日本の国内EC市場は成熟期といわれるなか、越境ECつまり、海外向け商品販売はまだ、黎明期と言われている市場である。少子高齢化により縮小しつつある日本の消費市場から、販路を海外に向け、越境ECに取り組む企業が増えている。日本にいながら、リスクを最小にし、商品を海外にネット販売するのが越境ECである。
今回は、日本から海外販売で、動向が顕著な中国と米国の越境ECに関する市場動向などを整理してみた。
越境ECの伸びは、訪日外国人旅行者数の伸びに関係があるという説がある。理由のひとつには、日本に訪れた観光客が商品に興味を持ち、購入後、帰国した後で、もう一度、その商品を越境ECを利用して買うという消費行動が消費を押し上げていると言われている。
訪日外国人旅行者数は2014年で約240万人にのぼり、2013年の約1.8倍となっている。訪日外国人旅行者数は年々増加しており、政府は2020年のオリンピック開催時には2000万人を目標としており、今後はさらに、訪日外国人旅行者数と比例するように越境EC市場規模の拡大が期待できる。
中国の越境ECユーザーは若年齢・高学歴・高収入・1級都市がキーワードだ。ユーザーのメインが若年齢(25歳~35歳)であり、さらに大学卒・大学院卒が75.5%を占める。月収は5001人民元の割合が58.5%で、ユーザーの居住区は北京、上海、広州の3都市の割合が39.5%占め、一級都市に多いという結果となっている。
また、中国ユーザーは購買力が旺盛である。特にプロモーションに対する反応が高く、たとえば一定金額以上の購買価格に送料無料の施策では、その条件を満たす買い物をするユーザーが多くみられる。
中国越境ECユーザーは国内ECでは偽物が混在し、品質が必ずしも良くないことを分かっている。自国の商品レベルと海外製品との間に差異を感じており、高い関税や送料を払ったとしても、安全で品質の良いものを求めて越境ECを行っている。
IReaserch社(2013)の調査によると越境ECでの購入商品は「衣類・靴・アクセサリー」が16%でトップだ。続いて「化粧品・スキンケア」の12.9%、「ベビー・マタニティ用品」の12.6%、「IT関連商品」9.4%、「デジタル製品」7.7%、「食品・健康食品」の7.1%などとなっている。
消費の傾向は「化粧品・スキンケア」、「ベビー・マタニティ用品」などの日用品の割合が高いということである。口に入れるもの、肌に触れるものなどの安全性の意識が高まりとともに、クオリティの高い海外の正規品を買い求めているといえる。中国ユーザー向け越境ECでは正規品であること、購入後の保証をアピールすることが重要である
2014年の米国の年末商戦期の小売売上高は6161億ドルとなり、そのうちのネット通販は1019億ドルと初めて1000億を突破した。ネット通販の割合は小売り全体の17%を占めている。
それでは、米国越境ECユーザーの特徴はどのようなものか。まず、総じて所得が高く、ITリテラシーが高く、購買力が非常に高いという傾向がある。
米国人の消費者行動は、バーゲンやクーポンを良く活用する節約タイプが多く、ブラックフライデー、サイバーマンデー、クリスマスセールなどのバーゲンに刺激され、消費を牽引している。
消費者保護の利権が強い米国では、「返品の送料が無料」というサービスが購買を促すための条件となる。したがって、米国向け越境ECを開設する場合は、返品コストを見込んで商品価格を設定すべきである。
米国の大手ECプラットフォーマーの調査によると、越境ECでの人気商品は「衣類・靴・アクセサリー」33%でトップだ。続いて「娯楽商品(デジタル除く)」24%、「旅行関係」17%、「玩具・ホビー商品」17%、「電子機器」16%となっている。
米国では中国と同様に、衣類・靴・アクセサリーの購入が多いことが見てとれる。購買の特徴として日用品などより、国内ではあまり入手できない趣味でコレクションしたい嗜好品に人気があるようだ。
中国と米国の越境ECはGDP同様に1位、2位の市場規模を競っている。越境ECではこの2国をしっかり抑えておくことが重要である。2015年も中国人観光客の“爆買い”に象徴されるように、もっとも大切なお客様と言える。
今、越境ECのニーズは確実に高まっている。販路を国内だけではなく、海外に販売を拡大するには、両国のニーズをしっかり掴むことが第一歩である。
訪日外国人旅行者数が増加し、越境ECの消費が増えているトレンドは2020年のオリンピック開催まで同様に増加する傾向にある。
今こそ、越境ECを始めるチャンスである。
出典:経済産業省 「電子商取引に関する市場調査」より
越境EC構築・海外販売:「Live Commerce」
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