歴史のページに残るだろう、激動の2020年が終わろうとしている。
2020年、現在、日本では新型コロナの感染拡大による未曾有の試練が今もなお続いている。
このコロナ禍の中にあって、2020年、Eコマースは大きく成長した。
これまで、ECサイトを利用していたユーザーのみならず、高齢者や10代の若者まで利用の増加が見られた1年だった。
さらに、コロナ禍の影響から壊滅的だったインバウンド需要から、相対して越境ECから日本の商品を購入するという動きも特質すべき点である。
「BEENOSの調査」によれば、越境EC流通総額は過去最高を記録したと公表されている。
今回は、今年大きく拡大した越境ECの動向を踏まえ、来年はさらに拡大するだろう越境EC、その事業者が取り組むべき、「モバイルコマース」、「ライブコマース」、「ソーシャルコマース」など5つのポイントについて見ていこう。
今やネットショップの利用はモバイル端末が主流となっている。
ペイパルの調べによると、買い物にモバイル端末(スマホ/タブレット)を利用する割合が最も高かったのはインドの88%、次いでブラジルとメキシコが共に76%、日本はイギリス、オーストラリアと同じ73%となっている。今やEコマースはモバイルでの購入が当たり前時代になっていることを事業者は認識しなければならない。
そして、来年5月にはGoogleはモバイルファーストインデックスに「Core Web Vitals(コアウェブバイタル)」が追加されると予告している。
(Core Web Vitalsの詳細はこちらのブログで解説)
つまり、モバイルでのユーザー体験が重要な指標となるのだ。
越境ECサイトも当然、モバイル最適化に対応が迫られるだろう。
越境ECのモバイル対応で重要なのは、海を越えての表示速度である。
Googleの「Core Web Vitals」では表示速度が重要視されるため、それらを改善する「AMP(Accelerated Mobile Pages)」と「PWA(Progressive Web Apps)」の活用を検討すべきだろう。
AMPとは、モバイルのWEBページを高速化するためのもので、PWAはモバイルのWEBページでネイティブアプリのようなUXを提供するためのものである。
どちらも、Googleが主軸となって策定している、モバイルページを進化させるためのプロジェクト及び技術である。
これまでAMP、PWAは、ニュース系サイトを中心に対応を推奨されていたが、近年は大手ECも対応し始めており、2021年、越境ECサイトはこの「表示速度最適化」を実施するメリットは大きいだろう。
遅延による越境ECユーザーを取りこぼすことのないよう、いち早く、越境ECサイトのモバイル最適化のための取り組みを行って欲しい。
中国ではコロナ禍の中、ライブコマースの存在感が強かった1年だったと言える。
中国の618セールやW11セールでは、店頭販売員はもちろん、KOLや芸能人、そして企業CEOまでネット上でライブ販売を行うなど、EC業界のトレンドとなった。
(中国ライブコマースの詳細はこちらのブログで解説)
W11では、日本ブランドも越境ライブコマースを活用し、ビューティーやファッション商品を販売し、売り上げを上げた。
越境ECでライブコマースを行うメリットは、ブランドの信頼価値、安全性にあるだろう。
なぜなら、海外消費者がはじめて、日本の商品を購入する場合、商品品質や金額、決済、配送、販売会社を信頼できるかなどの不安があるものだ。
越境ECサイトの場合、それら事情であと一歩のところで敬遠している海外消費者も多い。ライブコマースはそういったユーザーに対して、動画により実際の販売員やCEOらが顔を見せ、商品の品質を試し、同時に決済、配送など内容を説明することで、越境ECを身近に感じ、ブランド力も向上する。
今年9月、(株)アイスタイルはライブコマースを軸とした、新サービス「越境MCN」の運営を開始した。
これは日本から中国消費者に向けて美容ブランドの商品をPRするもので、アイスタイルは今後さらに、中国市場においてライブコマースにより事業拡大を目指している。
また、アメリカではGoogle、Amazon、Facebookが2020年、相次いで、ライブコマースに関するサービスを公開している。
2021年はこれらGAFのライブコマース機能を活用し、店舗販売員やインフルエンサー、YouTuberなどの動画により、頻繁に商品販売を実施されることが予想される。
「ソーシャルEC」もライブコマース同様、中国で急成長している。
これまでのSNSはECサイトへの集客手段やブランド認知としての活用が主だったが、ソーシャルECでは、単なる情報手段としてだけでなく、商品の販売からユーザーの決済まで、ECサイトとして、SNSが活用されるというものだ。
Instagramで見つけた商品を、そのままECサイトへ遷移することなく、商品購入できるというもの。
つまりSNS上で商品販売ができることになる。
EC事業者にとっては、販売チャネルがひとつ増えたようなものだ。
(ソーシャルECの詳細はこちらのブログで解説)
中国では、「オンライン上の誰かと一緒に買うと安くなる」仕組みの共同購入できたり、売り手と買い手が動画とコメントを通して交流できるライブコマースなど、SNSからそのままものが買えるソーシャルECは、オンライン小売全体に占める割合が11.6%に拡大している。
今年、日本では電通がソーシャルECに特化したプロジェクトを立ち上げた。
