爆買いに沸いた「インバウンド」祭りは終わった。今後成長が期待される「越境EC」とは?

越境ECを理解する前に訪日外国人の増加背景を理解しておきましょう。
特に中国人による「爆買」や「インバウンド」といったキーワードにまつわるビジネスは2016年8月を最後に株式相場も実際のリアル店舗でもお祭り騒ぎを終えて新鮮味がなくなっています。これは訪日外国人による不買運動ではなく、特定の個人が炊飯器や水筒を何個も買う爆買いブームが終わったということを意味しています。これは銀座やお台場にある観光客向けの免税店に行くとよくわかります。

そこで、改めて注目したいのが海外向けの「越境EC」です。「越境」は国をまたぐ、「EC」とは「Electronic Commerce」、つまり電子商取引のことなので、「越境EC」とは国をまたいだ電子商取引を意味しています。要するに海外向けネット通販のことで、「インバウンド」に対して「アウトバウンド」ともいえます。

私はこの越境ECを提供する事業者の立場から、越境ECに挑戦しようと検討中の方や、海外取引に興味はあるけれど、よくわからない?という初心者向けに、「なるほど!」と納得できるように、できるだけ専門用語を使わずに越境ECについて解説します。

なぜ越境ECが改めて注目されているのか?

越境ECが注目されるようになったのは2つの面から理由があります。
1つ目は日本国内側の社会的課題としてピックアップされる少子高齢化・人口減少社会の到来における、未来への投資という背景に基づいています。日本は2008年に人口のピークを迎え、それ以降は人口が減少に転じています。長びく国内経済の景気低迷にあいまってこの30年は消費動向が横ばい気味です。そこで企業は海外に販路拡大を見出すという戦略からから越境ECが注目されました。


出典:2010年までは総務省「国勢調査」(年齢不詳人口を除く)、2014年は総務省「人口推計」

2つ目は当たり前と言えばそうなのですが、、今日ではインターネットは生活に欠かせないインフラとなっています。スマートフォンの普及もあいまってショッピングから金銭の受領に至るまであらゆるシーンでインターネットは必要不可欠な社会的インフラであり、每日使われています。こうした背景によりショッピングでも国内だけではなく国外の通販サイトからも購入する動きが2008年ごろより高まりました。各国のインターネットにまつわる法整備なども着々と進み、また越境間取引におけるさまざまな消費者向けサービスが拡充したことからも、越境ECにおける年間取引額は増え続けています。

米国と中国が日本の越境ECを牽引している

では、実際にどの国から日本の商品を買っているのか現実を見てみましょう。
経済産業省が公表した「平成27年度電子商取引に関する市場調査」から、世界のEC市場の状況を確認すると、2015年の各国のEC市場そのものの規模(旅行・チケット除く)において、日本は896億ドル(2015年の平均為替レート約120円換算で10兆7500億円、以下同様)、米国は3406億ドル(40兆8700億円)、そして中国は6720億ドル(80兆6400億円)です。米国は日本の約3.8倍、中国は日本の約7.5倍ですでに巨大市場ですが、さらに2020年には200兆円に達するとの予測もあります。


出典:経済産業省「電子商取引に関する市場調査」(2014年8月) 画像:事業構想

次にインターネット人口ですが、日本が約1億人、米国は約2.8億人、中国は6.7億人であり、ここでも中国の数字は巨大です。ただしインターネット普及率で見ると、日本、米国はすでに80%を超えていますが、中国は49.3%といまだ50%を切る水準となっておりまして、これからも所得やインターネット環境が向上すれば、インターネット人口はさらに増加し、越境ECを利用する見込み消費者として将来性が高いと期待できます。

現実的に越境ECを事業としてどう取り組むべきか ?

国内ECならネット通販の比較サイトへの出店や、Amazon・ヤフーショッピングなど売り場はたくさんありますし、その道に長けたネット通販を専門とするコンサルもいますよね。

しかし、越境ECとなると売り場は海外ですから、国内のように情報量も専門家も極端に少なくなってしまい、事業としてどうやって取り組んでいこうか、、悩むところです。そこで本日は越境ECを体系的に理解できるコンテンツを用意しました。

よく、越境ECというと決済面・物流面・何が売れるか・販路先の国・中国向けモール出店、、、といった内容の記事やセミナーが多く存在していますが、このような知識を得たところで事業を始めるにあたってはあまり現実的ではありません。 また、越境EC関連のセミナーに参加するにしても、越境ECを体系的に理解した上で各事業者が提供するサービスが以下の示す全体フローのどの部分のポジションなのかを理解しておく必要があります。

繰り返しますが、決済面・物流面・何が売れるか云々、、をいくら知ったところであまり現実的ではありません。

越境ECの最前線ではどのような売り場で日本の商品が売れているのかを先に理解し、そこから逆算して自社の商品はどの売場が最適なのかを見極める必要があるでしょう。

越境ECを行う方法は4つの方法があります。体系的に理解しておきましょう。
★の数が多いほど出店難易度が低い

  1. 国内事業者に外注して海外向け自社サイトを立ち上げる。
    対象 : メーカー
    初期予算感 : 10万円〜200万程度
    メリット:ブランディング
    デメリット:初期費用、集客
    ★★★☆☆
    自社サイトに必要となる越境ECサイト構築・翻訳・決済サービス契約など立ち上げ初期にまとまった費用がかかります。自社サイトに海外見込み客の集客が必要となり、SNSや検索エンジンマーケティングなど一定の専門知識が必要です。しかし現実的にはメーカーにそのような海外販売の専任部署があるケースはなく、大半のメーカーが外部の越境ECサイト専門会社やコンサル会社を案件単位で使う形になります。

