11月の話題はアメリカの大統領選である。先週13日(金)、最後まで未開票だった南部ジョージア州をバイデン氏が制し、獲得選挙人を306人として当選を決定づけた。
だが、トランプ氏は選挙不正があったとし、敗北を認めず、アメリカ社会は混迷している。
バイデン氏は、「国民の勝利だ。米国社会の分断ではなく、融和を求める大統領になる」として、米国社会の分断克服を訴えた。
そして、アメリカの最重要課題はコロナ対策であるとするハイデン氏。トランプ氏のコロナ軽視ともいえる対応で、さらに、新型コロナ感染者は大きく増加している。
11月16日現在、アメリカではコロナによる死亡者は24万6,000人を超え、感染者は累計で1,120万人以上と新型コロナ感染では世界最多を記録している。
今回は、この新型コロナがアメリカECに及ぼした影響、越境ECの最新トレンドなど見ていこう。
経済産業省の報告内容によると、2019年のアメリカのEC市場規模は前年比14.9%増の6,016.5億USドル(約63兆5,030億円)となっている。EC化率は11%である。
この数値は、日本のEC市場の3.2倍であり、EC成長率においても、日本の7.65%を上回っている。
そして、今年2020年は、新型コロナウイルスの感染拡大による小売店舗閉鎖や外出禁止の広がりの影響から、急速なECへのチャネルシフトが起こり、前年比18.0%増の7,097.8億USドル、EC化率は14.5%以上に達すると予想されている。
2019年のアメリカのECでの売れ筋商材は、下図にあるように、コンピュータ・家電製品、アパレル・アクセサリーの市場規模が大きく、前年比成長率では食料・飲料、化粧品・健康食品、家具・生活雑貨が高くなっている。
EC化率は書籍・音楽・ビデオが50%超で、コンピュータ・家電製品(39.4%)、玩具・趣味(32.9%)となっており、日本と比べてもEC利用者が多い。
今年は、新型コロナ禍にあって、アメリカでは外出を控えて、自宅で過ごす人が増加し、ECによる売上げが例年より大きく急増している。
アメリカ合衆国国勢調査局とイギリス国家統計局が発表した、EC普及率に関する内容(下のグラフ)が公表されいる。
横軸は期間、縦軸は小売の売上高においてのEコマースの割合を示してしたものだ。
赤色がイギリスで、ピンクがアメリカの普及推移である。
2000年以降、Eコマースはなだらかに上昇していたが、今年の新型コロナの流行拡大により、状況は一変し、わずか2カ月でeコマース普及率はイギリスでは20%から30%以上に、アメリカも17%から22%に急増したことがわかる。
新型コロナ禍はアメリカ消費者の「巣ごもり消費」により、EC市場拡大を後押ししたが、大幅に成長したものもあれば、下降したジャンルもある。
新型コロナウイルスの影響を大きく受けているEコマースのジャンルは、以下のとおりである。
新型コロナ禍での影響で特徴的なトピックは、オンラインで注文した商品を、専用駐車場で降車することなく受け取る、「カーブサイドピックアップ・サービス」が大きく普及したことだろう。
「カーブサイドピックアップ」とは、アプリやWebなどのオンライン上で購入した商品を店舗の指定場所(主に店舗駐車場内)まで車で取りに行き、到着を知らせると、購入商品をピックアップできるというものである。
車のトランクさえ開ければ、スタッフが直接積み込んでくれるため、商品やスタッフと一切接触することなく自宅まで持ち帰ることが可能である。
車社会のアメリカならではの、新しい買い物スタイルである。
「カーブサイドピックアップ」は商品をECサイトで購入して、所定の場所で商品を受けとる「クリックアンドコレクト」として、以前から利用度は高かったが、新型コロナ禍で、食品の配達需要の増加により、一気に広がりを見せた。
下の図表は経産省の資料だが、2019年でも53%のEC消費者がクリック・アンド・コレクトを利用しており、今年は、コロナ禍で予測以上の普及率を見ることだろう。
これまで、「クリック・アンド・コレクト」は消費者がECサイト上で購入した商品を実店舗で受け取れるようにすることで、配送料を抑え、自宅配送よりも早く受け取ることができるという利点があった。
さらに、新型コロナの影響により、密となる店舗で買い物をする必要もなく、非接触でスピーディな買い物体験ができるとして、ロックダウン解除後も盛況のようだ。
次にアメリカの越境ECについて見てみよう。経済産業省の公表内容によると、中国、日本、アメリカの3国間での2019年のアメリカの越境EC市場規模は、1兆5,570億円となっている。
このうち、日本経由での市場規模は9,034億円、中国経由の市場規模は6,535億円となっており、アメリカ消費者は日本の商品を多く買っていることがわかる。
