7月22日、経済産業省より2019年(令和元年度)の「内外一体の経済成長戦略構築にかかる 国際経済調査事業」(電子商取引に関する市場調査)報告書が公表された。
この報告書は、毎年1回経済産業省が、前年度の日本のEコマースについてまとめたもので、今年も2019年の日本のBtoC、CtoC、BtoC市場規模、さらに越境ECの市場の商取引金額や前年度(2018年)からの伸長度など詳しく解説している。
報告書によると2019年のBtoC-ECの市場規模は、19兆3,609億円(前年比7.65%増)。
CtoC-ECの市場規模は、前年比9.5%増の1兆7,407億円。
BtoB-ECの市場規模は前年比2.5%増の353兆円、越境EC市場(日本・米国・中国の3か国間)についても増加しており、いずれの市場分野においても引き続き、拡大成長という結果であった。
今回は報告書の中から、2019年のBtoC-ECの市場の概要、2019年のEコマーストピック、さらに越境EC市場の概要について整理した。
2019年のBtoC-EC市場規模の全体は19兆3,609億円という推計結果となった。
前年の17兆9,845億円から1兆3,764億円と増加し、前年比は7.65%の増である。
国内、BtoC-EC市場は上昇率7.65%と決して高くはないが、(2018年の増加率は、8.96%だった)個人消費、景気が横ばい推移しているなかで、全ての分野で拡大成長している。
各分野別に見ると、衣類や家電、事務用品など物販系EC分野は10兆515億円、前年比8.09%の増となっている。
旅行、飲食、チケットなどのサービス系EC分野は7兆1,672億円、前年比7.82%の増となっている。
電子出版、音楽配信、ゲームなどのデジタル系EC分野では2兆1,422億円、前年比5.11%の増となっている。
また、EC化率(EC化率とは、すべての商取引の内、電子商取引が占める割合)は、EC化率は物販分野を対象した場合、6.76%となっており、これは、対前年比 0.54ポイント増である。
EC化率が最も高いのは、「事務用品、文房具」の41.75%、次に「書籍、映像・音楽ソフト」の34.18%、「生活家電、AV機器、PC・周辺機器等」の32.75%などとなっている。
EC化率においては、どのカテゴリーにおいても上昇しており、消費者の実店舗離れを浮き彫りにした。
報告書では、2019年のBtoC-EC市場のトレンドとして、「物販系分野」、「サービス系分野の市場概観」、「スマートフォン」、「SNS」、「DtoC」、「キャッシュレス」、「情報セキュリティ」、「AIの活用」、「5G」の動向について詳細にまとめている。
ここでは、BtoC EC市場で注目すべき、「スマートフォン」と「SNS」について内容をまとめた。
2019年の物販のBtoC-EC市場規模は、10兆515億円であり、そのなかで、スマートフォン経由の購入は、4兆2,618億円(スマホ比率は42.4%)となっており、これは、2018年と比較すると、2019年の市場規模は6,076億円増加しており、前年増加率は16.6%と大きい。
Eコマースは確実に、スマートフォンからの購入に移行していることがわかる。
報告書では、なぜ、スマートフォン経由のEC購入率が上昇しているかについても分析している。
その一つに、消費者とEC事業者のリレーション(関係性)の向上をあげている。
つまり、PCのブラウザからECウェブサイトを利用する場合、一般にサービス事業者からの連絡・通知は当該ウェブサイトのマイページもしくは別途メールにて行われる。
メール通知の場合、受信したメールは複数のメールの中に埋もれてしまい、確認されない可能性がある。
しかし、スマートフォンECアプリの場合は、購入すると同時に、プッシュ通知機能を用いてEC事業者が能動的に利用者へコミュニケーションを図ることができ、利用者側は即座に内容を察知することができる。
スマートフォンでの商品やサービスの購入の方が、消費者にとってより利便性が高いと感じられ、EC事業者にとっても強いリレーションを構築するチャネルとなっている。
さらに、スマートフォン保有率も2014年と2019年を比べると、40歳代(63.8% →88.0%)、50歳代(41.8% →85.6%)のスマートフォン保有率が高まっており、この年齢層の世帯、消費支出額が高いことから、今後は、この高年齢層によるスマートフォンを通じた購入がEC市場拡大のキーとなり得る可能性を指摘している。
報告書では、SNSの利用時間は増長しており、コミュニケーション系メディア(携帯電話、固定電話、ネット通話、メール)と比較して最も利用時間が長いとしている。