    この手法は小売店や問屋ではなくメーカーが対象です。いわゆるメーカーとしてのグローバルサイトの位置づけとなります。

    初期コストがかかる反面、中小機構より越境ECに係る補助金により上限100万円まで審査により補助されることからも、国策としても越境ECは推進されています。

    主体となる越境EC提供サービス : Live Commerce  マルチリンガルカート
    副次的に利用が検討されるサービス(決済): PayPal  外貨決済(ペイジェント) 中国決済
    副次的に利用が検討されるサービス(配送): 日本郵便EMS ヤマト国際配送
    海外配送代行: ロケーションズ

     

  2. 国内事業者で既に越境ECモールを運用しているサービスを利用する。
    対象 : 小売店、メーカー、卸問屋
    初期予算感 : 10万円〜30万程度
    商材:制限なし(B to C / B to B)
    メリット:集客
    デメリット:ブランディング
    ★★★★☆
    カスタマーサポート・翻訳・見込み客集客など、立ち上げにかかる大半のサービスが整っている為、在庫と輸出可能な商品が手元にあればすぐにでも参入・販売に漕ぎ着けることができます。代表的なサービスは楽天の海外版である楽天グローバルです。楽天出店企業であればオプション枠にて事業の水平展開を楽天内で行うことができます。
    また、Discovery Japanをはじめとする国内事業者による越境ECモールも近年立ち上がってきています。日本のメーカーや小売店を集め、一定の商品が集まった段階でモール化し、出店社は成約ベースで手数料を支払う形のため、リスクが少ない形で越境ECへ参入できます。
    各事業者が得意とする国や商材は異なってきます。
    特徴としては事業者は既に越境ECを始めていることであり、決済はモール側で行われ、海外配送のみ出店社が行う形式が一般的です。海外配送を自社で行うのが難しい場合はロケーションズを海外配送のアウトソースとして利用すれば実質国内取引のみで越境ECに係るすべての取引を完結させることも可能です。

    提供サービス : 楽天グローバル Discovery Japan Jzool ポンパレ CD JAPAN

     

  3. 海外事業者で既に越境ECプラットフォームを運用しているサービスを利用する。
    対象 : 個人事業主、小売店
    初期予算感 : 無料〜200万程度
    商材:流通商品がメイン(B to C)
    メリット:集客
    デメリット : 集客成約手数料
    ★★★☆☆
    世界最大規模の越境ECプラットフォームである「eBay」への出店である。元々は個人を中心に中古品の売買が行われていたが、近年は法人も積極的に出店するようになり、現在はオークション形式から固定金額で出品するショッピングモール型への変化をしてきています。

    自社サイトやモールのように集客は必要としないが、成約手数料は15%から20%と高めになります。また外貨建て売上となるため、日本円にて送金手続きをする際に円安・円高の影響を受けます。

    eBayが世界38ヶ国(現在も拡大中)で展開されていますが、中国で最大のマーケットプレイスといえば国際展猫(Tmall)です。現在、日本でも国際展猫に出店を支援するサービス事業者が存在します。

    いわゆる、現在多くの中小企業が越境ECとして参入する場合はこの3番目のやり方が最も低コストで最短で参入できるため現実的です。
    越境ECプラットフォームは米国向けに強いeBayか、中国向けに強いTmall かでやり方が分かれます。eBay出品であればほとんどコストはかかりませんが、Tmallの出品には保証金として約200万ほどかかったり、中国現地に在庫がないとNGとなることもあるため、Tmall出店についてはメーカーなどがある程度の初期費用を負担してでも自社単独で行う場合と、初期費用の負担を軽減するため数社共同出展や既に出店している企業のプラットフォームに便乗するなどの形式があります。

    提供サービスグローバル : eBay Amazon
    提供サービス中国・アジア:国際天猫 Qoo10
    eBay出店支援サービス : ネクストエンジン CrossMall Live Commerce ジャパンコンサル
    Tmall出店支援サービス : fcafe セールスインチャイナ 越境STAR

     

  4. 進出国で独自に越境ECサイトを立ち上げる。
    対象 : メーカー
    メリット:現地マーケットでの最新情報やオムニチャンネルによる販売も可能
    デメリット : 現地進出等にかかる会社設立・法務・労務面での初期費用
    ★★★☆☆
    日本ではあまり認知が進んでいませんが、現地進出の日経企業により現地オンラインモールへの出店参入をする形になると思われます。
    なを、東南アジアにおいてはLazadaが市場を席巻しています。
    以下、代表的な各国のオンラインモールです。

    中国 : Taobao JD tmall
    ニュージーランド:Trade Me The Warehouse Lazada
    ロシア:OZON Ulmart AliExpress
    シンガポール:Qoo10 ZALORA Reebonz Lazada
    イギリス:Tesco Argos ASOS
    ブラジル:MercadoLivre Submarino
    ドイツ:DaWanda Media Markt
    インド:Flipkart Snapdeal
    インドネシア:Tokobagus Bhinneka Lazada
    マレーシア:Lelong IPmart Lazada
    パキスタン:Shophive Daraz
    スペイン:El Corte Inglés
    韓国:Gmarket YESSTYLE
    台湾:Ruten SHOP.com
    ベトナム:Vatgia Lazada
    オーストラリア:Deals Direct
    イタリア:Zalando
    オランダ:bol
    フィリピン:Hallo Hallo Mall OLX Lazada
    タイ:WeLoveShopping Lazada
    UAE:Souq

 

まとめ

インバウンド祭りは2014年から約2年のうちに幕を閉じました。
1964年の東京オリンピック以降、1991年まで続いた高度経済成長で好景気に沸きました。
2020年以降、世界中でEC取引が拡大する未来を予測すれば、日本の景気を左右するキーワードに越境ECは欠かせないものとなるのでしょう。

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