このプロジェクトは、ソーシャルECでのコンサルティング・施策設計・運用に関してのソリューションを提供するというもの。
そしてSNSの代表格、FacebookやInstagramなどはチェックアウ機能の提供を開始した。
2021年はアフターコロナから、オンラインビジネスは拡大し、SNSは単なるマーケティングチャネルとしての活用以外に、ECチャネルとしても、活用されることが多くなるだろう。海外販売においても「SNS×EC」販売チャネルの準備が必要である。
「ダイナミックプライシング」とは、需要と供給から商品の価格を変動させることを指す。
小売業界では、このダイナミックプライジングは以前から行われており、その日に売れ残った弁当などに半額シールを貼るなどの時間内タイムセールがそれにあたる。旅行業界でも、シーズンオンとオフで価格変更を行うなど馴染みがあるだろう。
現在は、手作業によるダイナミックプライシングが主流な中、旅行業界以外のEコマースにおいても、この「ダイナミックプライジング」を、リアルタイムの需要と供給の状況を把握しながら、素早く価格変動を消費者に伝える取り組みが来年は増加するだろう。
今年5月、ディノス・セシールとブレインパッドは、通販ブランド「セシール」のECサイトにおいて、ダイナミックプライシングの実用化に向けた取り組みを発表した。
これは、アパレル業界の「在庫過剰・衣服ロス」を解決する「需要と供給に応じて価格を変動させるダイナミックプライシングの実用化に向けた取り組み」として行われた。
セシールではこれまで、販売担当者の経験、ノウハウに基づき価格変更(値引き)のタイミングや値引き率などを設定していた。
だが、適切に需要を捉えきれずに在庫が残るという課題があり、その解決に向けて本格的にデジタルデータによるダイナミックプライシングの手法に着手した。
このダイナミックプライジングの独自モデルは、ブレインパッドが担当開発し、これまで、一定の売り上げアップ、利益の改善などの効果を上げているという。
海外では、すでにさまざまなソリューションが提供され、APIやCMSで容易に連携することが可能となっている。
越境ECにおいても、商品ページ訪問者数、在庫数、配送料、仕入れ価格、人件費の変動によるダイナミックプライシングにチャレンジしてみてはどうだろう。
越境ECにおいても、最適な販売価格を決める数理最適化アルゴリズムの開発、そして導入は越境ECサイトの収益を最大化する大きな武器となるだろう。
最後は、近年特に重要となっている、企業の「サステナビリティな取り組み」についてだ。
「サステナビリティ」とは、自然環境や人間社会などが長期にわたって機能やシステムを失わずに、良好な状態を維持させようとする考え方であり、企業はこのサステナビリティに向けて取り組むことで、企業は環境に寄与しながら、事業を続ける意思表明となる。
日本でも、「サステナビリティな取り組み」は大手企業単位で、さまざまな取り組みが実施され、浸透してきているが、これからはEコマース、越境ECにも「サステナビリティな取り組み」が求められるようになるだろう。
Amazonは「サステナビリティへの取り組み」として、2019年9月19日、パリ協定の2050年目標達成を10年前倒しした気候変動対策に関する誓約「The Climate Pledge」 を発表している。
主な事項として「2040年までに炭素ゼロ化を100%達成」、「2025年までに再生可能エネルギーの電力比率を100%に到達」、「Amazonの全配送に関わる炭素ゼロ化」「電気配送車の10万台購入」である。
今年7月にはアスクルの「LOHACO」において、サステナブル消費対応の「エシカルeコマース」を開始した。
「エシカルeコマース」とは商品の廃棄ロスの削減し、購入しやすい価格での販売を実現するというもので、「LOHACO OUTLET」で本格的に開始している。
また、Eコマースではそもそも多くの包装資材や輸送を必要とするが、この包装方法ににおいて、環境への取り組みを始めるべきである。
梱包材をより、環境に優しくサステイナブルな成分のものにする。さらに、リサイクル可能な材料で過剰な梱包は改善するなど実施すべきだろう。
2021年は越境ECにおいても、梱包箱の軽量化とエコ資材、出荷時のコスト削減は対応すべき取り組みである。
アメリカの『Digital Commerce360』とBizrate Insightsが、8月に1,141人を対象に行った消費者調査では、37%が「環境に配慮した配送や梱包に多くのお金を払いたくない」と考えているが、その一方で、30%は「環境配慮に対して多くのお金を払っても良い」と考えていることがわかった。
Eコマースにおける商品に合わせた適切なサイズの梱包とリサイクル材の使用は、環境に配慮したビジネスの取り組みであり、これらを実施する越境ECサイトは大きな信頼、信用につながることだろう。
2020年は新型コロナ禍により、消費者のECサイト購買習慣を加速させ、Eコマースは40%以上成長した。この成長率は20年以上の速さに匹敵するという。そして、これらは少なくとも2019年には誰も予測できなかったことだ。
この予測を超える時代、越境ECは、これまで以上に変化を先取りし、素早く時代に順応し、越境EC購入者にしっかりと対応しなければならない。
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