6月24日、Googleは、ウェブ閲覧履歴を追跡するために広く使われている「サードパーティークッキー」について、2022年に停止する予定だったが、約2年遅らせ、2023年中に停止すると発表した。
「サードパーティークッキー」とは、ユーザーが複数のWEBサイトで登録した情報や検索・閲覧履歴などの情報をひとつのIDに集約したものであり、インターネット広告はこの情報をベースに広告配信など行われているものが多い。
「サードパーティークッキー」が利用できなくなるとインターネット広告やマーケティングが大きく変わることが予想されるが、その代替手段として、今注目されているのが、「コンテンツマッチング」による広告手法である。
呼び名は、コンテンツ連動型広告、コンテクスチュアル広告、コンテキストマッチング広告など様々なものがあるが、ここでは簡単に「コンテキスト広告」として、その内容を整理した。
WEB広告配信事業を展開する「GumGum Japan株式会社」のアンケート調査によると、「あなたは「サードパーティークッキーの代替手段として、どのようなものを検討し始めましたか?」という質問に関して、「ファーストパーティーデータ」という回答が最も多く41.5%となっている。
「ファーストパーティデータ」とは、特定の顧客から個人情報の利用規約への同意を得て収集したデータで、企業が社内で保有している顧客情報や購買履歴、ウェブサイトの アクセスログなど、自社で収集したデータである。
このデータには、顧客アンケート、問合せフォーム、コールセンターを通じて収集されたデータなども含まれる。
次に「ソーシャルメディア」が38.0%で、「コンテクスチュアル広告(コンテキスト広告)」が26.0%となっている。
この中で、今、インターネット広告として注目されているのが、3番目に上がっている「コンテクスチュアル広告=コンテキスト広告」である。
しかし、このコンテキスト広告は注目度はある一方、「あなたはコンテクスチュアル広告(コンテキスト広告)の使い方に精通していますか?」という質問に対して、「よく知っている」と答えた割合はわずか7.5%となっており、「なんとなく知っている」という回答を合わせても50%を超えない実態がある。
以下では、この「コンテキスト広告」について、その概要やメリットについてまとめた。
「コンテキスト広告」とは、Webページのキーワード、テキスト、画像などをAI(人工知能)が自動で解析し、ページの内容に見合った広告を掲載する手法である。
そして、コンテンツの内容、分脈に沿った、ターゲティングを行うことをコンテキストターゲティング、または、コンテクスチュアルターゲティングと言う。
「コンテキスト広告」と似たような広告ターゲティング手法として、WebサイトやWebページをカテゴライズして広告配信を行う「コンテンツターゲティング」やWebページ内に含まれるキーワードを指定して、広告配信を行う「キーワードターゲティング」がある。
そして、「コンテキスト広告」は、文脈でターゲティングするという性質から、配信先URLのフルパス分析(ページ内のすべてのテキスト情報、画像情報の分析)を行うため、「コンテンツターゲティング」や「キーワードターゲティング」に比べ、広告の内容と配信面のマッチ率が上がるというメリットがある。
それには、膨大なデータを処理するためのAI活用が不可欠である。
下に示した「コンテキスト広告」の例は「簡単なひとつのポットで作れるディナーサイト」の「圧力鍋チキンスパゲッティの作り方」というコンテンツページにある「10分で簡単にできるキノアの広告」です。
WEBサイトの内容に非常にマッチした広告が表示されているのがよく分かる。
ここでは、この「コンテキスト広告」のメリット3つをまとめた。
ブランドイメージをかたち作る広告の配信は非常に重要である。
企業はテレビCMにおいては、自社ブランドに合ってないテレビ番組にCMを流したりしない。
「コンテクスチュアル広告」は、テレビCMのように、自社ブランドに合わせたサイトのコンテンツページに広告を掲載できるのが特徴である。
WEBはある意味、無法地帯と言えるだろう。フェイクニュースなどのコンテンツやヘイトスピーチのような内容、新型コロナウイルスの感染拡大から他者を誹謗中傷するコンテンツがあったり、そのようなページに自社ブランド広告が表示されたらどうなるか?
