2018年9月12日、日本政策金融公庫総合研究所が融資先の中小企業3,290社(小売業や飲食店・宿泊業・運輸業など)を対象に行った「外国人観光客の受け入れに関するアンケート」の結果を発表した。
その調査結果によると、中小企業の外国人観光客受け入れについては過半数以上が前向きで、積極的な受け入れを示している。
ただ、受け入れには積極的ではあるが、具体的な集客についての取り組みついては、「実施している」と回答した企業は25.8%で、その取り組みについては、まだまだ行われいない実情を示している。
今回は、この調査結果の内容をベースに、インバウンド集客について、どのような取り組みが必要かなど見ていこう。
1年前と比べた自店の属する地域で見かける外国人観光客は、「かなり増えた(7.8%)」「やや増えた(20.0%)」の合計が27.8%と前年調査から3.4ポイント上昇している。
地域別にみると、「増えた」の割合の大きいところは、北陸、北近畿、南近畿、四国、南九州であった。
外国人観光客の利用の有無は、「利用がある」が37.2%と前年調査から3.0ポイント上昇してる。
業種別にみると、「利用がある」の割合は、「ホテル・旅館業」、「公衆浴場業」、「飲食業」の順に高いようだ。 この3業種のなかで、「ホテル・旅館業」と「飲食業」は2016年から2年連続で上昇している。
自店を利用している外国人観光客の国・地域は、「中国」、「韓国」、「台湾」の順となっている。
なかでも「中国」の割合が、北海道、北近畿、南近畿、九州北で全国平均の割合を大きく上回っている。
外国人観光客の集客に向けた取り組みは、「実施している」が25.8%で前年から0.8ポイントの上昇とその伸び率は低い。
業種別にみると、「実施している」の割合は、「ホテル・旅館業」、「公衆浴場業」、「飲食業」の順に高いことがわかった。
インバウンドの集客に向けた具体的取り組みとしては、 「Wi‐Fiなどインターネット接続環境の整備(36.1%)」機械・設備の導入、次に「メニューや施設内の案内等の外国語表記の実施(31.8%)」さらに「クレジットカード決済の導入(30.5%)」、「多言語でのパンフレット、コミュニケーションツールの作成(26.4%)」となっており、ハードとソフトの両面から取り組みが行われている。
調査対象企業にインバウンドの集客で効果的なものを複数回答いただいた結果によると、 「 Wi-Fiなどインターネット接続環境の整備(24.1%)」、「メニューや施設内の 案内等の外国語表記の実施(24.1%)」、「多言語でのパンフレット、コミュニケーションツールの作成(18.6%)」、「クレジットカード決済の導入(17.8%)」などが、効果的な取り組みとして回答割合が高い。
外国人観光客に対する今後の方針について回答した内容によると、「積極的に受け入れていきたい(9.5%)」、「受け入れてもよい(47.4%)」の合計が56.9%となり、過半数が受け入れに前向きな回答をしている 。
外国人観光客を受け入れる上での課題は、「従業員の語学力の向上(38.3%)」、「メニューや施設内の案内等の外国語表記の実施(27.3%)」などの外国語対応に関する割合が高い。
また、外国人観光客を受け入れたくない理由は、「外国語が分からない・話せない(分かる・話せる人がいない)」、「外国人観光客の受け入れ方が分からない」、「トラブルが増える」の順に高くなっている。
日本政策金融公庫総合研究所が行ったアンケート内容ではインバウンド集客の取り組みで、上位にあがっているのは「 Wi-Fiなどインターネット接続環境の整備」、「メニューや施設内の案内等の外国語表記」、「多言語でのパンフレット、コミュニケーションツールの作成」、「クレジットカード決済の導入」となっている。
ここでは、インバウンド集客での重要な施策として3つを整理した。
インバウンド集客で一番大事なのは、先ずは、インターネットで情報を発信することではないだろうか? 日本政府観光局の調査によると、外国人観光客の90%以上は、ホテルや無料WiFi、スマートフォンで日本滞在中にインターネットを利用し、情報を収集していると言う。
