越境EC事業者必見 海外で自社ブランドを守る商標登録の方法

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cotobox株式会社が、2021年2月16日~2021年2月18日間、越境EC事業者101人を対象に「越境EC事業における商標に関する実態調査」を行った。
その結果、越境ECで自社ブランドを海外販売する際に、販売国で商標を事前に申請しなかった人は、64.4%もあることがわかった。
そして、越境ECを行う際に商標登録の事前申請の必要性を感じている人は、約9割も存在することが、アンケートによりわかった。
越境ECで自社ブランドを拡大するには、海外商標登録は必須だが、越境EC事業者の6割は、その申請を行っていない。
今回は、この海外商標権に関する取得のメリット、必要性、海外商標申請の方法な、活用できる補助金について整理した。

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上の図は、cotobox株式会社が行った、「越境EC事業における商標に関する実態調査」の中の越境ECで商標を事前に申請したかどうかに対する回答である。申請していない(18.9%)、一部の商品のみ行った(45.5%)を合わせると64.4%が申請されていないという結果となっている。

■CONTENTS
  • (1)商標登録のメリット
  • (2)海外販売での商標登録の必要性
  • (3)海外販売で海外商標を申請するには
  • (4)各国別の商標を出願する方法
  • (5)マドプロ出願を利用する方法
  • (6)海外の商標登録に係る費用(7)中小企業等外国出願補助金

(1)商標登録のメリット

商標とは、自社の取り扱う商品を他社のものと区別するために使用するマークのこと。
マークは文字、図形、記号、立体形状、または、それらを組み合わせたもの。さらにそれらに色彩も加わる。
最近では、これらマークに加え、音、輪郭の無い色彩のみなど、新しいタイプの商標もあり、それらを保護するため、日本でも2015年より導入されている。
商標権とは、自社の商標(マーク)を保護する権利である。
そして、商標権を取得には様々なメリットがある。
商標を申請登録すると、商品には商標を使用でき、ブランドの拡大、つまりブランディングが可能となる。
つまり、商標を登録申請、取得すれば、商標権が発生し、その商標は登録した企業でしか使えない。
もし、他社がその商標を使った場合、使用を停止、損害賠償の請求することができる。
逆に商標権がない場合、他社がその商標を登録し取得されると、以後、元は自社の商標であっても、その商標は使えなくなる。
商標権を取得することで、このようなトラブルを未然に防ぐとができる。

今回のアンケートにも、商標権が問題になったこと(66.7%)や、現地会社から商標を取られた(40.7%)、海外から商標問題で撤退した(37%)など、商標権を取得する重要性が浮き彫りになっている。
以下は商標権問題についてのcotoboxのアンケート結果である。

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(2)海外販売での商標登録の必要性

越境ECでボーダーレスな商品販売を行う場合、企業ブランドを強力に支えてくれるのが商標権である。これは、国内同様、海外においても同じである。
まず、模倣品の取り締まりを行うには商標登録、取得してないとできないし、自社商品が偽ブランド、模倣品等によってシェアを奪われることもある。
粗悪な模倣品等によって正規品のブランドイメージが貶められたり、粗悪な模倣品の製品事故により正規品の信頼まで失われるといった事例もある。

さらに、商標権がない場合、模倣品等による影響を受けるだけでなく、逆に同じ名前を先に商標登録されてしまった結果、商標を取られることもありうる。

海外進出を行うのであれば、このようなトラブルは避けたいところだ。
海外販売を実施しブランドの拡大、浸透を図るうえで、ビジネスを予定通り進行させるためのリスク管理を万全に行う必要から、商標登録、取得には大きなメリットがあるだろう。
それでは、商標申請はどのような方法で行われ、費用はどの程度かかるのだろう。
次に整理した。

(3)海外販売で商標を申請するには

商標は国・地域ごとにあり、先にも述べたように、商標登録、取得により、自社の商品認知を広めたり、商標登録がなされていなかったために起こりうる、様々なトラブルを未然に防ぐことができるだろう。

原則として、商標登録は、国・地域ごとに行わなければならない。
登録を受けるには、おおよそどの国・地域でも、出願し、審査を経て、登録を受けるという一連の流れがある。

そして、海外販売の際の商標登録には、2つの方法がある。
一つは、販売する商品の商標を各国別に出願する方法。
これは、それぞれの国の特許庁に、国別に直接出願を行う方法である。
もう一つは、マドリッド協定議定書に基づき出願する方法。
これは、国際登録出願と呼ばれ、手続きは日本の特許庁に行うものである。

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では、次にこの各国別に直接出願と国際登録出願(マドプロ出願)の違いについて見ていこう。

(4)各国別に商標を出願する方法

各国別に商標を出願する方法は、各国・地域の特許庁に各国の特許事務所、法律事務所など代理人を通して出願するやり方である。
企業・個人の場合は、海外の商標専門の法律事務所などコンタクトをとって行うことになるが、この場合は日本の専門法律事務所から依頼するな場合が多い。
ポイントは、各国・地域の特許庁へ直接、申請を行うのではなく、現地代理人を立てて行うところである。したがって、現地代理人経費が必須ということと、ある程度の時間を要するところである。
下はそのプロセスを図にしたもの。

