越境EC市場はアメリカ、欧米、中国と続き、次の市場は東南アジアへと期待が高まっている。中国向け越境ECに手応えを感じ、次と市場として東南アジア進出、販路拡大を施策する企業が多い。
そのような中、3月5日、トランス・コスモス株式会社はアジア10都市を対象に行った、ECの利用実態、越境ECへの関心度などの調査「アジア10都市オンラインショッピング利用者動向調査2020」を公表した。
3回目となるこの調査、今回のテーマは「カスタマーエクスペリエンス」となっている。
内容はアジア各都市のEC体験として「残念な体験」、「嬉しい体験」などのアンケート調査である。
今回はこの調査内容のいくつかと東南アジアの代表的なECモール、「Lazada」と「Shopee」について紹介する。
トランスコスモス株式会社は、「アジア10都市オンラインショッピング利用者動向調査2020」の結果を3月5日(木)に発表した。
これは、インターネットによる調査で、アジア10カ国(日本、中国、台湾、インドネシア、シンガポール、タイ、マレーシア、ベトナム、フィリピン、インド)の10都市に住む、10〜40代の男女で、直近1年以内のオンラインショッピング利用(購入)経験者、3200人に対して行ったものだ。
このような調査は今回で3回目で、越境ECの利用状況やショッピング意識など時系列で比較可能な質問内容のほか、「ECカスタマーエクスペリエンス」をトピックスとして公表している。
調査期間は、2019年12月13日〜2020年1月7日となっている。
アジア10都市における、ECを利用して「残念な体験」のトップにあがっているのは、「届いた商品が写真と大幅に違った」であった。
ハノイ(ベトナム)の58%や、クアラルンプール(マレーシア)の55%、ジャカルタ(インドネシア)の54%などが高い数値となっている。
次に、「約束された商品の発送日・予定到着日が守られず遅れた」が、クアラルンプール(マレーシア)の52%、ジャカルタ(インドネシア)の50%などと高い数値となっている。
さらに、「サイトの画像が小さく、商品の詳細が分かりにくかった」がクアラルンプール(マレーシア)、ムンバイ(インド)の48%や台北(台湾)、ハノイ(ベトナム)、マニラ(フィリピン)が47%などとなっており、「残念な体験」の多くになるのは商品の写真に関する配慮不足があがっている。
また、次回も利用したくなる「嬉しい体験」では、トップが、「有料配送のはずが送料無料で購入できた」で、クアラルンプール(マレーシア)が78%、マニラ(フィリピン)の77%と高く、さらに「梱包が丁寧だった」もクアラルンプール(マレーシア)で60%、
マニラ(フィリピン)、ジャカルタ(インドネシア)で58%、東京(32%)と上海(42%)と「梱包が丁寧だった」は上位にランクされ、梱包の重要性を示している。
3位には「サポートが充実し、問い合わせ内容がすぐに解決した」が、ハノイ(ベトナム)の44%、クアラルンプール(マレーシア)43%となっており、東京(18%)、上海(36%)も高い数値となっている。
サポート体制がしっかり整っていることは、EC運営には重要であることがわかる。
さらに質問ではECサイトに商品の価格や機能以外に「あったら嬉しいと思うこと」ついても設問している。
アジア10都市すべてにおいてトップは「送料無料サービス」で10都市平均で69.9%と高い数値である。
2位も10都市共通で、「ポイントやクーポンなどの特典の充実」で平均54%、3位は「即日配送サービス」で、ムンバイ(インド)の34%、ジャカルタ(インドネシア)の32%、ハノイ(ベトナム)31%と即日配送を期待する声も多い。
配送無料や即日配送は、どこの国の消費者においても歓迎するサービスなのである。
アジアでの商品受け取りは宅配による受け取りが主流で、「時間指定」サービスが東京、クアラルンプール(マレーシア)、マニラ(フィリピン)、シンガポール(シンガポール)、ムンバイ(インド)、バンコク(タイ)で最も高い受け取り方法となっている。
次に「即日配送」サービスは東京、台北(台湾)、クアラルンプール(マレーシア)、ハノイ(ベトナム)、バンコク(タイ)、ジャカルタ(インドネシア)、ムンバイ(インド)によく利用されている。
また、「職場受取」や「コンビニ受取」などもよく利用されているようだ。
今年から設問に、「置き配」も選択肢として追加されたようだ。
結果を見ると、上海(中国)、台北(台湾)、バンコク(タイ)など「置き配」が、上位に上がっており、「置き配」サービスについても普及していいることがわかる。
よく利用するECサイト及びECアプリについて調べた結果によると、「Amazon」は東京、ムンバイ(インド)でトップとなっている。
「LAZADA」は、マニラ(フィリピン)、シンガポール(シンガポール)、バンコク(タイ)の3都市でトップシェアであり、「Shopee」は、台北(台湾)、クアラルンプール(マレーシア)、ハノイ(ベトナム)、ジャカルタ(インドネシア)の4都市でトップである。
東南アジア諸国はスマートフォンでのEC利用が主流となりつつあり、スマートフォン利用に特化したサイト作りを行っている「Shopee」や「Facebook」がシェアを伸ばしているがわかる。
東南アジアの人口は、中国の約半分の6億人という大きな市場であり、越境ECで東南アジアへの販路拡大は、各国の主流となるECモールへの出店を足がかりに進めるのが王道だろう。
最近では、東南アジアの物流などのインフラも整備されつつあり、スマートフォンも大きく流通し、ネットショッピングの普及はこれからますます伸びる市場と言えるだろう。