また、スマートフォンでは、インターネット検索以外でもブログなどSNSで旅先の情報を調べることも定着しているとしている。 日本に訪れる外国人観光客には対しては、インターネットで外国語対応したホームページを開設し情報を発信し、旅行ポータルサイト「トリップアドバイザー」に登録すると良いだろう。
「トリップアドバイザー」は月間ユニークユーザー数は約3億5,000万人の世界最大の旅行者のコミュニティサイトだ。
店舗などのインターネット多言語サイトの構築は、旅行ガイドブックなどで掲載費用の確保が難しい場合でも、低価格に実現できるし、外国人観光客にはこの店舗情報は重要な情報源となる。
また、フェイスブックなどSNSのアカウントの開設も重要だ。開設は無料で行え、情報発信の内容がユニークだと口コミで広がる可能性が高くなる。SNSは情報の更新を逐一行うことで、ファンを獲得でき、これは、やらないより、やったほうが確実に集客につながるツールである。
さらに、店舗ではインターネットやSNSを快適に利用できるように、無料WiFiの設置も検討すると良いだろう。
飲食店に限らず、店舗では英語、中国語、韓国語など多言語化はインバウンド集客の基本となるだろう。
まず、飲食店のメニューの翻訳や店舗商品の翻訳は、コストはかかるが、インバウンドのお客様がお店情報を理解できるかどうかで、お店に対する満足度は大きく違ってくるだろう。
さらに、店内のサインなどの表示も多言語化するのが好ましい。会計場所やクレジットカードが使用できるなどの案内、商品棚の商品カテゴリー表示などのサインを内装デザインの弊害にならない程度に行うと良いだろう。
また、注意しなければならないのは、正しく翻訳をするということである。まず、言語翻訳できる日本人が翻訳し、さらにネイティブチェックを行い、さらに、第三者チェックを入れるなど、間違いのない翻訳を行うことが重要である。
日本に比べ、クレジットカード利用が浸透している外国では、大きな買い物、飲食に限らず、ちょっとした支払いでもカードを使うことが習慣となっている。
このような訪日外国人は、日本のどこでもカードが使えると想定していることが多い。
先ずは、外国人がキャッシュレスで買い物ができる、飲食できるように、クレジットカードで支払いできる環境を作ることが重要である。
欧米人対応としては、VISA、マスター、アメックスなどで支払いができるようにする。
中国人が使用するカードで主流なのは銀聯カードである。さらに支払いではモバイル決済が決済の主流になりつつある。WechatPayなどのアプリによる決済方法で、今後は中国人に対しては、このスマートフォンアプリによる決済方法も順次対応できるようにすべきだろう。
外国人観光客は、慣れない日本円を使うより、つり銭が出ないクレジットカード決済やモバイル決済をできること。そして、それらが店舗や飲食店の支払いで利用できることを、店内に表示するのが良いだろう。
2018年8月の訪日外国人数は早くも2,000万人を超え、2,130万8,900人(前年度伸び率12.6%)となった。
日本人消費が伸び悩む中で、消費を高め、業績を伸ばすにはこのインバウンド客を獲得し、外国人観光客に外貨を落としてもらうことを考えなければならない時代である。
そして、インバウンド客は都市部だけではなく、地方都市に新しい未知の観光体験を求めている傾向がある。
地方都市に多くのインバウンド客が訪れれば、収入増加が見込め、地域活性化にもつながるだろう。 そして、外国人観光客が訪れた時に良質なサービスを提供できれば、インバウンド熱は高まり、帰国後も越境ECを利用し、商品を継続購入する可能性が高くなる。
このインバウンドの増加を契機に越境ECサイトを構築し、同時に外国語対応やクレジットカード、スマートフォン決済など環境を整えることを検討してみてはいかがだろう。
※図表は、「外国人観光客の受け入れに関するアンケート」を元に作成。
https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/seikatsu30_0912a.pdf