なぜ、新興国では成約率が異常に低いのか?

アクセス数は2倍なのに、新興国の成約率は先進国の1/5

越境ECというのは、GoogleやFacebookやTiktokの広告を使う上で、基本的にどの国だろうが同じやり方です。

しかし、「国」によって決定的に異なる事情が「決済方法」です。ある国や地域ではクレジットカードが主流でも、別の国では全く異なる決済方法が主流だったりします。

国と紐づいた決済方法を知らないことによって引き起こされる悲劇、それは高いマーケティング費用となって事業の負担となり、しいては利益率に直結します。

これは、何も知識武装せずに越境ECを行った場合に起こりうる悲劇ですが、知識と技術を駆使すれば、これらの悲劇をコントロールすることが可能です。この記事を読んでいただければ、事業をよりリスク少なくする知識を得られるはずです。

成約率が低い原因の1つが「決済方法」

上の画像は、当社が運営する Discovery Japan Mall における大陸別の成約率です。
概略でいうと、ヨーロッパ0.3%、アメリカ0.4%、アジア0.07%ということで、

1、アメリカはアジアと比較して5倍の成約率
2、アジアはアメリカと比較して2倍の新規ユーザー訪問数

アジアとアメリカでは当然ながら、所得(経済)格差があるので一律に比べることはできませんが、アジアからこれだけの新規ユーザーが流入しているということは、それだけ日本に対する期待や人気の表れであることは間違いありません。

では、なぜ成約率が低いかというと、私はアジア人が好む決済方法を提供できていないからと判断しています。
東南アジアで人気のあるモール「Shopee」や「Lazada」では国ごとに決済方法を明確に分けています。例えば、フィリピンならGCashmayaという独自の決済方法を提供しています。

VISAやMasterのクレジットカード決済は国を問わず、全世界で提供されている決済手段です。
新興国でもクレジットカード決済は利用できますが、新興国は自国通貨建ての決済しか利用できないクレジットカード保有割合の方が多く(Masterによれば約7割は自国通貨決済専用のクレジットカード)、同じクレジットカードでも外貨建て決済が行えないのです。そのため、当社が提供しているStripeで円建て決済をしようとすると、クレジットカード決済に失敗し、結果として離脱してしまうため成約率が低くなるのです。

これは、今に始まったことではなくクレジットカードが普及し始めたころから存在していた問題でした。

新興国への決済対応は課題が多い

先ほどフィリピンの例でGCashやmayaという独自の決済方法を例に挙げましたが、ではこの決済方法を契約しようとすると、

・現地法人を作らなくてはならない
・契約にあたり、いろいろな書類を提出しなくてはならない
・決済サービス単位で、システム開発をしなくてはならない

とても手間とコストがかかる課題があります。

本気で東南アジアを攻めるとなれば、フィリピン、ベトナム、マレーシア、台湾、インドネシア、、、国ごとに現地法人を立ち上げて現地独自の決済業者と契約していくことになります。そして決済単位で、システム間での統合が必要になるため、システム開発も莫大なコストと時間を消費することになります。はっきり言って、現実的はありません。

これが、東南アジア攻略の裏側に隠されている落とし穴なわけです。

この新興国の決済方法が提供されていないという課題に、風穴をあけた企業があります。
2015年、ウルグアイで創業した dlocal という会社です。

dlocalが新興国市場のドアを開け始めた…

dlocalの特徴はアフリカ、アジア、ラテンアメリカの新興国に特化した決済サービスを提供しているということです。
すべて新興国の決済方法ですが、1つの会社 dlocal がほぼ全てをカバーしています。

現地法人を作ることなく、各国の銀行振込やコンビニ決済、デジタルウォーレット決済まで利用することができてしまうのがdlocal という決済サービスです。

すごい!としか言いようがありません。

既に amazon や Dropboxという大手米国企業も使用しており、2019年から2022年までの3年間で5500万ドルから4億2000万ドルに急成長している企業です。(日本円換算で55億円から551億円)
ちなみに、ナスダックに上場しているのでこちらで株価もわかります。

日本でdlocalを実装している企業としては、当社と海外販売代行のZen Martぐらいかと思われます。

新興国の越境ECマーケティング ゲームのルールが変わる

新興国市場のゴールドラッシュが始まるか
dlocal をEコマースと接続するだけで、これらの国々の決済対応をすることができるわけなので、ShopeeやLazadaだけの選択肢しかなかった東南アジア市場においては、dlocal+越境ECという新たな選択肢が増えることになります。Google/Facebookの広告でこれらの地域への消費者へは十分リーチが可能なため、現実的なビジネススキームと言ってよいと思います。

新興国市場は、先進国と比較すると2030年までの人口増加率が倍以上です。
もちろん、先進国の方が売上を作るという意味では手っ取り早いのは当然の話です。それゆえに競合も多くなります。dlocalは完全に新興国特化型の決済サービスであるため、日本→新興国という越境ECをやっている大半の企業はShopeeかLazadaを利用しているわけです。

繰り返しますが、dlocal+越境ECという新たな選択肢が増えたことにより、確実に新興国から売上を作ることは可能になるのが2025年から2030年のEコマース市場の変化になると私は予測しています。

新興国は人口も30億人以上いる市場なので、まだまだ開拓の余地が十分あります。

越境ECにおける新興国のゴールドラッシュは、2023年、まさに今年始まったばかりなのです。
今後、越境ECは新興国市場へのシフトが加速する可能性もあります。

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