BtoC-ECというと一般ユーザーにはイメージしやすいが、BtoB-ECと言うとイメージしにくいかも知れない。
BtoBとは、企業間取引を意味し、「卸問屋と小売店・飲食店」、「メーカーと卸問屋」などの商取引で対象は法人である。
そして、この企業間商取引をネットで注文、販売するいわゆる「BtoB-EC市場」が大きく成長している。
今回は、2022年8月12日に発表された「令和3年度 電子商取引に関する市場調査」から、2021年の国内BtoB-ECの市場規模とBtoB-ECサイトの顧客満足度ランキングなどをまとめた。
2021年のBtoB-EC市場規模は、372兆7,073億円(前年比 11.3%増)となった。
EC化率は、前年から2.1ポイント増の35.6%と公表されている。
EC化率で一番高いのは輸送用機械の74.3%で、EC化率はすべての業種で上昇している。
財務省が公表した法人企業統計によると、多くの業種で2021年のBtoBの商取引市場規模は2020年の新型コロナウイルス感染症拡大の影響による減少から回復し、その結果としてBtoB-EC市場規模も増加したと説明している。
「BtoB-EC市場」はBtoC-EC市場に比べると、約19倍の市場規模となっており、今後ますます拡大が期待される。
経済産業省の調査では国内BtoB-ECを「建設・不動産業」、「製造業(6業種に分類)」、「情報通信業」、「運輸業」、「卸売業」、「小売業(6業種に分類)」、「金融業」、「広告・物品賃貸業」、「旅行・宿泊業、飲 食業」、「娯楽業」の全20業種を推計対象業種としている。
下の表は2019年、2020年、2021年の業種別市場規模をまとめたものである。
2021年の業種別市場規模では、トップは「卸売(約100.6兆円)」、次に「製造/運送用機械(約54.2兆円)」、「製造/電気・情報機器(約39.1兆円)」、 「製造/繊維・日用品・化学(約37.6兆円)」、「製造/鉄・非鉄金属(約25.2兆円)」などとなっている。
また、2021年規模が2020年から拡大した業種は、上位順に「製造/鉄・非鉄金属(24.5%増)」、「製造/繊維・日用品・化学(16.7%増)」、「その他/小売(15.0%増)」、「運輸(14.5%増)」、「サービス/広告・物品賃貸(14.0%増)」などとなっている。
J.D.パワージャパンは6月28日、「J.D.パワー2022年法人向け通販サービス顧客満足度調査」が発表した。
顧客満足度トップは「たのめーる」、第2位は「アスクル」、第3位に「Amazon ビジネス」などとなっている。
この調査では、顧客満足度に影響を与える評価項目を設定しており、評価項目に対するユーザーの評価を基に、1000ポイント満点でスコア算出されている。
評価項目は、「ウェブサイト/カタログ」、「配送対応」、「料金/請求」、「提供商品・サービス」、「サポート対応」の5つである。
第1位の「たのめーる(667 ポイント)」のスコアは、「配送対応」「料金/請求」の2項目で最高評価を獲得している。
「たのめーる」はコピー用紙やトナーなどの消耗品から文具、オフィスサプライから印刷物、生活用品、介護用品など約200万点ものラインアップで、法人・個人を問わず利用ECサービス。 強みはスコアにあるように、朝11時までの注文なら当日お届けが可能という配送対応である。
第2位はアスクルが展開する「ASKUL(661ポイント)」で、「ウェブサイト/カタログ」「サポート対応」の2項目で最高評価。
「アスクル」も「たのめーる」同様、 オフィス用品・文房具を中心に建設工具・作業部品まで豊富な品揃えでその商品数は、約800万点にも及ぶ。
強みは自社物流によるスピーディな配送と商品カテゴリ別にサポートチームが分けられ、専門的に対応されているところである。
第3位はアマゾンジャパンの「Amazon ビジネス(658 ポイント)」が獲得し、「提供商品・サービス」で最高評価を得た。
「Amazon ビジネス」は、法人・個人事業主向けの通販サービスである。
2017年9月に日本に上陸したサービスで、オフィス・飲食サービス・病院・建設・教育機関・官公庁など幅広い業種に対応した商品が販売されている。
Amazonの強みは、法人でも個人向けのAmazonで取り扱っている通常商品は、ほぼすべてAmazonビジネスでも購入できることや法人であれば、少額の商品でも送料無料で購入できるところである。
国内BtoB-ECの市場規模は、2020年は334兆9,106億円(前年比 5.1%減)と2019年を下回ったが、2021年は372兆7,073億円と増加に転じ(前年比11.3%増)とコロナ以前の2019年を大きく上回った。
EC化率も35.6%と市場はデジタル化が加速している。
これらはコロナ禍によるFAX廃止、テレワークの普及、企業のDX化などが背景にある。
今後も「2023年10月のインボイス制度の実施」により、BtoB-ECの利用はさらに増加すると考えられる。
参考: