2020年は新型コロナの影響で、世界のファッション業界は大きな打撃を受けた。
アメリカの3~6月の小売売上高は前年同期比7%減であったが、アパレルは55%の減少である。
国内のファッションメーカーでは、レナウンが倒産し、オンワードは700店舗の閉鎖となった。
今後も続くコロナ禍の中、アパレル各社はEC化に成長の鍵を見出している。
さらに、国内Eコマースばかりではなく、越境して、中国、アメリカなど販売網を拡大しようとする動きもある。
今回は、2019年、ZOZOTOWNの中国進出を中心に、ファッション系越境ECで成功するための黄金ルールについて解説する。
経済産業省の2020年7月に公表した「電子商取引(国内EC)に関する市場調査」によると、
2019年の衣類、服装雑貨等のBtoC-ECの市場規模は1兆9,100億円で、物販系分野では最大の市場規模となり、前年比では7.74%上昇し、EC化率も13.87%と拡大した。
ファッション関連商品は、実店舗で見て触れて、試着、採寸するなど、リアル店で買うという、いわば、食品に近いカテゴリであるが、EC化率は13.87%と、食品などに比べると確実に増加した。
そして、2021年の最新のECモールランキングでは、楽天、Amazonジャパン、Yahoo!ショッピングに次ぐ4位にZOZOTOWNが食い込んでいる。
ファッション系単独で4位となった、この実力はなかなかである。
周知のとおり、2019年にはZOZOTOWNはYahoo!ジャパンによって買収され、前澤社長は退任となったが、Softbankのユーザーを対象に開設されたPayPayモールにZOZOTOWNが出店することで、顧客層を大きく拡大させた。
その流れで、ZOZOTOWNは2019年12月、中国へ再挑戦している。
ファッション市場における世界のECマーケットは、日本のEC市場より大きい。
中国に再挑戦しているZOZOTOWNに勝算はあるのか?
世界のEC事情と合わせて見ていこう。
下のインフォグラフィック図は、統計サイトStatistaの最新の市場調査「The Statista Global Consumer Survey」からの引用である。
緑が2020年の各国のファッションECの市場規模をして示しており、赤が2024年までに到達すると予測されるファッションECの市場規模を示している。
これを見ると、世界のファッションEC市場規模は中国がトップで、次にアメリカ、イギリス、日本となっており、特に中国は2020年は2350億円、2024年までには3840億円とファッションEC市場は大きく拡大が予想されている。
中国は、2020年のEC市場規模は253兆円、EC化率も既に44.0%に達しており、世界のEC市場においては他を圧倒している。
また、アメリカの2020年ファッションEC市場は1120億円、2024年には1660億円に達するとされている。
アメリカは2020年のEC市場規模が74兆2,000億円、EC化率が14.5%となっており、中国の3分の1程度の市場規模である。
このアメリカ、中国に進出したのが、ZOZOTOWNである。
2018年7月、ZOZOTOWNはアメリカ他、72の国と地域で海外向けサイトhttps://zozo.comをローンチしたが、2019年4月には9ヶ月足らずで撤退している。
そして、その年の2019年、12月には満を持して、中国へ再挑戦となるhttps://zozo.cn/をオープンした。
2019年12月、ZOZOTOWNは日本に出店中の177店を、中国版「ZOZO」としてオープンさせた。
2011年にも中国向け通販を行っているが、販売不振で2013年には閉鎖すると言う苦い経験の中、6年後の2019年、満を持しての再挑戦である。
再挑戦となる今回の「ZOZO」強みは、上海に現地法人を置き、サイトの編集や翻訳のほか、中国での通関業務、一連のフルフィルメント業務、顧客サポート業務などを現地「上海走走信息科技」が全て行い、中国でのECインフラが整っているところにある。
また、日本でのZOZOTOWN出店ショップは、中国版「ZOZO」に出店する場合、日本と同率の販売代行手数料で上記サービスを受けながら中国への販路を拡大することができる。
商品在庫は日本国内の物流センター「ZOZOBASE」で管理し、中国から注文が入った商品はZOZOBASEから発送される仕組みである。
オープンから1年となるが、現在、300店を超えるショップが出店しており、日本のファッションECが中国進出にかかる障壁は低く、「ZOZO」のポテンシャルは高いと言える。
ZOZOの中国現地法人である上海走走信息科技公司(Shanghai ZOZO Co., Ltd.)の厳盛日CEOのインタビュー記事によると、
”中国EC市場は大きく変化し、2018年に行った調査では、20~30代の中国人の消費力がはっきりと伸びていることがわかり、特に消費者ニーズが拡大した。
さらに、中国政府が越境ECに対する優遇政策を実施した時期でもあり、トータルに考えて今が再進出するチャンスと思った。”
”今回の再進出では「ZOZO」を打ち出すのではなく、日本のブランドやファッション文化を打ち出してゆく。ブランド1社の戦いではなく、日本のファッション文化を携えて一緒に戦う。”
と述べている
日本のアパレル企業で中国進出を果たし、成功しているのは「Tmall」、「JD.com」内に独自サイトをオープンさせたユニクロがある。
ユニクロの強みは実店舗の成功にある。
中国に流通する粗悪で安いファッション商品に対して、ユニクロの商品は低価格帯のアパレル商品よりは高いが、圧倒的に品質が良いというポジションを確立することで、2000年代後半から急成長する中国都市部のホワイトカラー層のニーズをしっかり掴んだ。
実店舗の無い「ZOZO」は、越境ECサイトのみでの挑戦となるが、コロナ禍でインバウンド需要が見込めなくなった日本の現況で、今年、2021年は勝負の時期となるだろう。
中国版「ZOZO」は、2019年の記事を読む限りでは、万全の布陣で中国進出に臨んでいる。
中国向け越境ECに関するサポートのすべてを中国現地法人が行い「日本のファッション文化の発信する」をコンセプトとして再挑戦した。
そのために、日本からの中国出店の壁を極力低くし、出店数も今では300店を超えている。
また、集客施策についても、ZOZOTOWN中国現地法人CEO、厳氏によると、KOLやKOCとのネットワークや各プラットフォーマーとの連携を強化し、ブランドの魅力をより中国的に中国人ユーザーに伝えるて行く。つまり、インフルエンサーや口コミ重視の対策を行うことで購買層を拡大すると述べている。
越境ECで成功するためには、現地人による集客、販売施策は大きな武器である。
その上で考えなければならないのは、日本のファション商品であれば、何でも売り込むという姿勢ではなく、日本のどんな商品を売るかをしっかり選別して、販売サポートを行うことが重要と考える。
今や、「日本の商品なら越境ECで何でも売れる」と言う時代ではない。
「集まる価値のある商品を越境ECで売る」、つまり、「オンリーワン商品」であり、他では手に入らない商品でなければ越境ECでは成功しない。
そのような商品でなければ、海外消費者は集まらないし、高い関税、送料を払ってまで買ってはくれない時代だ。
そして、日本でも売れていると言う「トレンド感、ブランド感」をいかにアピールするかが成功の鍵となる。
「オンリーワン商品(商品のユニークさ、他にはない価値)」と「ブランド力」があれば、さらに集客としてKOLやKOC、広告に予算を投下することで、消費者は必ず自社越境ECサイトを訪れ、商品を買うことだろう。
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