12月5日、改正航空法が施行され、ドローンビジネスが日本でも本格化しそうだ。
これまではドローンに関しては実験的な試みはよく報道されていたが、進捗は微々たるものだったが、今回の改正航空法では「レベル4」の飛行が解禁となり、2023年は一気にドローンビジネスが動き出すことだろう。
今回は、ドローン解禁とも言える「ドローン飛行の規制緩和」についてと日本のドローン配送における楽天など国内企業の動向をまとめた。
ドローンを使った配送は、過疎地や離島の住民、高齢者といった「買い物難民」や配送ドライバー不足などの社会問題の解消のほか、在宅医療での医薬品の搬送や被災地への運送にも役立つことだろう。
12月5日、改正航空法が施行により、操縦者の目が届かない距離でも、ドローンを住宅地など人がいるエリア上空を自動で飛ばすことが認められることとなった。
つまり、有人地帯でのドローンの自動・自律飛行(レベル4)の解禁である。
但し、ドローンを住宅地などの有人地帯を自動・自律飛行させるには、下記(1)〜(3)の要件を満たす必要がある。
ドローンをレベル4飛行させるには、国土交通大臣の機体認証を受けたドローンを用いる必要がある。
ドローンをレベル4飛行させられるのは、国土交通大臣の技能証明を受けた者に限られる。
ドローンのレベル4飛行にあたっては、以下の運行ルールを遵守しなければならない。
今回の改正法では「機体認証制度」と「操縦ライセンス制度」を新設している。
上記内容のようにドローンは安全基準に適合した機体を有資格者が操縦し、国土交通省が運航を事前に許可・承認した場合に限り、認められるものだ。
今後は、ドローンの機体の認証や操縦士の資格取得などを経て、2023年春ごろから実用化が始まるとしている。
この規制緩和を受け、日本無人航空機免許センター(JULC)では、早くも、ドローン操縦の国家資格となる「無人航空機操縦者技能証明(一等・二等)」を取得する講習の提供を、2023年より開始すると発表した。
今回の改正航空法が施行により、物流関連企業はドローン事業化を目指す動きが活発化するだろう。
ドローンを利用した配送の大きなメリットは運送時のコストを抑えられることと、人手不足の解消だ。
これまで、いくつも企業が積極的に実証実験を行い、実用化に向けて取り組んできている。
ここでは、楽天グループなど、日本のドローン配送の取り組み動向をまとめた。
楽天は、国内ではドローン配送実証では、多くの成果を挙げている企業だ。
2016年には千葉県御宿町ではゴルフ場でのドローンデリバリーに取り組み、2017年には福島県南相馬市のローソンからドローン配送を実施。
2019年は、神奈川県横須賀市の西友から無人島の猿島への配送を行った。
2021年には、三重県志摩市のマックスバリュから、約4キロメートル離れた間崎島へドローン配送した。
さらに、今年、2022年1月には、楽天と日本郵便が共同出資したJP楽天ロジスティクスは、千葉の市街地の超高層マンションへドローン配送する実証実験に成功した。
まさに、楽天は「レベル4解禁」にむけて着々と実証実験で成果を挙げてきた。
また、楽天は2022年11月、ドローン飛行・仕事支援プラットフォーム「楽天ドローンゲートウェイ」の提供を始めた。
このサービスは、ドローンに関わるすべての人のゲートウェイとなることを目的とし、ドローンに特化した仕事支援とフライトマップなどの飛行支援の2つの機能を提供する。 このような楽天のサービスの提供は、今後のドローン市場がどれほど大きく拡大するかを示唆している。
2022年9月20日、KDDIグループとエアロネクストはドローン配送サービスの実装に向け業務提携した。
これまでも、エアロネクストとKDDIグループは、2022年3月に新潟県阿賀町においてドローン配送の実証実験を行ったり、2022年6月にドローン配送パッケージ「AirTruck Starter Pack」を提供開始するなど連携を進めてきた。
今後は、ドローン規制緩和により、来年3月までに14以上の自治体でのドローン物流実証や実装において、連携を予定している。
また、KDDIは12月5日、「KDDIスマートドローンアカデミー」を開校した。
このスクールは、国家資格として制度化された「一等無人航空機操縦士」「二等無人航空機操縦士」の資格取得コースなど、ドローンに関わる様々なコース設置し、ドローンのプロフェッショナル人財の育成に貢献するものだ。
2021年11月セイノーHDは、物流企業として初めてドローン配送を事業化した。
2022年からは専門部署を新設し、山間部を中心に食料品や生活用品を運ぶ実証実験を行っている。
2022年10月には、セイノーHD、KDDI、NEXT DELIVERYら3社により、福井県敦賀市愛発地区において、「市街地・過疎地連結型」モデルとして、新スマート物流「SkyHub」サービスを開始した。
さらに、12月13日、石川県小松市ではドローン配送を活用して中山間地域の買い物や医療などの課題解決につなげることを目的とし、セイノーHDなど3社と連携協定を結んだ。
前述したとおり、2022年1月、日本郵便は楽天と共同で千葉のマンションに商品配送の実証実験に成功した。
近々の動きとして日本郵便は、ドローン配送と自律走行型ロボット活用の実証試験を進めている。
日本郵便は2021年12月1日、東京都奥多摩町でドローンと配送ロボットを連携させ郵便物などを配送する試みを行っている。
これは、奥多摩町の山間部の集落に対して、ドローンで郵便物を空輸し、その荷物を自動配送ロボットに直接受け渡し、指定された住宅まで自動配送ロボットが届けるといったものだ。
また、12月6日には、日本郵便、日本郵政キャピタルと国産ドローンメーカーのACSLは、物流専用となる大型物流ドローンの新機体を発表した。 機体の運搬可能重量は5kg、最大飛行距離は約35kmで、両社が実証試験で使用中の機体と比べて運搬可能重量は約2.5倍、飛行距離も3.5倍に向上したとする。 この大型ドローンは、「レベル4飛行」を前提とした性能で、2023年度以降の配送実用化を目指すものだ。
ANA HDとセブンイレブンHDは、2025年度に店舗から直接、食品などを離島のお客様にドローン配送する事業化を目指している。
このサービスの実証実験は2022年10月19日~23日に行われた。 実証実験は、九州本土側にあるセブンイレブンの店舗から、博多湾の能古島(福岡市)の5つの地点の配送先へ、パンやアイスなどの食品を日没後にドローンで配送したものだ。
日没後のドローンでの配送サービス実験は国内で初めてだという。
能古島では、2019年に日用品を販売していた唯一の店舗が閉店となり、住民は船で九州本土へ船で買い物に行く必要があり、大変、不便な状況にある。
このような不便さを解消するドローン配送は、離島や山間部、過疎化が進む土地で暮らす人々には、大きなメリットとなるだろう。
今回の改正航空法により、2023年は先進国では遅れをとっていた日本のドローン配送は実用化が加速することだろう。
実際にレベル4飛行で第一号としてドローン配送を行う企業はどこになるのか楽しみでもある。
ドローン配送は、輸送時のコスト削減と人手不足の解消につながる可能性ががあり、 数年後の宅配は、陸には自動配送ロボット、空にはドローンが当たり前の時代となることだろう。
参考:ドローン「空の道」争奪 企業、食品・薬配送探る 目視せず住宅街飛行「レベル4」解禁