デジタルマーケティング会社のmeyco株式会社は4月14日、新型コロナウイルスの市況変化を踏まえた上で、海外施策、越境ECなどを実施していた企業を対象に、今後の海外展開にどのような影響があるかなど、その実態についてアンケート調査を行い、その内容を公表した。
その結果によると、88.5%は今後も海外施策を展開すると回答し、海外進出先をとして、検討したいのは、中国、台湾が選出されていた。
中国は現在、新型コロナウイルス感染症が収束に向かっていると発表してるが、この新型コロナの影響から、非接触リテール、つまりライブコマースによるEコマースによりEC消費を拡大させた。
今回は、この新型コロナウイルス拡大時に売上を大きく好転させた、中国ライブコマース事例などを取り上げる。
デジタルマーティングのmeyco株式会社は、2020年03月24日(火)~2020年03月28日(土)の間、新型コロナ感染症が海外展開事業に与える影響をアンケート調査を実施した。
新型コロナ感染症によるインバウンド需要が減少する中、海外施策を今後も実施していきたいかという質問に関しては、今後も実施したいが、88.5%と越境EC市場は、今後も安定した拡大が見込まれる結果となった。
また、海外進出で、検討している国はどこですか?という質問に関しては、台湾が33.7%でトップ、次に中国の31.7%が、東南アジアが27.9%となっている。
中国に関しては市場規模の大きさ、成長性。台湾に関しては親日的であることなどが選出理由として挙げられ、アメリカ、ヨーローパなどではなく、今後の海外展開の主となるところは、中国などアジア圏に向いているものと思われる。
また、海外施策について実施している内容についての質問については、デジタル広告がトップで47.5%。次にKOL施策が41.0%、越境EC施策が32.8%と続いている。中国、台湾へはリスティング広告よりKOL(インフルエンサー)による集客施策が重要視されている。
KOL施策への課題としては、中国では、このKOLによる集客が高騰し、浸透しているが、日本企業からすれば、KOLの効果測定が難しい点やKOL選定基準が明確になっていない点など課題として上がっている。
中国については、市場規模が大きいことなど魅力的ではあるが、日本企業としてKOLをどのように活用するのが効果的なのか、まだ課題も多いようだ。
そして、中国では、COVID-19の影響により、市況も変化してきている。
実店舗など小売り業などでは、非接触リテールによるPR・集客、つまり、動画などによるライブコマースにより実店舗の売上減少を補填している。
具体的にどのような施策が実施されたのだろうか、次にまとめた。
中国では、新型コロナウイルス肺炎については、既にピークは過ぎたとことを宣言した。
中国では新たに発病する人の数も減少が続いていることから、ウイルス流行のピークは過ぎ、経済も回復傾向にある。
しかし、外出制限、禁止などによる影響は大きく、伝統的な小売業界の客数は激減、売上が大きく下落しているなか、EC業界は比較的好調だったようだ。
中国・国家統計局によると、1~2月の社会消費品小売総額は前年同期比20.5%減の5.2兆元(約79兆円)と、COVID-19は甚大な影響を与えた。
しかし、インターネット小売額は3%増の1.4兆元(約21兆3,000億円)とプラスとなっている。
中国では感染を抑え込む為に、「非接触リテール」を徹底し、オンラインとライブコマースに活路を見出そうとした。
ここでは、中国の小売り業など実店舗社員がどのような「非接触リテール」を実施し、実店舗の減少する売上を補填していったのか、その事例を紹介する。
中国ブランド、「PERFECT DIARY(完美日記)」は新型コロナで、実店舗のほとんどが休業となったが、50店舗の社員が、WeChatのミニプログラムでライブ動画を配信した。
動画内容は、店舗商品を使いながらメイクのコツを教えたり、ユーザーからの質問に答えたりしたほか、抽選会なども行った。
この販促ライブは、EC販売を拡大させ、TMALL(天猫)では販売量の最も多かったリップグロスの場合、31万個も売れたという。
他には、クレンジングウォーターが20万個以上、アイシャドーパレットが13万個以上など、美容部員によるライブ動画は、中国の外出規制の為、外出できない多くの消費者を取り込んだようだ。
深圳市仙迪化粧品が展開するスキンケアブランド「gooben(果本)」は、3月8日の「国際女性デー」のキャンペーンとして、工場の生産ラインからのライブ動画を配信し、販促効果を高めたようだ。
社員である技術担当者が実際の工場で、商品の出来るまでの工程を解説した動画は、功を奏しECサイトの売上は600万元(約9,100万円)を突破した。
江西省の南部では南康市の家具産業がよく知られており、大手企業から中小企業までさまざまな規模の企業が6千社以上もある。
その南康市の家具販売員が、実店舗の販売下落を補完するため、ライブ配信を開始した。ライブ会場は贛州市南康区越境EC産業パークである。
ライブを配信するのは、店舗の販売員、デザイナー、伝統を受け継ぐ職人、企業の上層部など多くの社員で行われた。
展示会場はライブ配信の場と変わり、社員はネットの人気者となり、それにより、マーケットにイノベーションが起こり、オンラインによる受注件数は前年同期比50%も増加し、受注額は20億元(約309億円)を超えた。
事例にみるライブコマースは、国に店舗営業停止を余儀なくされた従業員が、オフラインを如何に活用するかと言う、従業員が発想した施策である。
通常なら、このようなライブ動画のメインは中国KOLが実施するところを、“休眠中” のリソース(社員)を活かすことでリアリティを生み出しているところが面白い。
店舗の従業員は、いわゆるプロのインフルエンサーとは違い、無名ながら、新たなインフルエンサーがSNSから続々と誕生している。
例えば、中国大手百貨店チェーン「銀泰百貨」では、1ヶ月弱の間に全国65店舗で5,000名以上の女性が、販売プラットフォームのタオバオライブのアカウントに登録し、ライブコマースによって、売上高は前年の同じ時期の5割弱をカバーしているという。
これらは、中国特有のインフルエンサーマーケティングの浸透にもよるところが大きいが、「非接触リテール」による新たなマーケティングスタイルを確立しつつある。
今回のアンケート調査によると、新型コロナウイルス感染拡大を受けても、越境ECは海外施策としても有望であることが分かった。
そして、海外施策としては中国や台湾を注視しており、中国、台湾への販路拡大にはKOLをどう活用するかがポイントのようだ。
その中国では、新型コロナの影響下にあっても、従業員によるライブコマースで、実店舗の減少した売上を、オンラインで補完するという活路を見出している。
アメリカも中国同様にフィジカルな接触が制限されるなか、ブランドと消費者の接点としてライブストリーミングと商取引機能を組み合わせた利用が増えているという。
この従業員によるライブコマースという新たなマーケティング手法は、新チャネルとして定着するか、今後に期待したい。
図表出典:meyco株式会社「COVID-19が海外施策を実施していた企業に与える影響や実態の調査」をベースに作成
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タグ: 中国, 中国越境EC, 新型コロナウイルス, 越境EC