今回の調査によるとアジア10都市で利用されるECサイトはインド、中国以外は「LAZADA」または「Shopee」であることがわかる。では、「LAZADA」と「Shopee」とはどのようなECモールなのか、次に整理した。
「Lazada」は、東南アジア最大のECモールと言える。もともとは、ドイツのRocket Internet社がAmazonを模倣することによって設立し、2016年に中国、アリババがLazadaを買収している。
本社はシンガポールにあり、インドネシア、マレーシア、ベトナム、フィリピン、タイと、東南アジア6カ国で展開している。
1日のアクセス数は500万以上で「東南アジアのAmazon」とも呼ばれている。
年間売り上げは、約10億USドル(約1100億円)の「Lazada」の特徴は、出品者の利益が保護されるところや、消費者の商品注文後の出荷から代金回収までスムーズに行えること、配送業務のアウトソーシングが可能なところである。
Lazada出品には、法人名義の口座の用意とストア開設試験の合格が必須である。
また、出店アカウントには「ローカルアカウント」と「グローバルアカウント」の2種類ある。
グローバルアカウントはLazadaのサービス圏内すべての国で出品ができるアカウントであり、ローカルアカウントは一つの出店国のみに出店するアカウントである。
ストア開設試験は、Lazadaの基本的なルールを理解していればパスできる内容で合格率は高いようだ。
最近、東南アジアでシェアを拡大しつつあるのが、「Shopee」である。
流通総額をみても、2018年12月売上は2015年12月の70倍とその勢いは止まらない。
「Shopee」は台湾で急成長し、現在は台湾以外に、シンガポール、インドネシア、タイ、ベトナム、マレーシア、フィリピンの計7カ国で展開している。
先のアジアにおける利用シェアをみても、「Shopee」は、クアラルンプール(マレーシア)、ハノイ(ベトナム)、ジャカルタ(インドネシア)でトップである。
「Shopee」の特徴は、東南アジアで主流である決済の現金払いが可能なこと「SHOPEE XPRESS」により1-3営業日での配達も可能なこと。そして、注文した商品を受け取るまで、支払いを保留できる「Shopee Guarantee」など、消費者ニーズに対応しているところだろう。
さらに、「Shopee」急成長には、自社倉庫や在庫を持たない「アセットライト」と二つのコンセプト、「モバイルファースト」と「ソーシャルファースト」である。
「ソーシャルファースト」では、多くの人がSNSから影響を受けて買い物をする点を反映し、自分のショッピング体験を様々なSNSで配信・シェアできる機能やハッシュタグでの商品検索、気になるセラーをフォローできるなど、ソーシャルメディアに近い使用感でアプリを使うことができる。
東南アジアでは、実店舗からパソコンではなく、スマホ利用したネットショッピングでの商品購入へと移行しており、その時流のニーズをしっかり捉えているところが成長の要因だろう。
Amazonは昨年10月8日、シンガポールにおいて、東南アジア初となる、「Amazon.sg」を開設した。Amazonが東南アジア進出で選んだ国は「シンガポール」だった。
人口の多いインドネシア(約2億6000万人)ではなく、人口約570万人のシンガポールを足がかりとして捉えたのだ。シンガポールには「LAZADA」の本部もあり強敵である。シンガポールを中心に、どこまでシェアを伸ばすことができるか、今後が楽しみである。
「Amazon」のシンガポール進出は2017年から始められており、当初は食料品や日用品を中心とした数万点程度だったが、2019年には新規サイトを正式に立ち上げるために、取り扱い商品を数百万点に増大し、書籍やビデオゲーム、家電、教育玩具、ホーム・キッチン用品、化粧品など商品カテゴリーも豊富である。
また、これまでシンガポールで販売していなかった電子書籍端末「Kindle」も販売している。
さらに、シンガポールでは「Fulfillment by Amazon(FBA)」も展開し、購入額40Sドル(約3,100円)以上であれば国内配送は無料、さらにプライム会員は急送便のサービスも受けられる。
2020年1月15日、アマゾンCEOのジェフ・ベゾス氏は、アマゾンが「インド」に10億ドル(約1100億円)を投資することを宣言した。
これは、インドにおけるAmazon優位を加速するためだろう。
インドにおいては数十億ドル規模の投資し、インドに何千店とある小規模商店とAmazonと提携し、それら商店をAmzzonに抱え込もうとしている。
ジェフ・ベゾス氏は、「すべての関係者にとってウィンウィンのシナリオだ」、「顧客にとっていい話であり、店主は副収入が得られる」とツイートした。
Amazonの進出をみてもわかるように、東南アジアのEコマースは今後、劇的に拡大する市場であることは間違いないだろう。
今回のトランスコスモスの調査結果ではECサイトにおいては、商品画像に配慮する、梱包を丁寧に行うこと、配送日時を厳守するなど、Eコマースにおいては当たり前の内容をしっかり行うことが重要であることが示されている。さらに送料無料やカスタマーサポートの充実など「嬉しい体験」を増やすことがポイントである。
JETROの分析によると東南アジアのEC市場で、今一番狙い目なのは、オンライン市場規模が急激に拡大している「シンガポール」と「マレーシア」であると述べている。
参考: