日本貿易振興機構(ジェトロ)が日本企業1万3,503社を対象に行った「2020年 日本企業の海外展開に関するアンケート調査」によると、越境ECの販売国として最も多かったのは、中国向け越境ECが47.3%、次いでアメリカ向け越境ECが36.6%、さらに台湾が28.8%と続いている。
また、今後の越境EC販売国として重要視する国としては、中国向けが46.3%と最も高く、中国は越境EC市場として存在価値が高いことが明らかとなっている。
そして、今年3月17日に経済産業省・中国経済産業局が公表した「令和2年度Withコロナ時代における中国地域の越境EC事業に関する調査」によると、中国向け越境ECを開始した企業は2020年が46.2%と最も多くなっていた。
この報告書は、中国、アメリカなどを中心に越境ECに取り組んでいる事業者を調査結果をまとめたものである。
報告書では、中国向け越境EC事業を始めたきっかけ、商品単価、販売月商、中国越境ECのメリットや今後の課題など、越境EC事業者の生の声が統計となって表れ、今後、中国向け越境ECを始めようと考える事業者にとって、とても参考になるものである。
今回は、この経済産業省・中国経済産業局の「中国向け越境EC事業の調査報告書」の内容を見ていこう。
経済産業省・中国経済産業局の「令和2年度Withコロナ時代における中国地域の越境EC事業に関する調査」は、中国向け越境ECに取り組んでいる企業、30社を対象に2021年2月3日〜3月3日間に郵送によるアンケートとヒアリングにより、その調査内容と結果を3月17日に公表したのものである。
アンケート調査では、中国向け越境ECの取り組み状況や課題、支援ニーズなどが明らかとなっている。
以下にその主な内容をピックアップした。
中国向け越境ECの実施状況を見ると、「現在実施している」が66.7%、実施していたが取りやめたが、20%となっており、実際に中国から撤退する企業が2割程度あることがわかる。
取りやめた理由としては、コスト面や費用対効果を勘案したから、という回答が多い。
また、中国向け越境ECを開始時期を見ると、2020年の46.2%と最も多い。そして、2019年、2018年が同率で、中国向け越境EC開始は意外と新しいことが示されている。
2020年に越境EC開始が多くなったているのは、やはり昨年からのコロナ禍で、インバウンドが減少する中、中国向け越境ECに販路拡大の取り組みとして始めた企業が多かったのかもしれない。
中国向け越境ECでの利用サイト(複数回答)では、「その他中国のECモール」が46.2%と最も多く、次に「天猫(Tmall)」の38.5%、「京東」の23.1%、さらに「日本の自社サイト」の15.4%となっている。
中国向け販売では、自社サイトでの運用は低く、中国においては、中国国内にある様々な越境ECプラットフォームを利用し、自社製品を販売している実態が明らかになった。
また、中国向け販売商品については、飲食料品(調味料や酒類など)や衣料品、化粧品、健康食品といった、日本国内での主力商品を中国に販売しているケースが多いと報告書にある。
主力商品の単価は、「500円未満 」と「1,000円以上5,000円未満」が30.8%の同率で最も多い。
次に「5,000円以上10000円未満」と「10,000円以上50,000円未満」が15.4%と同率である。また、「500円以上1000円末満」が7.7%の順である。
中国向け販売の商品単価は、比較的単価の小さい商品が多い現況がわかる。
さらに、中国向け越境ECの月商については、「50,000円未満」が53.8%と最も多く、次に1,000,000円以上が23.1%と両極に割れている。
月商50,000円以下が多くなっているのは、中国向け越境ECを始めたばかりの企業が多くあることから、月商が少ない状況になっているではとの見方が示されている。
中国向け越境ECを開始したきっかけ(複数回答)については、「元々越境ECに関心があった」が最も多く38.5%となっている。
次に「支援業者のサポートが受けられるのを知ったから」が30.8%と続き、中国向け越境ECの始めるには、何らかの形で支援サポートが必要なことも示されている。
また、中国向け自社商品の強みに関しては、「品質が良い」が76.9%と最多で、「日本製」が61.5%との回答が目立っている。
中国向け越境ECのPR戦略では、日本製ということ、さらに、その商品品質の高さをアピールするのが効果的としている。
中国向け越境ECのメリットについては、販路拡大が69.2%と圧倒的に多い。
次に、「中国での販売が手軽にできる」と「中国での本格的な販売に結び付く」が30.8%と同率であった。
越境ECを通じてのブランド認知に成功すれば、本格的な中国輸出事業としての取り組むスタンスも考えられるだろう。
また、「日本で売れなかった商品が売れる」や「国内販売の減少をカバー」、「訪日中国人の減少をカバー」などが7.7%となっており、中国向け越境EC開始のメリットは様々あることも読み取れる。
中国向け越境ECの課題については、マーケッティングが50.0%、各種管理手続きが17.6%、コストと知財制度が同率の11.8%などとなっている。
中国に限らず、アメリカ向け越境ECでも、このマーケッティング施策が課題である。
越境ECの課題は、集客、販売プロモーションなどをどのような戦略で行い、販売に結びつけるかが、越境ECビジネスで成功するポイントと言っても過言ではない。
次の中国向け越境ECの具体的課題においては「プロモーション」が61.5%と圧倒的に高く、これに次ぐのが「消費者ニーズの把握」で30.8%、さらに「ランニングコスト負担」、「商品開発」、「知財保護」が同率で23.1%となっている。
越境ECは、サイトを構築または、進出国に出店、出品して終わりではない。
現地消費者のニーズを把握し、認知度の向上させるためのマーケティング施策が重要である。
中国におけるマーケティングについては、現地で開催される見本市に積極的に出展したり、WeChatなどSNSを通じた情報発信、さらに、インフルエンサーやKOLを活用したマーケティングを実施する必要がある。
今、中国向け越境ECにおいては、国内の支援事業者や他企業のアプローチなどをきっかけに販売拡大、中国での認知度向上など、越境ECビジネスへの参入の動きは拡大しつつある。
一方でまだまだ、「越境EC」と言うワードの認知度は低いという現実もある。
3月1日、日本の「メルカリ」が、中国「アリババ」と提携した。
日本の個人商品が、中国や東南アジアなどでも販売されるようになれば、「越境EC」という海外に販路を広げるビジネスも一般化するだろう。
そして、今は、越境ECビジネスの認知度は低いが、越境BtoC、越境CtoCは中国、台湾、東南アジアを中心に大きく発展する可能性が高い。
まだまだ、日本製品は海外では品質が高く、ブランド力もある。
国や地方自治体においても、企業の販路拡大、海外向けEC事業に対してサポート支援を行うことが求められてる。
参考:
経済産業省・中国経済産業局「令和2年度Withコロナ時代における中国地域の越境EC事業に関する調査」報告書」