など、あらゆる観光資源を五感で感じ楽しむことを目的とした、「サイクルツーリズム」(瀬戸内しまなみ海道)の取り組みは、地域の活性化、滞在型観光の促進など、評価が高い。
「瀬戸内しまなみ海道」の最大の魅力は、愛媛県今治市と広島県尾道市を結ぶ全長59.4kmのルートで、国立公園に指定された瀬戸内海に浮かぶ風光明媚な芸予諸島の島々を、サイクリングをしながら、巡ることができるというところである。

海外からの宿泊者が過去最高の148万人を達成した岐阜県の取り組みとは

岐阜県は、2019年6月28日、観光庁による「宿泊旅行統計調査(平成30年・年間値(確定値))」で、インバウンドによる延べ宿泊者数が対前年比52%増、過去最高の148万4,320人となったことを発表した。
この数字は、過去最高であった平成28年の101万3,490人を大幅に更新し、対前年比は52%増で、全国1位の伸び率でもある。
この増加要は、上海など沿岸部の富裕層の増加や江西省のような内陸部では団体旅行が復活していること、さらに、飛騨高山や白川郷などの観光のために、岐阜市周辺で前日に宿泊するケースが増えていることが挙げられる。
そして、岐阜県では、平成21年度から「飛騨・美濃じまん海外戦略プロジェクト」を推進し、インバウンド誘客に積極的に取り組み、平成30年では平成21年と比べ約10倍に増加したとしている。
その中でも、岐阜県高山市は「HIDA TAKAYAMA」として、多くの取り組みを行っている。
例えば、市長自らトップセールや職員の海外派遣などである。市全体、挙げてのインバウンドへの取り組み姿勢が、多くのインバウンドを呼び込む結果に結びついているようだ。具体的には、以下の5つの取り組みを下記に記した。

  1. 高山市街地の観光スポットガイドの「飛騨高山 ぶらり散策マップ」を11言語で作成。
  2. 観光地の見どころやモデルコースを豊富に取り揃えた、お役立ち情報の公式観光サイトを構築し運営している。公式サイトも11言語に対応。
  3. 高山市の街中に公衆無線LANを整備した。
  4. 高山市の本町三丁目商店街では、官民が協力して全国初の消費税免税一括カウンターを設置した。
  5. アニメ『氷菓』のための『氷菓×飛騨高山 舞台探訪マップ』と称した聖地巡礼用パンフレットを作成し、ファンがロケ地をめぐる「聖地巡礼」を促進している。

高山市のホームページ

2019年(令和元年)に講ずるインバウンド施策の概要

最後に2019年観光白書では、令和元年に行うべき、国内観光、インバウンド施策などもまとめられている。日本政府は「観光」は、地方創生の切り札、成長戦略の柱とし、推進、実行するとしている。
まずは、多言語対応や Wi-Fi、キャッシュレス対応等、訪日外国人旅行者にとって「当たり前」の環境整備を早急に進めていくことが重要であるとしている。
そして、インバウンド誘客に関しては、日本政府観光局と地域の適切な役割分担と連携を強化し、日本政府観光局が各地域の情報・魅力を海外に一元的に発信することを目指すとし、以下が各種施策の概要である。

外国人が真の意味で楽しめる仕様に変えるための環境整備

主要観光地、鉄道など交通機関、文化財・国立公園、農泊地域などでは、多言語対応(英語、中国語、韓国語等)や無料WiFi整備、キャッシュレス対応等をモデル的に直ちに整備を実施する。

地域の新しい観光コンテンツの開発

「日本博」の開催を契機とした観光コンテンツの創出や国立公園などグランピングをはじめとする多様な宿泊体験の提供、迎賓館赤坂離宮及び京都迎賓館のガイドツアー計画、古民家、寺泊、城泊などの宿泊体験など、「コト消費」に代表されるコンテンツを企画、実施する。

地方誘客・消費拡大に資するその他主要施策

空港の搭乗関連手続の自動化や顔認証による一元化など、出入国の円滑化やビザの緩和を戦略的行う。さらに、首都圏空港の発着容量の年間約100万回に拡大や羽田空港の国際線を増便を実現する。
また、観光スポットの混雑状況をスマートフォンで閲覧できるシステムの導入し、旅行者が安全、安心に旅行できるようIT技術の活用した情報発信を強化する。
東北6県のインバウンド泊数を2020年に150万人泊とし、支援することや、釧路市、金沢市及び長崎市に対し、各市が設定した重点項目を中心に、関係省庁が連携して優先的な支援を展開する。

まとめ

日本政府は、「観光立国」実現のためのイアンバウンド数値目標を以下のようにしている。2020年に4,000万人、2030年には6,000万人である。2018年のインバウンド数は3,192万人であったので、目標には到達する見通しである。
もう一つの目標、インバウンド数と合わせて消費金額がある。2020年は8兆円、2030年は15兆円である。2018年は約4.5兆円であるため、この目標達成は難しいと言えるだろう。
今年の観光白書ではコト消費の占める割合が低いことを指摘しており、インバウンド市場では、「コト消費の一層の拡大」を求められるとされている。
そして、「コト消費」の体験型コンテンツを拡大することと合わせて、無料wifiの整備、キャッシュレス対応、多言語化対策などインフラの整備も重要なところである。

今回使用した図表などは、『令和元年版観光白書について』より引用した。
『令和元年版観光白書について』URL:http://www.mlit.go.jp/kankocho/news02_000386.html

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