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(5)マドプロ出願を利用する方法

現在、マドリッド協定議定書(以下、「マドプロ」)の締約国は106カ国あり、その中から権利を取得したい国(指定国)を指定することにより、複数国に同時に出願でき、そして、同等の商標権効果を得ることができる制度がある。
この「マドプロ」を利用し、一カ国ではなく、同時に複数の国・地域に出願する方法をマドプロ出願と言う。

マドプロ出願は前述した、各国別に行う出願制度に比べ、簡単な手続きでスピーディーに世界各国に同時に商標の保護を求めることができる。

マドプロ出願のプロセスは、出願人が自国の特許庁に、書式は英語になるが出願する。出願書類は1通で、その1通を作成することで、指定した各国に対応可能である。
各指定国を提出すれば、特許庁から『国際事務局(WIPO)』を経由して保護を求める国(指定国)に通知され、各国にそれぞれ個別に商標出願した場合と同様な扱いとなるのである。
指定可能国・地域は、106カ国あり、越境ECで扱われるアメリカ、中国、香港、インドネシア、韓国、イギリス、フランス、ロシアなど国・地域のほとんどをカバーしている。
下はそのプロセスを図にしたもの。

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■マドプロ出願の様々なメリット

マドプロ出願を行うためには、基礎となる商標が日本国特許庁に出願、もしくは登録されている必要がある。
そして当たり前だが、商標(マーク)が同一でなければならない。
マドプロ出願のメリットは、書類作成が簡単で英語のみの記述ですところ。また、複数国申請する場合、各国毎の言語で書類を作成する必要が無い。
したがって、その分経費が節減できる。また、審査期間が、国際事務局の通知日から1年以内に制限されている。
さらに、最初の出願指定国から、事後においても指定国を追加したり、新規加盟国に対しても保護の拡張をすることが可能である。

【マドプロ出願のメリット】
  1. 出願書類の作成が簡単
  2. 経費の節減
  3. 迅速な審査
  4. 事後指定による権利の拡張

 

マドプロ制度に関する詳しい内容は下記サイトを参照いただきたい。

 

(6)海外の商標登録に係る費用

■各国別に商標出願の場合

各国別に商標出願を行う場合は、日本の法律事務所など代理人を立て行った場合の必要経費は以下の内容である。

①日本の事務所の手数料
②現地国の特許庁の政府料金
③現地代理人の手数料

②と③の現地の手数料や政府料金などは、国や地域により一概には言えないが、例えば、中国などのアジア諸国であれば15万円程度から、高くても1ヶ国あたり25万円程度の費用とされている。

■マドプロ出願の場合

次にマドプロ出願の場合、出願人を日本の法律事務所など代理人を立てず、自社が行うものとして、日本の特許庁へは国際登録出願費として9000円/件が必要である。
さらに、「WIPO 国際事務局」納付する手数料として、
①国際登録基本費用
②指定する国毎の総個別費用
が最低限、必要となる。

資料によると、「WIPO 国際事務局」の手数料支払総額は約2,755スイスフラン、約320,000円程度が必要とある。

(7)中小企業等外国出願補助金

外国出願補助金とは、中小企業の戦略的な外国出願を促進するため、外国への事業展開等を計画している中小企業等に対して、外国出願にかかる費用の50%を助成するものである。
この補助金は、日本貿易振興機構(ジェトロ)と各都道府県等中小企業支援センター等が窓口となり、全国の中小企業が支援を受けることができる。

■支援の対象・要件

対象は、中小企業者又は中小企業者で構成されるグループであり、みなし大企業を除く。
また、商工会議所、商工会、NPO法人等も対象である。

以下が申請要件である。

  1. 本国特許庁に対して特許、実用新案、意匠又は商標出願済みであること。
  2. 外国での権利取得の可能性が否定されないこと。
  3. 権利が成立した場合、その権利を活用した事業展開を計画している。
  4. 外国出願に必要な資金能力及び資金計画がある。
■補助対象経費
  • 外国特許庁への出願料
  • 国内・現地代理人費用
  • 翻訳費 等
■補助上限額
  • 企業に対する上限額:300万円(複数案件の場合)
  • 特許は150万円が上限
  • 実用新案・意匠権・商標権は60万円
■補助率

補助率は1/2

■お問い合わせ先

独立行政法人日本貿易振興機構(外部サイトへリンク) 知的財産課 外国出願デスクまたは、各地域自治体実施機関へ

参考URL:「外国出願に要する費用の半額を補助します

まとめ

今回は、越境EC事業を展開、成功させるために重要な海外商標登録の方法とそのために用意されている補助金について解説した。
cotoboxのアンケートにもあるように、商標申請しなかったことによる法的トラブルは多い。それらトラブルを未然に防止し、確実にブランドイメージを拡大するためにも、販売国での商標の申請・取得し、国際競争力を高めて行っていただきたい。

参考:

 

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