12月26日、アメリカのメディア「ザ・ヒル」によると、Amazonはカリフォルニア州ロックフォードとテキサス州カレッジステーションの両方の顧客に対してドローン配送を開始したと伝えた。
Amazon念願のドローンによる配送が開始されたこのニュースにより、2022年はアメリカのドローン配送が実現化した年と言える。
前回は日本のドローン配送の動向を記したが、今回はアメリカのドローン配送についてAmazon、Google Wing、Walmartの2022年の動向を整理した。
2022年はアメリカのドローン配送(ドローンによる無人配達サービス)は、実証試験段階を経て、実用段階に入った。
具体的には、アメリカ大手スーパーマーケットチェーンのWalmart、Googleの姉妹企業であるWingは、既に、商用のドローン配達サービスを一部地域で展開している。
下の図は、リサーチステーション合同会社が2022年8月に発表した、「ドローン物流及び輸送の世界市場規模」を予測したものだ。 ドローン物流市場は2022年は5億3400万ドル、2030年には178億8100万ドルとなる、平均年成長率は55.1%に到達する大きな成長市場としている。
ドローン物流市場の成長要因としては、ドローンへの民間投資の増加、eコマースの売上増加、アフターコロナおける非接触型配送の需要の高まりが市場成長の追い風となっている点をあげている。
先述したように、26日、Amazonはようやくアメリカで「ドローン出荷配送」を開始した。
Amazonは2020年8月にアメリカ連邦航空局(FAA)からドローン運用の認可を受けていたが、2022年4月、Amazonのドローン配達プロジェクトの開発遅延や墜落事故といった課題に直面したことなど、計画は思うように進捗していなかった。
今回の配送サービスの本格開始は、2013年のドローンによる「Amazon Prime Air」構想から9年の時を経て実現したことになる。
今回のPrime Airの対象地域は、米カリフォルニア州ロックフォードと米テキサス州カレッジステーションの一部地域のみ。 いずれも郊外で人口が密集しておらず、安全性の担保が比較的容易な地域とされる。 対象地域に住む消費者がAmazonのサブスクリプションサービス「プライム」の会員であれば、追加料金なしで配送するという。
使用されたドローンは「MK27-2」という機体で、対象となる商品は5ポンド(約2.2kg)以内などの条件を満たすものに限られる。
対象となる2つの地域には、付近にAmazonの配送拠点であるフルフィルメントセンターがあり、飛行範囲は同施設から半径3マイル(約4.83km)の範囲である。
また、飛行高度は米国連邦航空局(FAA)の規制通り、高度400フィート(約121m)以下としている。 配送時間は、注文から1時間以内をめどに届けられ、今後は30分以内を目指す。
2022年4月7日、Googleはドローン配達サービスを事業とする「Wing」により、アメリカ・テキサス州のダラス近郊でドローン配達サービスを開始した。
Google Wingはアメリカ以外ではオーストラリアやフィンランドでにおいて、ドローン配送を開始しており、ダラスでの展開は「アメリカの主要都市圏で初となる商業ドローン配達サービス」とアピールした。
当初の対象地域は、ダラス市内から北に約30マイル(約48キロ)の距離に位置するフリスコ市・リトルエルム地区で、注文から配達まで通常10分以内で商品が届けられる。
アメリカ以外では、オーストラリアのクイーンズランド州ローガンにある商業施設運営事業者Vicinity Centersと提携し、施設の屋上にドローン配達拠点を設置している。
ドローンではドリンク類や市販医薬品などを配送し、最初の1カ月間で2,500件以上も配送した。
また、フィンランドでは、食料品店チェーンのAlepaや菓子メーカーのFazer、Crunch Brunchなどと提携し、ヘルシンキで幅広い種類のランチアイテムやスイーツなどを配送を実現している。
アメリカ巨大小売業者であるWalmartは、この2年足らずの間に3社のドローン・スタートアップ企業と提携し、ラストワンマイル配送業務に注力し、ドローン配送では一歩リードしている。
近々では12月15日、テキサス州、アリゾナ州、フロリダ州の3州でドローンによる即日配送サービスを開始した。
さらに、年内はこの3州に加え、アーカンソー州、ユタ州、バージニア州でもサービス開始を予定している。 これら6州におけるドローン配送拠点は34か所あり、利用可能な世帯は400万世帯にも昇る。
Walmartのドローン配送はスタートアップ企業であるドローンアップが手がけ、アメリカ連邦航空局のガイドラインに沿って認定を受けたドローンアップのパイロットがドローンの飛行を監視するというものである。
配達圏内に住む顧客が、ウェブサイトから食料品や医薬品など数万点の対象商品を注文すると、配送拠点でドローンアップが梱包した商品をドローンに積み込み顧客の自宅に届けられる。
Walmartでは「8時から20時までの利用時間に、タイレノールのような解熱鎮痛剤、おむつ、ホットドッグのパンなど数万点の対象商品からの注文を、最短30分で受け取ることができる」と説明している。 配送料は3.99ドル(約540円)で、最大10ポンド(約4.5kg)の重さまで対応している。
ここに来てAmazonがドローンによる配送を開始を宣言したことで、来年2023年はGoogle Wing、Walmart、Amazonを中心としたアメリカのドローン物流・輸送市場は大きく動きだしそうである。
ドローン配送には、道路上を走る陸路輸送はもちろん、離島や山頂に、より早く荷物を届けられ、ドローンの自走運転となれば人手不足の解消などの課題解決の有効な手段となる。
Google、Walmart、Amazonが世界のドローン配送を牽引し、アメリカでの大規模な導入が実現すれば、これは未来の空輸物流イノベーションの大きな一歩となるだろう。
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