これまで築きあげてきたブランドイメージは大きく傷つき、時には、批難の対象ともなる。
これらの広告リスク回避するため、今、多くの有名ブランド企業では、「コンテキスト広告」に配信方法を切り替えている。
GDPR、CCPA、AppleによるIDFA(広告用識別子)の規制、2023年に控えているGoogleによるサードパーティクッキーのサポート終了に見られる、プライバシー保護重視の高まりを見ると、今後、「コンテキスト広告」はさらに需要を高めると考えられる。
なぜなら、「コンテキスト広告」は「Cookie、IDFA」に依存しないからだ。
これまで関連性の高いコンテンツの識別には単純なキーワードマッチングが利用されてきたが、他のアドテクノロジーと同様に、「コンテキスト広告」のAIテクノロジーは日々進化しており、精度が飛躍的に向上している。
コンテンツの中の文脈だけでなく、その中の微妙なニュアンスやセンチメント(感情)まで、AIが理解すると言われている。
たとえば、以前であれば「このページではイタリア旅行について書かれている」しか判断できなかったが、近年では「このページではイタリア旅行での残念な体験や経験について書かれている」いうところまで、判断できるようになっている。
機械学習によってAIは、WEBページの文脈やセンチメントを、より深く理解し、ブランドのとの関連性、安全性を見極めるようにまで開発されている。
その「コンテキスト広告」のパイオニアとして、クッキーレス時代に相応しい広告の普及に向けて事業を展開しているのが、アメリカのサンタモニカに本社を置く「GumGum」である。
「GumGum」のソリューションの特徴となっているのは、文脈解析の精度の高さである。
「GumGum」は文脈をベースとして、記事の内容に含まれる「画像情報」や「キーワードの複雑な組み合わせ」などを、総合的にどのような意味が含まれるかというところまで、解析できる。
例として「ヨーロッパ旅行の記事」があった場合、GumGumソリューションでは、その内容が「ビジネスのための旅行」なのか。「家族旅行」なのか「新婚旅行」なのかというところまで判断し、まるで、人間が記事の内容を読み取り、要約するAIとなっている。
「GumGum」のソルーション実績を見ると、アメリカ「Top100ブランド」のうちの80%以上が導入しいる。
日本でも飲料メーカーやソフトウェア、自動車、化粧品、高級アパレルといった大手ブランドが、「GumGum」のソリューションを導入している。
「GumGum」では、このソルーション技術をさらに進化させ、ディスプレイ広告・ネイティブ広告・動画広告(OTT・Web)にも幅広く提供し、これまで以上にグローバル市場に拡大していく予定だと言う。
それでは、Googleは「サードパーティークッキー」を終了した後、すなわち、個人属性レベルの広告枠販売を終了後は、どのような代替手段を用意しているのだろう。
Googleは新たな方式、「FloC(Federated Learning of Cohorts)フロック」へ移行すると発表している。
フロック(FLoC)とは、利用者の行動を「群」にまとめ、その束になった「群」を1つのIDとして紐付ける技術である。
そして、そのグループと同様の行動を行う人たちをその「群」として捉え、「あなたと同じ属性を持つ人たちは次にこんな物に興味がありますよ」という広告を配信する。
クッキーとFloCとの大きな違いは、クッキーがユーザーの行動を個々に捉えるのに対して、FloCはユーザーを群(グループ)で捉えるというところだ。
クッキーで懸念とされてきた、個人情報が特定されてしまうというリスクを排除しているという点で評価できる技術だ。
だだ、否定的な意見を言うと、Flocにおいても、個人情報リスクは依然として残っており、唯一の解決策となっていない点だ。
さらに、フロックはTwitter、Facebook、LINEなどのプラットフォーマーはこのFloCについては否定的である。
さらに加えると、FloCによる行動ターゲティング、リーチと頻度のトラッキング、コンバージョントラッキング、アトリビューション分析、リマーケティング、サイトリターゲティングなど、FloCがどこまで代替手段としての精度があるのか、まだまだ未知数なところである。
クッキーレスの時代、Googleがどこまで「FloC」の精度をどこまであげることができるかにもよるが、Googleのクッキー制限が開始されたときに優勢に立つために、早い段階で準備を進めておくべきだろう。
ひとつは、「ファーストパーティーデータを最大化すること」と、もう一つは「コンテキスト広告に置き換えること」である。
「ファーストパーティーデータを最大化すること」とは、ファーストパーティーデータには、ユーザーがサイトにアクセスし、登録や購入に伴う名前や電子メールなどの個人情報の入力などであるが、これらデータをいかに有効に活用できるかである。
人工知能(AI)を搭載し、データを分析し、顧客に対する隠れたインサイトを明らかにして、正確な顧客セグメントを作成することである。
そして、同様に行うべきは、今回解説した「コンテキスト広告」に段階的に置き換えることである。
コンテキスト広告は、プライバシーフレンドリーで、ユーザーの閲覧しているコンテンツに基づいて表示される広告であり、タイムリーに把握できるユーザーの興味情報である。
このユーザーからの使用許諾を取ったユーザー情報とコンテキスト広告との組み合わせによりデータを分析・活用することが、サードパーティークッキーの制限に対応する「顧客体験向上」に向けた取り組みであると考える。
2年後のクッキー廃止となる前の、今だからこそ、自社のマーケティング戦略を見直す絶好の機会と捉えるべきである。
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