利用目的については、下記のグラフ内容であるが、最も多い利用目的は「従来からの知人とのコミュニケーションのため(87.4%)」である。
また、「知りたいことについて情報を探すため」が前年比で7.2ポイント増加しており、検索サイト以外にSNSで商品などを検索する行動に変化しつつある点を指摘している。
つまり、現代のSNSは、SNS上で接点を有する人物 や趣味・嗜好・考え方などが一致する人物等から情報を収集し、さらに商品やサービスの購入の意思決定を行う行動が浸透していると分析している。
さらに、このような動向を踏まえ、EC事業者がSNSを自社ビジネスに活用する取り組みも多くなってきている。
SNSを通じ、自社商品のアピール、消費者の興味・関心に応じた能動的な情報発信、市場動向や商品への評価等の収集・分析などが行われている。
SNSを広告手段として活用の拡大も継続しており、EC事業者はSNSによる事業戦略は重要である。そして、その戦略は様々あるSNSツールの特性を理解して実施されなくてはならい。
Instagramでは、多くのフォロワーを持つインフルエンサーは商品購入の意思決定に大きな影響を与えており、今後もSNSのECへの影響には注視すべきである。
2019年の世界のBtoC-EC市場規模は3.53兆USドル(約372兆円)前年比は20%の増加、世界のEC化率は14.1%と推計されている。
今後も世界的にBtoC-EC市場は拡大を続け、2023年には6.54兆USドル(約689兆円)、EC化率も22.0%にまで上昇すると予測されている。
EC市場は世界的にも拡大する一方、ECを前提とした実店舗の商品販売のあり方が問われることになると述べている。
世界のEC市場を見ると、BtoC-EC市場規模が最も大きいのは、中国で1兆9,348億USドル、ついでアメリカの5,869億USドルとなっており、中国が突出したEC市場規模を誇っている。
2019年の世界の越境EC市場規模は9,123億USドル(約9兆6,000億円)と推計され、さらに、2027年には4兆8,561億USドル(約512兆円)にまで拡大すると予測されている。
この間の年度平均成長率は約27%であり、世界のBtoC-EC市場規模の拡大を上回るペースで越境ECの市場規模は拡大すると予測されている。
報告書では越境EC市場がこのように大きく拡大する背景として、以下の内容が想定されている。
などが今後の世界の越境ECを促進する要因と考えられている。
2019年において、日本・アメリカ・中国の3か国間における越境ECの市場規模は、いずれの国の間でも前年を上回り増加している。
Bto-EC(アメリカ・中国)の総市場規模は3,175億円(前年比14.8%増)。
このうち、アメリカ経由の市場規模は2,863億円(前年比14.3%増)、中国経由の市場規模は312億円(前年比19.6%増)であった。
中国消費者が日本事業者から、越境ECを利用して購入した額は、1兆6,558億円(前年比7.9%増)。
アメリカ消費者が日本事業者から、越境ECを利用して購入した額は、9,034億円(前年比9.7%増)となっており、2カ国を合計すると2兆5,592億円となり、2019年も2018年に引き続き増加を示している。
BtoC-EC(日本・中国)の総市場規模は1兆5,570億円(前年比11.8%増)。
このうち、日本経由の市場規模は9,034億円(前年比9.7%増)、中国経由の市場規模は6,535億円(前年比15%増)となっている。
BtoC-EC(日本・アメリカ)の総市場規模3兆6,652億円(前年比12.3%増)。
このうち、日本経由の市場規模は1兆6,558億円(前年比7.9%増)、
アメリカ経由の市場規模は2兆94億円(前年比16.3%増)となっている。
世界と比べると、日本のEtoC-EC市場の前年度成長率、EC化率などは堅調に拡大はしているが、それほど大きくはない。また、越境ECの成長率は世界的にも毎年27%の成長で拡大し、今後は期待される分野であることを示している。
日本の商品は海外からも機能的にもデザイン的にも高く評価されており、このコロナ禍の活路として、越境ECで海外に販路を拡げ、事業を拡大する今が商機と言えるだろう。
参考:経済産業省「令和元年度内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査)」より
図などは、調査書より抜粋し作成した
タグ: EC, Eコマース, アメリカ, 中国, 海外販売, 越境EC