現在、アメリカのSNS普及率は2020年1月時点で70%に達しており、越境ECでの商品情報は主にSNS上で商品を発見する傾向が見られる。
越境ECの利用も、EC利用者のうち34%を占めており、日本の6%と比べると越境EC利用者の割合は高く、アメリカ消費者は海外から商品を購入することに対するハードルは低いと考えられる。
アメリカ消費者が良く利用している海外商品を購入するのに利用しているのは、アメリカ本家の、Amazonとebayとなっている。
Amazonはアメリカではブランド力が高く、商品を販売しやすいというメリットがある。すでに、日本でAmazon出品を利用していれば、そのままスムーズにアメリカへの販売手続きができる点もメリットである。多少サービス料が高くなるが、「FBA(物流に関する代行サービス)」を活用すれば、アメリカのAmazonへ商品発送などを任せることもできる。
6月24日、アマゾンジャパンでは、日本の小売事業者が海外のアマゾンのEC(インターネット通販)サイトで商品を販売するためのアカウントの作成や商品の登録を支援するサービスを開始、専属チームが日本語で各種の相談に応じるなど、越境ECに力を入れ始めた。
そして、Amazonはこの未曾有の新型コロナ禍で、2020年の第3四半期の売上高は約961億ドル(約10兆345億7000万円)と、前年同期比で37%増となった。
eBayはAmazonに次いで人気のあるECサイトである。日本にも法人があり、越境EC出店検討者向けにさまざまなサポートを提供しているのが同社の強みである。
eBayにはAmazonより、入手困難なビンテージ商品やレア商品が販売されており、低価格帯志向のユーザーが集まっている。
イーベイ・ジャパン(株)は、11月、2020年第3四半期(7~9月)に日本セラーから出品されたアイテムの販売動向を発表した。
eBayの越境ECで売れ筋商品を見ると、1位はポケモンカードゲームで日本のゲーム、アニメ・キャラクター商品は相変わらず人気が高い。
また、2位のマキタ充電式インパクトドライバや4位のローランド SP-404SX サンプラー(音響)などは、コロナ禍による自宅でも楽しめる日本の商品としてランクインしている。
また、3位ダイワの電動リールシーボーグ(釣具)などは、ここ最近、アメリカのでアウトドアアクテビティとして人気を集めているようだ。
越境ECにおいては、新型コロナの影響により、海外旅行が不可能となり、インバウンド需要は減少し、その代わりに越境ECで買い物する海外消費者が増加している。
グローバルマーケティング From Jpanの本間哲平氏によると、
「新型コロナウイルスの影響により、インバウンド需要がECに移行した傾向がある。日本に来て直接商品に触れられない反動や、巣ごもり需要や動画配信サービスの普及などにより日本のコンテンツに触れる機会が増えたことが後押ししているのではないだろうか。」と説明している。
また、11月10日、国内ECサイトの海外販売支援を行っているBEENOSグループでは、「越境EC世界ヒットランキング2020」を発表した。
今年、BEENOSグループは、新型コロナの影響でインバウンド消費が打撃を受ける一方で、越境ECは伸長しており、流通総額は前年比48.7%増で過去最高を更新した。
「越境EC世界ヒットランキング2020」はBEENOSグループが運営する、「セカイモン」の売り上げデータを元に算出された。
下の画像は公表されたものの一部だが、どのエリアでどのような日本の商品が購入されているか一眼でわかる。
集計エリアは、アメリカ、東アジア、東南アジア、南アジア、ヨーロッパエリアの5つにわかれ、日本の「おもちゃ・ゲーム」が4エリアでトップである。
次にファッション関連、自動車、オートバイ関連商品なども人気がある。
また、新型コロナ禍で「スティホーム」となり、伸び率の高い日本の商品は、「音楽」「ゲーム」などとなっている。
アメリカのEC市場は新型コロナ禍で急激な伸びをみせた。
成長率を見ても、2009年から2019年までの10年間で5.6%から16%に成長したEC市場だが、このコロナ禍の2月から4月の2カ月足らずで、その成長率は一気に27%に急拡大している。新型コロナはこの2ヶ月足らずで、これからの10年分も押し進めた計算になる。
そして、新型コロナはアメリカの買い物スタイルに大きな変化をもたらした。
これから年末となり、アメリカはホリデーシーズンに入るが、Eコマースによる新しい買い物スタイルはますます、拡大することになるだろう。
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