活況する中国越境ECの今

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先週、中国のECサイトが一斉にセールを行う11月11日「独身の日」は中国のショッピングサイトでは最大の商戦日だった。 中国最大手のアリババグループはこの11月11日、1日だけで、昨年は約2兆500億円の取引額(売り上げ)をあげている。今年はどのくらいの取引額があったのだろう?
また、中国のECサイト、さらに越境ECモールもこの日はセール、特売日として活況の1日だった。
2016年の独身の日では、Tmallの日本越境ECがアメリカ越境ECの売り上げを抜き1位となった年でもある。このTmallグローバルでもっとも売り上げが大きかった日本の店舗は「ムーニー旗艦店」で商品は「ムーニー紙おむつL54枚入り」でこの日だけの販売個数は60万個を上回った。
今回は、9月に発表された、中国の調査会社iiMedia Researchの調査結果などを基に、最新の中国越境EC市場などについて見て行こう。

 

●2016年の中国越境EC市場をおさらいする

まずは昨年2016年の中国越境EC市場を確認しておこう。中国消費者の越境ECを利用して日本から日本から購入した総額は1兆366億円(前年比約30%の伸び)である。また、アメリカからの購入総額は1兆1,371億円(前年比34.7%増)と日本より少々上回っている。

2016年の越境EC市場規模

中国EC利用者はEC利用のみならず、越境ECも積極的に利用している。日本の場合、EC利用する消費者の中で越境ECを利用する割合は僅か5%にとどまるのに対して、中国では26%とEC利用者のうち4人に1人は越境EC利用しているこことなる。中国では越境ECが抵抗なく受け入れられ、利用されている実態がある。

中国越境EC利用者の割合

 

●中国の越境EC利用者数とメイン利用者はどんな人?

中国越境ECの人口の増加図

2016年時点では4,100万人、2017年には5,800万人、2018年には越境EC利用人口は7,400万人二増加すると試算している。7,400万人という数値は日本のネット人口と同等の数になる。この中国越境ECはかなり大きな市場となることが予測される。
また、越境EC利用者の大部分は、上海、北京などの都市部在住の40歳未満の女性という内容になっている。

 

●2017年上半期の越境ECシェア

中国越境ECモールシェアの図

越境ECのシェアに関するデータはこのiiMedia Researchの調査以外にはなく、天猫国際(Tmallグローバル)などの業績はないため、実際のところは分からないようだ。
今回のiiMedia Researchによる越境ECモールでの最大のシェアは、網易考拉海購(Kaola.com)の24%となっている。さらに唯品国際(global.vip.com)16%などもシェアを伸ばしている。
越境ECモールシェアは、これまでの、天猫国際(Tmall Global)と京東全球購(JD Worldwide)の2強の時代から、新たなECモール利用者が増え、越境ECモールマーケットにも変化の兆しが見て取れる。

 

●日本の商品の魅力はどこにある?

どこに越境ECの良さを感じているのかの図

中国人にとって、日本の商品はどこに魅力があるのかについての回答は、「商品が本物である(36.2%)」「コスパが良い(34.5%)」が上位である。つまり中国人にとって日本の商品は”安くて良い商品”なのである。
中国では日本製品は質が良く信頼できるイメージが定着しており、さらに金額も中国人にとって高いわけではない。日本ブランド=高品質というイメージがある限り、日本製品は売れ続けるだろう。

 

●高い成長率が見込まれる対中国越境EC

今後、中国の越境ECの購買力はどのように推移するだろうか? 表を見てもわかるように、中国越境ECは2020年には2016年の1.84倍まで市場規模は拡大することが見込まれ、中国越境ECは今後も高い成長率で伸びていくことが、予測されている。

中国における越境EC市場予測

今回の様々なデータでもわかるように、中国の越境ECは高いポテンシャルを持っていると言えるだろう。
今後の高い成長率が見込まれる根拠は、

  • 中国のインターネット人口は今後も増加し、それに伴い越境EC人口も増加する。
  • 中国人の名目所得額が今後も伸びてくると予測される。
  • 物流網、国際的な資金決済など、越境ECの安心、安全なマーケットのインフラがさらに整備される。

などが挙られる。

 

●中国越境ECの新制度は、2018年末まで延長された

前回「中国越境ECにかかる関税の新税制度」で解説した中国越境ECの新税制度は、2017年末まで、延長になっていたが、さらに9月20日、中国政府商務部広報担当が、この管理規制を更に1年、2018年末までに延長と発表した。

再延期の理由は、

  • 通関の際に必要な書類が提出されないケースが多発していること。
  • 一部の商品で義務づけられている、輸入指定証取得に時間がかかる。
  • 中国越境EC利用者の中国経済への寄与を現況のまま持続させたい。

としている。

 

世界のビジネスニュース「越境EC新制度、猶予措置を2018年末まで再延長」:https://www.jetro.go.jp/biznews/2017/10/4237bb63a3339159.html

 

●まとめ

中国越境ECは2017年も、大きな成長が見込まれている。越境ECによる輸入額は前年比の54.5%増の1兆8,543億元に達する見通しである。
そして、アリババグループは今年の独身の日も前年の売り上げを前年を大きく上回る、1682億元(2兆8,600億円)の売上最高記録を達成した。 独身の日での越境EC売れ筋商品はそのまま、越境ECでの売れ筋商品となり、売り上げ総額の上昇はそのまま、中国越境ECの活況を意味する。
まだ越境ECでの売り上げやどんな物品が売れたのかなど、結果の公開はされていないが、公開され次第、紹介したいと思う。

記事参考:【最新版】中国越境EC市場&モール状況 

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